アフガン人はビン・ラディン殺害を歓迎

2011.5.17


 military.comによれば、アフガニスタンの男性の3分の2以上は、オサマ・ビン・ラディンの殺害がよい知らせであると考えています。

 安全保障・開発会議(The International Council on Security and Development: ICOS)は、過去2週間にカンダハル市(Kandahar)、比較的安全なパンジール州(Panjshir province)、カブール大学と他3ヶ所で600人の男性に面接しました。

 68%はビン・ラディンの死を歓迎していました。「アハマド・シャー・マスード(Ahmad Shah Massoud)を殺したから、私はオサマが死んで幸せです」と19歳のパンジール出身の男性は、9/11攻撃の2日前に自爆攻撃で死亡したタリバンのライバルを引き合いに出しました。

 調査は一定の際立った対比を明らかにし、タリバンと麻薬業者の温床であるヘルマンド州(Helmand)、マルジャ(Marjah)の71%はビン・ラディンの殺害を悪い知らせと表現しました。

 「軍事作戦は、我々が南部でインタビューした人々の心に否定的な影響を与えることを通して、「負の反応」を作り出しましたと、ICOSのノリン・マクドナルド理事(Norine MacDonald)は言いました。「全体的には、結果はビン・ラディンの死は好評だったことを示しました。それは国際社会の転換戦略の中で肯定的なステップです」。

 ビン・ラディンの死が、彼の守護的な指導力によって多くの支持を引き出したアルカイダの崩壊をもたらすかについては、意見は二分されました。

 10人中6人はギャロップ調査に軍はいまアフガンでの任務を達成したと述べ、米急襲部隊の襲撃成功は戦争を早く終わらせるので、アメリカ国内での支持を促進しました。

 多くのオブザーバーは、外国部隊が去ると、アフガンが、タリバン、アフガン政府とさまざまな軍閥の間で内戦へ転落するのを恐れています。

 ICOSがビン・ラディンが死ぬ前に行った1,400件の調査では、ほとんどのアフガン人がアフガン軍に治安権限を譲り渡す計画は歓迎されています。南部では約60%が、北部では約80%が転換プロセスを支持していました。

 ICOSは、4月25日に500人のタリバンの囚人がカンダハルから脱走したこと、米国の牧師によるコーランを焼いたような記事は、アフガン人を保護し、敬意を払う連合軍の能力に国民の信頼を損ないました。アフガンでの世論調査は困難で、しばしば危険であり、サンプルの規模が小さいことは、決定的なものとみなされないことを意味します。


 ICOSのオリジナルのレポートはダウンロードして読むことができます(pdfファイルはこちら)。また、ICOS自体の記事もあります(記事はこちら

 記事に書かれているとおり、この調査結果は内容は信頼できても、額面通りに受け取るのは危険です。

 これまでも、アフガンの世論調査が、その後の展開に同期したという記憶があまりありません。ある程度は数字をあてにできるものの、アフガン国民は調査結果と違う反応をあとで示すのです。しかし、抗した数字も頭に入れておかないと、状況は見えてきません。

 また、パンジール州の若者が名前を出したように、マスード将軍は同時多発テロの2日前に、外国人記者に化けたテロリストの自爆攻撃で死亡しました。マスード将軍はアフガンの独立のためにタリバンと戦った人物で、アルカイダにとっては危険人物でした。マスード将軍のニックネームは「パンジールの虎」で、高潔で知られた指揮官でした。そんな人を地元の若者が悪く言うはずはなく、当然、その敵は自分の敵でもあります。ICOSの記事には、カブール大学の学生は、ビン・ラディンがソ連の侵略期に戦ってくれたことを評価していると書いています。


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