オサマ・ビン・ラディンが死亡

2011.5.2


 オサマ・ビン・ラディンが死亡したと米政府が公式に発表しました。

 オバマ大統領の声明では作戦の詳細は明らかにされませんでした。CNNは海軍のシールズがアフガニスタンからヘリコプターを使ってパキスタンに侵入し、イスラマバードから北100kmにある高級住宅街アボタバード(Abbotabad・kmzファイルはこちら)のビン・ラディンの住居を襲撃し、40分間の銃撃戦の後に殺害したということです。ビン・ラディンと共に男性3名、女性1名が死亡したものの、米軍に犠牲者はいなかったようです。

 状況はまだほとんど分かっていません。今後、情報を整理していきたいと考えます。ホワイトハウスの前には米国民が集まってお祭り騒ぎとなっていますが、我々に必要なのは冷静な情報分析です。

 ビン・ラディンは、敵に殺されるよりは味方に殺される方がよいので、万一敵が迫った場合は自分を殺すように部下に命じていました。シールズの銃撃で死んだのか、自分や味方による死なのかが気になるところです。自決等なら殉教者としての価値が高まります。

 ビン・ラディンの死体は埋葬されず、焼却などの方法で形を変え、廃棄されるはずです。影響力のある指導者の遺体をめぐり争奪戦が繰り広げられることがあり、存在していない方が望ましいのです。殉教者にしないことが重要です。もちろん、その前に本人であることを明確にするための手段が講じられるべきです。そうしないと、ヒトラーの場合のように、生存の噂を断ち切れなくなります。

 しかし、ビン・ラディンらは女性を人間の盾として利用し、そのために女性が死亡したとCNNは言います。まるで映画に出てくるテロリストのやることです。シールズ隊員は、その女性を含めてビン・ラディンらを射殺したのかも知れませんが、現在の情報では確認できません。

 指導者の殺害でアルカイダがどうなるかですが、大規模な報復攻撃はないと考えます。そんな手段が揃っていれば、すでに実行しています。また、組織は世界的なものでも、確固とした組織ではなく、いわばフランチャイズ形式です。ソマリアのアルカイダが、ビン・ラディンの死に報復する理由はほとんどありません。

 CNNによれば、現場は退役軍高官が住むような場所だと言います。パキスタン軍の協力なしには実行できない作戦ですが、よく情報が漏洩しなかったと感じます。

 オバマ大統領は選挙公約で、必要ならばパキスタンに米軍を派遣すると述べていました。まさにその通りになったわけです。これが地上部隊を長期間駐留させるという話ならパキスタン軍は承認しなかったでしょう。しかし、短時間の急襲作戦なら余地があります。オバマ大統領は実に幸運だったわけです。この夏にアフガンから米軍を撤退させる準備も整いました。この幸運をぬか喜びして、アメリカが失敗をやらないことを望みます。


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