米国はリビアに地上部隊を送るか?

2011.4.9
追加 同日 17:12


 military.comによれば、米陸軍のカーター・ハム大将(Gen. Carter Ham)は、反政府派を助けるために国際的な地上部隊と共に、リビアに兵士を送ることを検討するかもしれないと、米上院軍事委員会で言いました。

 ハム大将は、アメリカの地上部隊への参加は、カダフィ軍を攻撃する国際部隊を腐食させ、アラブ諸国の支援を得ることが難しいために、理想的ではないと議員たちに言いました。NATO軍は複雑になりつつある状況で効率的な仕事をしたものの、カダフィ軍は戦士と車両を、学校やモスクのような、民間地域にの近くに置くことで、空爆をより難しくしているとも言いました。国際的な地上部隊の使用は、リビアの反政府派を強化するための計画だと、ハム大将は言いました。

 アメリカが部隊を提供するかと訪ねられ、ハム大将は「私はそれについて少しは検討できると思います。現段階では私の見たところ、再びこの地域で米軍が地上軍を必要とする反応を起こすには、おそらく理想的な環境にはありません」と言いました。ジョン・マケイン上院議員(Sen. John McCain)がリビアの状況について問われ、ハム大将はNATO軍が指揮をとった後、手詰まりが現在最もありそうだと認めました。ハム大将は、米国が一部の空襲用の航空機を、最近手順が確立された特別な承認が必要のないNATO軍の作戦に提供していることも認めました。強力なAC-130「ガンシップ」はNATO軍指揮官が利用可能だと、彼は言いました。彼の答えは、全攻撃機は米軍欧州軍を通して要請され、ロバート・ゲーツ国防長官を含む米国の指導者によって承認されなければならないという国防総省の初期の主張と対立しました。ハム大将は、その手順はいまでも、地上部隊に近接航空支援を提供できるその他の戦闘機やA-10「サンダーボルト」について適用されているといいました。彼は、その手順は迅速だと言い、その他の防衛当局者は、米国の承認とヨーロッパの基地から航空機を動かすには約1日かかると言いました。

 全体的にはアメリカは空襲の15%未満、情報収集、偵察、電子戦と燃料補給を含む支援活動の60〜70%を提供していると言いました。最近の悪天候とカダフィ軍の携帯型地対空ミサイルの脅威は、AC-130とA-10を使う活動を妨げました。ハム大将は約20,000基の携帯型地対空ミサイルが手詰まりに関与していると言いました。彼は一部のアラブ諸国が反政府派に訓練や武器を提供し始めていると考えており、彼らを助けるためにさらに関与する前に、アメリカが反政府軍をよく知る必要があると言いました。

 共和党のジョン・コーナン上院議員(Sen. John Cornyn)は反政府派についての知識の欠如は米情報機関の失敗だと言いました。「それはいつものように私を驚かせ、我が諜報能力が、我々がリビアの反政府派の構成すら知らないほど限定されていることを、議会がさらに検討しなければならないということかも知れません」。

 ハム大将は、リビア攻撃に参加した部隊の多くは、イランやアフガニスタンに行くところか、前線から戻ったばかりなので、アメリカがNATO軍に指揮を移管したのは重要だったと言いました。「我々は確実に作戦の必要を満たすために増派できます」「もっと多くの兵がリビアに長期間関与するなら、より長期の効果があります。それは他の任務の最終段階の作戦の効果でしょう」。

 別に、国務省広報官、マーク・トナー(Mark Toner)は、クリス・スティーブンズ特使(Chris Stevens)はベンガシで反体制派と対話を続けていると言いました。

 military.comによれば、NATO軍の作戦副司令官、イギリス海軍のラッセル・ハーディング少将(Rear Adm. Russell Harding)は、反政府派を誤爆したことを認めました。

 ハーディング少将は過去に、カダフィ軍だけが重装甲車両を使っていると言いました。反政府派と政府軍はブレガとアダヒヤ間での一連の前進と後退の中で交戦しており、パイロットが識別するのを難しくしています。NATO軍のジェット機が過去48回に318回出撃し、23カ所の目標を攻撃しました。彼らは米軍から指揮を受け継いでから8日間で1,500回飛行しました。また、反政府派が保持するミスラタのカダフィ軍も狙っています。

 批評家は、政権を破壊して完全に脅威を排除しようとするよりは、カダフィ軍の脅威を受ける民間人を守るだけの限定されたNATO軍の戦略に疑問視しています。

 「最初から政権を攻撃しないために、カダフィは、ゲリラ戦の形態の、人間の盾の背後に隠して都市の環境に彼の軍隊を組み込むという優位を与えられました」と、王立統合防衛安全保障研究所(Royal United Services Institute)の研究者、バラク・セニア(Barack Seneer)は言いました。

 「飛行禁止区域は、反政府派と政府派を互いの近接に置くゲリラ戦や手詰まり状態を戦う力はありません」

 対空砲陣地を攻撃しても、カダフィ軍はNATO軍の航空機の脅威のままです。彼らは、高度5,000mの航空機を撃ち落とせるレーダー、対空ミサイル、機関砲、携帯型対空ミサイルを持っています。


 ハム大将の発言を聞く限り、地上部隊の派遣は可能性が低そうです。最後の方の発言はほとんど意志が不明瞭です。第一、反政府派について、陸軍がよく分かっていないのら話になりません。2008年に活動を始めたアフリカ軍は、まだ実力不足ということでしょうか。

 2つの記事で気になるのは、空爆よりも、リビアの反政府派に関する無知です。米陸軍だけでなく、米議会もよく分かっておらず、NATO軍は反政府派が戦車を使っていないと考えていたくらい、現状が分かっていないのです。この程度は検討をつけられて当たり前のはずであり、言い訳に過ぎません。

 アメリカと反政府派は特使とCIAエージェントでしか接触していないようです。誤爆を防ぐには、軍が現地指揮官と直接話す必要があります。いまはNATO軍が空爆を指揮しているので、NATO軍から誰かを派遣する必要があります。前線航空管制官を派遣するくらいは、地上部隊を派遣することにはなりません。

 それから、ヨーロッパとアメリカのどちらがリビア内乱を掌握し、戦略を構想しているのでしょうか?。2003年のイラク侵攻以来、欧米の共同作戦がろくに機能しないことは明白です。彼らは互いに尊重し合い、主導権を握りたがらないのです。これでは無責任作戦が行われる危険が高くなります。いわゆる対テロ戦について、各国が独自に戦略を立てたように、リビア問題についても統率された各国間の連携が必要ですが、それは実現しそうにありません。



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