警備が手薄な目標を狙うタリバン

2011.5.26


 アフガニスタンのカンダハル州、ナルガム地方(Nalgham region)でのタリバンの春の攻勢の模様を報じる記事が出ました。

 military.comによれば、2週間の間、タリバンは毎日攻撃を行っては、散っていきました。しかし、武装勢力は間違いを行い、米軍の狙撃兵はそれを逃しませんでした。狙撃兵チームは、日曜日にナルガム地方のタリバンの武器貯蔵所と集結所の近くにいた武装勢力2人を殺し、3分の1を負傷させました。連合軍は彼らが現場で発砲する前に、2週間近く監視・偵察資産を用いて武装勢力を追跡していました。第10山岳師団第3旅団戦闘チームC中隊の偵察小隊の狙撃兵は日が暮れてから、その日早くにあった攻撃の対応のために配置につきました。情報筋は武装勢力が同じ場所の集結所に戻るかも知れないと予測しました。「彼らは通常そんな風に同じことを繰り返しません。実際、我々は驚きました。彼らは同じことやらないのがうまいのです」と偵察小隊のポール・ゴース3等軍曹(Sgt. Paul Gorse)は言いました。「狙撃兵に殺させる時はいつも、それは敵への破壊的な心理への打撃です。それは敵の移動の自由を奪い、ストレスを作ります」「我々が出歩く時、我々はIEDでストレスが溜まります。いま、彼らが出てくると、狙撃兵について心配しています」。 ナルガム戦闘前哨基地とその外側にある拠点は先週、間接砲撃と小火器により毎日攻撃を受けていました。

 military.comによれば、タリバンは東部アフガン、ヌリスタン州(Nuristan province)、デュアブ地区(Duab district)の行政ビルを奪取し、少なくとも3人の警察官を殺害しました。地方長官のジャマルディン・バダル(Jamaludin Badar)は、タリバンは軽装備のアフガン警察に対して、迫撃砲やRPGのような重火器を使って、地域の建物を制圧したと言いました。アフガン軍とNATO軍はヌリスタン州をパトロールしません。バダル長官は数日間の戦いで8人のタリバン兵が死に、デュアブ地区の西部を支配していると言いました。

 タリバンとその他の武装勢力は、ヌリスタン州とクナール州(Kunar)、パキスタン国境に近い北東部の州で広大な帯状の場所を支配します。武装勢力はパキスタンの部族地域に隠れ家も持ち、定期的にNATO軍を攻撃するために越境してアフガンに入ります。さらに、タリバンは、3月29日に300人以上の戦士で制圧した、ヌリスタン州のウェイガル地区(Waygal district)の首都も支配しています。


 記事には他に、暗殺や自爆テロが書かれています。先に指摘されたように、タリバンは大規模な攻撃を避け、こうした小さなテロを中心に行うようになったものの、警備が薄いところでは集団での攻撃を行っているようです。それが最初の記事に書かれていることです。

 この事例では、米軍はタリバンの集結所を事前に知っていました。短期間に同じルートは使わないというのは軍事行動の鉄則ですが、なぜかタリバンはミスを犯したのです。ベトナム戦争でも無能な米軍指揮官が部下の反対を無視して同じルートを使い、部隊を全滅に導いたことがあります。しかし、勝利だとしても、これは戦果が小さすぎます。本来、すでにカンダハルは陥落し、タリバンがいなくなっている予定なのに、そのニュースはまったくありません。米軍とアフガン軍がカンダハルのどこを制圧したかすら明確ではありません。

 警備が薄い東部アフガンでは、タリバンは300人による攻撃を実行しています。つまり、敵がいないところで確実に戦果をあげているわけです。かつてほどではないものの、彼らは戦術を使い分けながら戦っています。ペトラエス大将が言ったように「春の攻勢はない」というほど、タリバンは弱体化していません。


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