カダフィの戦略に引っかかるNATO軍
military.comが、リビア介入が長期化した時の問題を報じました。長い記事なので、気になる部分を抽出して紹介します。
英軍最高位のマーク・スタナップ海軍大将(Adm. Mark Stanhope)は月曜日に、英軍は厳しい予算削減とアフガニスタン戦での継続的な出費に縛られており、リビアの任務が9月までに解決されなければ、厳しい判断に迫られるだろうと警告しました。「6ヶ月を超えて継続する場合、優先する者を考え直す必要があるだろう」と言い、現在の関与が永続的に続けられないことを示唆しました。
任務そのもののコストは不明なままです。米国防総省は4月初めに6億800万ドルの見積もりを提示しましたが、これはアメリカの貢献だけでした。王立統合防衛・安全保障研究所(the Royal United Services Institute)のアナリスト、シャシャンク・ジョーシ(Shashank Joshi)はリビア作戦が9月まで続いた場合のイギリスの費用は9億ポンド(14億ドル)だと言いました。フランスは現在、今年軍にあてられた1日あたりの予算は100万ユーロ(140万ドル)の出費だと、フランス国防省広報官、フィリップ・ポンティス大将(Gen. Philippe Ponties)は、言いました。フランスの軍事活動が90日間続いた段階で、総額は8,700万ユーロ(1億2,600万ドル)だと言いました。
英軍の参謀総長デイビッド・リチャーズ大将(Gen. David Richards)は「我々は我々が望む限り、この軍事活動を継続できます」と言いましたが、別のNATO軍高官はスタナップ大将のコメントを繰り返し、同盟国のリビア介入が続くなら、(軍事的な)資源の問題は致命的になるだろうと言いました。ステファン・アブリアル大将(Gen. Stephane Abrial)はセルビアでのNATO会合で記者に「現段階では、軍隊は作戦を実行するのに必要な手段をとるのに使われています」と言いながらも、「作戦が長く続くなら、もちろん、資源の問題は致命的になるでしょう」「追加的な資源が必要なら、もちろん、政治的な判断が必要になるでしょう」と言いました。
イギリスは財政赤字を減らすために急速な支出作戦を行っています。空母アーク・ロイヤル(HMS Ark Roya)とハリアー戦闘機は10月の広範な再評価により放棄されました。軍事戦略家は、アーク・ロイヤルが配備されていれば、ハリアー戦闘機は、イタリアの基地からトーネード戦闘機とタイフーン戦闘機を90分かけて展開するのではなく、20分間で展開できると指摘しました。
費用と軍需品は別として、政治的な時計はサルコジ大統領にカチカチと音を立てています。フランス憲法では、4ヶ月を超える軍の海外派遣は議会の承認を必要とし、期限は急速に近づいています。パリのシンクタンク戦略研究財団(the Foundation for Strategic Research)の長、フランソワ・ヘスブルク(Francois Heisbourg)は「これからの15日間は、サルコジはとても順調な航海をしそうで、すべては次の15日間で決まるかもしれませんが、そうならなければ、我々は未知の政治的な海域に入っていくでしょう」「彼は承認を得られるかと言えば、そうでしょう」「それは簡単かと言えば、何とも言えません」。
ローマのシンクタンク「ICSA」は、NATO軍は交戦規定に縛られなければ勝ち、もっと早くにそれを行えると言いました…それは目標と使用する武器の種類と量を絞ることです。「カダフィが大打撃を受けながらも回復力があり、降伏しないのなら、我々は少し攻撃を強化しなければならないと言うべきかもしれません」「あなたは小さな戦争をしているとは言えません」。
military.comによれば、超党派的な10人の下院議員グループは、バラク・オバマ大統領(President Barack Obama)が議会の承認なしにリビアに軍事行動を行ったとして提訴しました。
この記事には日本でも報じられているので、提訴した議員の名前を提示するだけにします。
デニス・クシニッチ(Dennis Kucinich)
ジョン・コンヤーズ(John Conyers)
マイケル・カプアーノ(Michael Capuano)
ウォルター・ジョーンズ(Reps. Walter Jones)
ハワード・コーブル(Howard Coble)
ティム・ジョンソン(Tim Johnson)
ダン・バートン(Dan Burton)
ジミー・ダンカン(Jimmy Duncan)
ロスコー・バートレット(Roscoe Bartlett)
ロン・ポール(Ron Paul)
なぜ、私がタイトルを「カダフィの戦略に引っかかるNATO軍」と掲げたかと言えば、及び腰で軍事活動をしながら、今ごろになって、こんな問題を取り上げているのは遅すぎるからです。
私は最初からリビアにはすばやく強力な戦力を集中すべきだと言ってきました。そうすることが、反政府派によるリビア掌握を早め、早く戦争を終わらせ、結果的にリビアに民主主義を確立するという政治的な目標を達成できるからです。この政治的な目標は、単に民主主義の国が増えてめでたいということではなく、北アフリカに穏健派の国が増えることで、この地域へのアルカイダなどイスラム過激派の浸透を防ぐということです。NATO諸国が、このことをどれだけ自覚しているのかは不明ですが、どの国も及び腰で介入に踏み切りました。アメリカは近くにいた空母を参加させませんでしたし、ヨーロッパ国も地上軍は参加させていません。
すべてはイラクとアフガンでの戦いでNATO軍が疲弊したことに理由があります。大した考えもなく、これらの二ヶ国に侵攻し、痛い目を見たものだから、リビアには本格的な参入をしにくいのです。古代中国の孫子は城攻めのような長期戦は避けろと説きました。中国の城は巨大で町全体を城壁で覆ったようなもので、攻めるのに大変な手間がかかります。戦いをするのなら、短期間で勝利を収めるような方法を考えろということです。欧米は、大した戦略的展望もなく、イラクとアフガンに攻め込み、そこに大量の金と兵士の命を注ぎ込んだのです。このため、いま第三世界にまた地上軍を大量に注ぎ込むようなことはできないのです。
カダフィ大佐がそこに最後のチャンスを見出していることくらい、誰の目にも分かるはずです。つまり、勝てなくてもよいから、戦いを長引かせ、NATO軍が限界に達するのを待つのです。ベトナム、イラク、アフガンでの戦訓は、それが有効であることを教えています。
しかし、福島第1原発の事故で、日本人が被害を直視しようとしなかったのと同じで、あまりにも希望がない戦争では、誰もが問題を直視しないのです。
その結果、NATO軍はダラダラと冗長な軍事攻撃を繰り返し、カダフィ大佐の思うつぼにはまっている訳です。
こうなったら軍隊は引き揚げ、中東の富裕国から資金を募り、民間軍事会社を大量に雇い、戦争をやってもらうしかありません。民間軍事会社が国家グループの代理戦争をする時代の到来です。皮肉にも、彼らは国際法にほとんど縛られないので、こんな状況では軍隊よりもうまくやるかもしれません。それが最悪を意味することくらい、誰の目にも明らかのはずです。
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