アーリントン墓地の記録が流出

2011.6.25


 またしてもアーリントン国立軍人墓地で問題が発覚しました。military.comによれば、米陸軍犯罪調査部(the Army Criminal Investigation Command: CID)はアーリントン国立軍人墓地の69箱分の埋葬記録が商業保管施設に捨てられているのを発見された事件を調査しています。

 この記録は、賃借人がレンタル料金を払えなくなり、保管場所が競売にかけられた時に保管施設の所有者が発見したと、CIDの広報官、クリス・グレイ(Chris Grey)は言いました。1箱はCIDが調査のために保持し、古い記録の複製が入っていると分かった68箱はアーリントン墓地に返却されました。

 調査は下院復員軍人委員会の墓地の活動に関する公聴会で公表されました。墓地の事務局長、キャスリン・コンドン(Kathryn Condon)は委員会に、アーリントン墓地当局は、今月は早くに施設の所有者から箱の存在を知るとすぐにCIDに連絡したと言いました。彼女は、社会保障番号のような個人を特定する詳細な細目が記録にあるものの、個人が亡くなっているために安全上の危険は限られていると言いました。


 亡くなった人の記録なので古い記録なのでしょうが、どういう理由で外部に持ち出されたのかが気になるところです。普通は、不要になった情報は組織の中で処分されるところですが、誰かが何らかの理由で持ち出したのでしょうか。

 それにしても、アメリカで最高の軍人を讃える場所で不祥事が続きます。アーリントン墓地は選ばれた人たちだけが埋葬される場所で、ほかの軍人墓地とは一線を画しています。そこで最近、墓石の場所が分からないとか、別人が埋葬されていたといった問題が発覚しているのです。ここは軍が管理しているとはいえ、士気の上がらない場所でもあるのか、仕事がいい加減になるようです。

 何度も書きますが、ここに社会の矛盾があるのです。「国家に貢献することは最高の名誉」といった言葉があります。政治家たちは「軍人は国家の誇り」「献身的行為に心から感謝する」と口をそろえます。ハリウッドの映画制作者たちは、戦争映画を作る時に兵士の名誉を気にかけ、作品に反映します。でも、死んだ兵士にはこの程度の経緯しか払われないのが現状なのです。戦争という問題には、常にこういう矛盾がつきまとうことを忘れるべきではありません。



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