タリバンがオマル死亡を否定

2011.5.24


 military.comによれば、タリバンの指導者、ムラー・モハマッド・オマル(Mullah Mohammad Omar)がパキスタンで死亡したとアフガニスタンのニュースチャンネル「トロ(Tolo)」が報じましたが、タリバンはオマルは生きており、アフガンにいると言いました。

 「これはまったく間違っています。プロパガンダに過ぎず、我々は噂を完全に否定します」とタリバン広報官、ザビウラ・ムジャヒッド(Zabiullah Mujahid)はAP通信の電話インタビューで言いました。「彼はアフガン国内におり、指揮官たちと軍事作戦の指揮で忙しい」。

 タリバンの組織に詳しい人のほとんどは、オマルがパキスタン南部のクェッタ(Quetta)かカラチ(Karachi)に隠れていると言います。

 トロは匿名のアフガン情報当局者が、オマルが元パキスタン情報局長ハミド・グル将軍(Gen. Hamid Gul)の助けを借りて、クェッタから北ワジキスタンに移動中にパキスタン内で射殺されたと言ったと報じました。情報当局者は、オマルの死が本当であることを示す情報はないと言いました。グル将軍はAP通信に、この話は間違いであると言いました。「これはプロパガンダ、完全な策略、偽情報です」「私は彼に会ったことはありません。私は彼を見たことがありません。いかなる形でもコンタクトしていません」。

 アフガン情報局の広報官、ラティフラ・マーシャル(Latifullah Mashal)は、オマルがパキスタンに移動し、それにグル将軍が関与していたことを確認したと言いました。「移動は2日前に起こりました。彼はグル将軍によってクェッタから北ワジキスタンに連れていかれました」「移動後、我々の情報源は我々に、ムラー・オマルとタリバン指導層の間にコンタクトがなかったと言いました」。マーシャルは、何日も沈黙しているのは珍しいとは言わずに、オマルの死を確認できないと言いました。米国とNATO軍の当局者は、トロの報道を聞いているが、それを確認・否定する情報はないと言いました。


 春の攻勢の最中に、指揮官が隣国へ行くかという疑問はありますが、タリバンの行動は理解しがたいことも事実です。この情報をどう解釈するかは決められません。

 アフガン情報部がパキスタン情報部を攻撃したくて、抗した情報を出した可能性もあります。あるいは、パキスタンに移動したことまでは確かで、テレビ局が話を膨らませてオマル死亡と言った可能性もあります。ビン・ラディンの死を受けて、パキスタンのタリバンと話し合いに行った可能性もあります。グル将軍は何と問われても、タリバンと無関係だと言うことも予想の範囲内です。

 推測はさまざまに立てられますが、オマルの死体など確証がない以上は信じることができません。そもそも、オマル本人は正体不明の人物で、顔写真以外に本人を特定できる資料が存在するのかも不明です。


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