IED対策に未だに特効薬なし

2011.4.24


 military.comによれば、イラクで有効だったIEDが、アフガニスタンでも過去2年間、大きな被害を出しています。

 地上軍の増派と、車を降りてアフガン人と交流する戦略転換は、自家製爆弾の標的を増やしました。2008年にIEDはアフガンで68人の米軍人を殺しました。これは2009年に168人になり、昨年は268人でした。アフガンのIEDによる負傷者の数は、2008年の270人、2009年の1,211人から、昨年の3,371人へ増加しました。

 28億ドルの年間予算を持つ統合即製爆発物対策機関(The Joint IED Defeat Organization: JIEDDO)のミッチェル・ハウエル(Mitchell Howell)は、JIEDDOは着実な成果をみたものの、「銀の弾丸(特効薬のこと)」は見つかっていないと言いました。彼は、敵がアメリカの対抗策に素早く戦術と技術を調整すると言いました。連合軍が何か解決策を講じると、数日でなければ1週間以内に、時には数時間で、武装勢力はIEDを配置する方法を変えます。その頻度は米軍の対処を上回ります。

 部隊を訓練し、IEDのネットワークを暴いて攻撃するJIEDDOの作戦の組み合わせは命を救い、戦術と技術の開発は敵がIEDを仕掛けるのを、より危険にしました。いくつかの村で、IEDを爆発させる彼らの能力を制限したので、彼らは自爆型IEDへ移行しています。我々は人間と車両が運搬する自爆型IEDが致命的な地域に入る前に見定めるために傾注しています。

 アフガンのような農業経済では、肥料やその他の爆弾を作る化学物質はいくらでもあります。ほとんどのIEDが起爆に電気式の雷管を用いるので、解決策の一つは「事前にすべて起爆する」ことです。しかし、ほとんどのIEDは埋められていて、事前起爆は困難です。埋設された物を事前起爆したければ、リード線に十分な残留電荷を作る必要があります。空気以外の媒体にそうすることは驚くほどの電源を必要とし、非常に難しいのです」。

 アフガンのような地形の戦場で、爆弾を探知する方法は見つかっていませんが、「変化検出(change detection)」と呼んでいる技術はあります。人工衛星やその他の写真で、人々が道路上の特定の場所の周囲を運転しているのを見つければ、彼らが避けるべき何者かがあるという印です。

 平均して、アフガンでは毎月1,300〜1,500件の攻撃があり、それらの20%は「有効」でした。これは連合軍部隊を殺したり、負傷させることを意味します。

 タリバンはほとんど識字能力がありませんが、言葉は話せます。彼らはIEDの対抗策に素早く単純な革新を行います。彼らの最初のIEDは起爆に無線を用いました。米軍は車両の周辺に妨害電波を設けて対抗しました。すると、彼らは車両が通過すると起爆するスイッチを使い始めました。そこで軍はIEDを事前起爆するために車両の前にローラーを取り付けました。すると、敵は電線を埋めて、部隊が通ったら起爆する観測員を置くようになりました。軍は兵士を車両から降ろし、電線と丘の裏側に隠れている観測員を探すことにしました。タリバンは現在、通過する車両の熱を感知する赤外線受信機を含む、複数の起爆方法を使います。

 昨年6月以降、犠牲が出た事件で測定されるIEDの有効性が9%に減少しました。


 かまりまとめて訳しました。また、IED対策の具体例で、過去に書いたことがある技術に関する部分(9%の有効性の直前の部分です)は省略しました。

  結果としては、何の成果もあがっていないというのが本当でしょう。昨年6月以降にIEDの有効性が減ったとしても、爆弾事件の数は増えています。これこそ、タリバンが素早く対応している証拠みたいなものです。成功率が落ちたら、仕掛ける爆弾を増やせばよいのですから。

 大体、ここで紹介されている起爆法のほとんどは、映画「ハート・ロッカー」に登場します。つまり、イラクで使用済みのテクニックばかりで、何も目新しくありません。

 「変化検出」の技術など、ベトナム戦争時に米兵が経験的に知っていたことです。ベトナム人が通らない場所には地雷が埋まっていたのです。住民たちは北ベトナム軍やベトコンから地雷の場所を教えてもらっていたというわけです。現在なら、そういう場所をデジタル写真から見つけるのにコンピュータプログラムを使うのかも知れません。それには大変な予算がかかったことでしょう。

 JIEDDOが今後、何らかの成果を生み出す可能性は非常に低いでしょう。


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