反政府派がミスラタから首都へ西進
military.comによれば、リビアのミスラタで反政府派がカダフィ軍の包囲を破ってトリポリへ向かいました。
また、ロンドンのリビア人アナリスト、ノーマン・ベノマン(Noman Benotman)によれば、カダフィが権力を得た時に最初に手を組んだサシ・ガラダ(Sassi Garada)が、チュニジアを経由してリビアを出国しました。ベノマンはガラダの友人と家族に接触しました。リビア暫定評議会のグマ・エル・ガマティ(Guma el-Gamaty)も離反を確認しました。初期情報ではガラダがイギリスに逃げたとされましたが、ベノマンはスイスにいると言いました。匿名を希望したイギリス当局者は、彼らはガラダがイギリスにいるかどうかを確認できないと言いました。スイスの外務省広報官、キャロル・ワレティ(Carole Waelti)は、ガラダがスイスにいる可能性を承知していないと言いました。ベノマンによれば、ガラダはスポットライトの外にいて、カダフィに貢献するために、長年軍のいくつかの昇進を辞退したといわれます。ガラダはリビアの少数派、ベルベル人(Berber)で、彼らはしばしば、自分たちの言語と習慣を守るためにアラブの多数派と戦いました。ベルベル人の大半はリビアの西部山地帯を占拠します。そこはカダフィ大佐が緊張を解消しようとしてきた場所でした。グラダの離反の理由や時期は不明です。
月曜日にミスラタ近郊で大きな戦闘があり、反政府派の前線にいるAP通信のカメラマンは、反政府派が地中海沿いに、ズリタン(Zlitan・kmzファイルはこちら)から6マイル(10km)以内に進出したと言いました。彼がいる部隊の反政府派指揮官は、政府の武器庫から押収した武器とベンガジから出荷された新しい武器を火曜日までにズリタンへ移動させる計画であると言いました。反政府派指揮官、アリ・テルベロ(Ali Terbelo)は、別の反政府派部隊がすでにズリタンにあり、カダフィ軍を包囲しようとしていると言いました。反政府派が街を占領したら、彼らはトリポリの東側の郊外から85マイル(135km)以内にいます。AP通信の記者は、月曜の朝にロケット、大砲、迫撃砲の砲弾が1分間に約7発の割合でダフィニヤ(Dafniya・kmzファイルはこちら)西部の反政府派戦線に向けて激しく撃たれました。日曜日にミスラタのヒクマ病院(Hikma Hospital)は、砲撃は反政府派7人を殺し、49人を負傷させたと言いましたが、新しい犠牲者の数は入手できませんが、ダフニィヤの戦線からミスラタに戻る救急車が走っていました。
月曜日、反政府派はブレガ(Brega・kmzファイルはこちら)の近くで大規模な反攻に遭遇しました。アダビヤの病院のスレイマン・ラファシィ医師(Suleiman Rafathi)は、ブレガの約22マイル東で政府軍が待ち伏せし、23人が死亡し、26人が負傷したと言いました。
カダフィ大佐はリビアのテレビ番組で、世界チェス連盟のロシア人理事の訪問を受け、チェスをするところが放送されました。彼は黒い服に黒っぽいサングラスをして、チェスをしていました。彼がどこでチェスをしたのかは不明です。
記事を一部省略して紹介しています。
また側近が離反し、これはカダフィ大佐の財布がすでに空っぽに近いことを意味します。未来を信じられなくなった者たちが、タイタニック号から逃げ出しているのです。
ミスラタが三方向で包囲されているという話は、一般的な包囲網ではなく、かなり薄い包囲線なのだろうと想像します。反政府派も勢力不足でその薄い包囲線を突破できずにいたのです。理想的には三方向すべての敵を敗走させたいところですが、それができないので、首都に近い側を突破することになるのです。これは常識的な判断です。頭数はそれなりに足りているはずですが、装甲車や自走榴弾砲などの支援火器がないので、戦力を集中できずにいる可能性があります。ズリタンに武器を運び込むという話は、すでにここを確保する目処がついたということでしょう。さらに、大型港のあるフムス(Khums・kmzファイルはこちら)までを押さえるのです。これで首都攻略の準備は整います。
反政府派の戦闘車両は少なく、重機関銃をピックアップトラックに乗せた「テクニカル」程度としても、一端、地域を占領すれば、カダフィ軍が奪還するのはかなり難しくなります。装甲車で攻めようとすれば、RPGが飛んできて、手痛い打撃を受けるからです。よって、奇計を用いて、カダフィ軍を敗走させながら、支配地域を着実に増やしていき、その過程の中で敵戦力を減らしていくことが大事です。
残念ながら、NATO軍からはカダフィ軍の戦力についてコメントが出てきません。反政府派の戦力も同様です。このため、戦況はかなり不透明のままです。せめて、もう少し情報があれば助かるのですが。
ブレガで進展がないのが心配です。カダフィ軍は本拠地からかなり離れたところで活動しています。反政府派の拠点ベンガジからは近いのに先へ進めないのです。これでは話があべこべです。反政府派の方がこの辺では自由に動けるはずです。この停滞には何か理由があるはずです。もっとも、首都が陥落すれば、東部戦域の問題は自然解消されるでしょう。だから、手薄でもよいのだと考えている可能性はあります。それでも、反政府派の動きの遅さは本当に気になります。
チェスをしているところを撮影させるというのは、いかにも芝居じみています。自分が健在である証拠を見せようとしたのでしょう。世界チェス連盟の理事が来ている時期なので、現在撮影されたものだという証拠になります。しかし、歩いてみせる必要はない映像なので、本当に健在かどうかは分かりません。長時間かかるチェスを、用心深いカダフィ大佐が最初から最後までやるとは考えにくいものがあります。視線はチェス盤に釘付けで、同じ場所に居続けるのは、極度に暗殺を恐れている彼には似つかわしくありません。
カダフィ大佐が味方に裏切られて終わりを迎えるのか、行方不明にでもなるのかは分かりませんが、終わりが近いことは確実だと感じます。
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