ザワヒリの就任でアルカイダはどう変わるか?

2011.6.17


 新しくアルカイダの指導者になったアイマン・アル・ザワヒリ(Ayman al-Zawahiri)について、BBCが報じました。

 アルカイダはザワヒリの指揮で、アメリカとイスラエルとの聖戦を続けると言いました。アナリストはエジプト生まれのザワヒリ(59歳)は知的ではあるけど、オサマ・ビン・ラディンのようなカリスマはないと言います。一部の専門家は彼がアメリカでの9/11攻撃の背後で「作戦上の頭脳を務めたとされます。何年もビン・ラディンの副官を務め、2,500万ドルの懸賞金をかけられた男は、広くビン・ラディンの後継者と予想されてきました。彼の氏名を発表する声明は過激派のウェブサイトに掲載され、アルカイダの上級指導部から出されました。「シーク・アイマン・アル・ザワヒリ博士グループのアミア(指導者)になりました。神よ彼を導き給え」と声明は言いました。声明は、ザワヒリの下でアメリカとイスラエルに対する聖戦を「すべての侵略軍がイスラムの地を去るまで」続行すると言いました。

 日曜日に60歳の誕生日を迎えると考えられるザワヒリは1週間前に、ビン・ラディンは墓の影からアメリカを脅かし続けると警告しました。6月8日にインターネットに掲示されたビデオメッセージで、ザワヒリはアルカイダが戦い続けると言いました。「族長は殉教者として神の元へ旅立ちました。神の慈悲が彼にありますように。我々は聖戦の彼の進路を続けなければなりません」とザワヒリは言いました。「今日、神に感謝します。アメリカは反攻する個人やグループではなく、眠りから聖戦のルネッサンスへと目覚めた国家に直面しています」。

 BBCの中東特派員、ジョン・レイネ(Jon Leyne)は、アルカイダの新しい指導者の優先順位は組織がまだ活動していることを示すために大きな攻撃を始めようとすることを含むと言いました。さらに、おそらくはイエメンでのより強い基盤とそこをより不安定にするための活動を含めて、ザワヒリは中東でのアルカイダの基盤の不安定さを変えようと考えています。

 先週のメッセージで、ザワヒリは「腐敗し専制的な指導者」に対するアラブの反乱を称賛し、それらを「西欧が我々の国々に押しつけた、すべての腐敗した政権が倒れるまで戦い」に関与させ続けるよう主張しました。しかし、特派員は、ザワヒリをアルカイダの指導者として発表するのが遅れ、彼の死後6週間以上かかったことは、彼が明確に選ばれたことにも関わらず、指導者内での分裂を意味するかもしれないと付け加えました。

 ザワヒリには何年もの間、懸賞金がかけられており、安全保障のアナリストは彼がアフガニスタンとパキスタンの国境地帯に隠れているようだと示唆します。しかし、そこに隠れているとされていたビン・ラディンとほかの主要な指導者はパキスタンの町で発見されました。バラク・オバマ大統領は何物かがビン・ラディンを保護したと言い、パキスタンはビン・ラディンの居場所を知っていたことを否定し、CIAの情報提供者と疑われる者を逮捕しました。


 ザワヒリもパキスタンにいるのではないかと疑うような記事ですが、その根拠はなさそうです。

 暫定指導者サイフ・アル・アデルからザワヒリに交替したことは、特に不思議ではありません。ザワヒリは最初から最有力候補でした。(記事はこちら

 興味深いのは、ビン・ラディンと同じく、中東で起きている民主化の波を好機と捉えていることです。しかし、リビアにはNATO軍が介入し、中東諸国からの資金も流入していることから、暫定政府が正式な政府となっても、アルカイダに結びつくとは考えられません。エジプトも民主化の方向へ進むと考えられます。シリアやイエメンは政府が変わっても不安定かもしれませんが、まだ情勢は不明です。

 こうしたザワヒリの意向が明らかになった訳ですから、現在、動乱が起きている中東や北アフリカの国で、アルカイダが親密化を図る工作を展開すると考えなければなりません。アメリカ本国に対する攻撃が難しい今、彼らがそう考えるのは無理もないことです。そのために材料としようとして、彼らが大きなテロ攻撃をする可能性は確かにあります。この2点が当面の注意事項と言えます。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.