カダフィ軍がミスラタへ反撃

2011.6.9


 BBCによれば、カダフィ軍がミスラタを攻撃し、南、東、西の方向へ急派された反政府派兵士を殺したと報告されました。少なくとも反政府派14人が、ミスタラの西方の飛び地から脱出しようとした間に死にました。

 水曜日、カダフィ軍が反政府派にグラートロケットで応酬したので、街の東方で爆発音が聞かれました。反政府兵士はロイン記者に、彼らが数マイル東部の戦線を次の沿岸都市の郊外に向けて動かしたと言いました。12人の反政府派が街の東部で、2人が西部で死亡し、反政府派の医師は24人が負傷したと言いました。

 軍用救急車が治療を求める犠牲者を絶え間なく搬送し、献血者を求める訴えに応じたので、交通がミスラタの病院の周囲で渋滞したとBBCのデイビッド・ロイン記者(David Loyn)は言いました。彼は南部戦線の主要な指揮官、サラフディーン・バディ(Salahuddin Badi)が負傷者の一人だったと言いました。彼は治療のために出発する前に、顔面を血が流れ落ちながら、部下に勇気を与えるスピーチをしているのが見られました。

 リビア政府は今のところ、最新の暴力についてコメントしていません。


 情報が少なすぎ、明らかに整理されていないので、明確な戦況は分かりません。カダフィ軍がミスラタのどこかを占領したのかが、記事には書かれていません。ミスラタ西方の飛び地がズリタン(kmzファイルはこちら)を指すのかは不明です。さらに情報が出てきたら、また検討しますが、現段階で言えることを書きます。

 私が以前に指摘したカダフィ軍の反撃が行われたのですが、どうも予想とは違っていました。ミスラタ全域で侵攻作戦が行われたのです。そして、反政府派は大きく支配地域を失ったわけではないようです。まだ分からないもののカダフィ軍にはかなりの損害が出たと想像します。リビア政府が何も発表しないのが、それを連想させます。

 ミスラタ全方位に兵をばらまけば、各区域を担当する戦力が減ります。市街地の外は開墾地で、反政府派が武器を持っていれば、カダフィ軍は街に入る前にかなりの損害を受けます。だから、西側の一部の区域に兵を集中して、反攻の橋頭堡を築くのだと予想していました。全域で行われたとする攻撃は西部が主攻で、残りは助攻なのかもしれません。この場合、西部側で勝利できればよく、南と東の区域は反政府派の戦力を分散させるための囮です。逆に、全域で街に侵入するのが目的だった可能性もあります。後者が行われた場合は、カダフィ軍にとって最悪です。分散した兵力を消耗するだけに終わるからです。

 反政府側にとっては、仮にズリタンが陥落したとすれば、東側で前進があったとしても喜べません。十分な時間がありながら、重要な区域に防衛網を形成できなかったことになります。NATO軍は攻撃ヘリコプターを投入しながらも、リビア軍の接近を察知できず、的確な支援が行えなかったことになります。この辺の連携がまだ不十分のようです。

 カダフィ軍が今後も繰り返しミスラタに大規模な攻撃をかけられるのなら、彼らはまだ十分な戦力を持っていることになります。しかし、反撃までにかなりの時間がかかっています。反政府派は5月15日にミスラタが陥落したと宣言しました。それから1ヶ月近く経って、やっと反撃が行えたのです。これはカダフィ軍の戦力がかなり落ちており、準備に時間がかかったことを連想させます。

 私はカダフィ軍が焦って意味のない軍事行動を選択したのかも知れないと考えます。



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