米軍で家庭内暴力が急増
military.comによれば、米国防総省の家族支援プログラムの報告書は、ここ2年間で家庭内暴力の数が上昇したことを示しました。
しかし、それが意味するのは、より多くの人たちが過去において沈黙していたと報告されたこと、記録管理がよくなったこと、軍隊内でより多くの配偶者と子供が虐待されていることは、知られていません。「現時点で結論するのは本当に難しいことです」と、家庭内暴力と軍隊内での児童虐待を防ぎ、対処するために軍が数十年前に立ち上げた、家族支援プログラムのアナリスト、ティブ・キャンピース(Tib Campise)は言いました。「私は、軍隊内に広く(家庭内暴力が)広がっていることを判断できるかどうかを答えられるとは思いません」。
2010年の会計年度に、確認された配偶者の虐待は千組の夫婦毎に11.2%で、2009年の10.1%、2008年の9.4%から上昇しました。2008年以前は、2001年の16.5%から着実に減少していました。報告書は、2010年の会計年度に、16件の配偶者が虐待で死亡した事例が家族支援プログラムに報告されたと言います。それらの事件の81%で、嫌疑がかかった者は現役部隊の兵士でした。2010年も家族支援プログラムに報告された、実証済みの児童虐待事件の数は上昇し、2008年と2009年の子供千人毎に4.8%件から5.7%へ上昇しました。
ニューハンプシャー大学の「児童への犯罪研究センター(the Crimes against Children Research Center」)の社会学者で家庭内暴力の専門家、デビッド・フィンケルホー(David Finkelhor)は「それは大きな跳ね上がりです」と言います。「年々の飛びはねには見えません。それは何かを意味しそうです」。
立証された児童虐待事件は身体的、性的、情緒的な虐待と育児拒否を含みます。事件のほぼ4分の3にあたる72%は育児拒否と情緒的虐待に分類されました。昨年、家族支援プログラムには29件の児童の死が報告されました。それらの12件は1歳未満の幼児でした。殺人の76%は現役部隊の兵士で、それらの65%は嫌疑をかけられた者は男性でした。
国防総省広報官、モニカ・マトーシュ少佐(Maj. Monica Matoush)によれば、増加する報告は軍のソーシャルワーカーが増えたことと、それとは別に家族支援プログラムの要員が、虐待の申し立てを証拠で立証するかを決めるのに標準フォーマットを使うことに関係があるかもしれないとのことです。「以前の基準では訴えが変えられたり立証されていないとされたものは、現在は立証されたと分類されています」とマトーシュ少佐は電子メールで書きました。
しかし、報告の全体数は2008年以降増加していました。マトーシュ少佐は、それは認識が増えたためにより多くの人が報告している可能性があると言いました。あるいは、当の虐待と育児放棄が「幼少の子供を持つ軍隊の家族に、8年間の戦闘に関連する作戦と戦地派遣からくる蓄積された疲労、現在の国家的な経済情勢に関連するストレスの反映、あるいはそれらやその他の要素との組み合わせに、より関係があるかもしれません」。
陸軍の家族を研究した、研究機関「RTI International」の「the Women, Children and Families Program for Research」の副監督、デボラ・ギブズ(Deborah Gibbs)は、多くの研究は虐待の割合について矛盾する報告をしてきたと言いました。彼女は、配偶者の虐待レートは民間よりも軍隊内の方が高いものの、逆に幼児の虐待は低いという社会学のコンセンサスはあると言いました。「最良の関連データは、配偶者の虐待がより高く、それは子供には負の反動を持つかもしれないことを示します。しかし、最もよい兆候は、子供の虐待のレートが恐らくは民間の母集団よりも軍隊の方が低いということです」「人々には驚きでしょう」。しかし、彼女は戦地派遣が子供の虐待、特に育児放棄を増やしたのは確かだと付け加えました。「それはまったくの常識です。家に残った親は大きなストレスを相手にしています」「ほとんどは雄々しく対処しますが、一部は問題にぶつかるのです」。
政府説明責任局の9月の報告書によれば、国防総省は軍隊に配偶者の虐待がどれだけ存在するかと、防止と対処の努力が有効かを理解する努力をしていません。「国防総省の指導者は家庭内暴力の問題、家庭内暴力の傾向の特定を理解するために必要な情報について可視性を欠き、その努力の有効性を向上させるために事実に基づいた情報を使っていません」。
最大の問題は報告書がデータが不十分なことを見つけたことでした。マトーシュ少佐は説明責任局と意見が一致しませんでした。「未だに個人だけでなく夫婦のリスク要因や、『家庭内虐待』や『家庭内暴力』という言葉に組み込まれた行為の範囲、頻度、重大性においてもコンセンサスがないことから、家庭内の虐待で最大の危機に直面した家族を対象としたことに関して、国防総省はこの問題を民間の部門と共有します」「戦地派遣を経験していない家族で家庭内虐待が起き、複数回の戦地派遣を経験した多くの軍隊の家族で家庭内虐待が起きていないので、家族支援プログラムは、戦地派遣がリスク要因として強調されるべきではないとも指摘しています」。
国防総省の家族支援プログラムに報告された数はそれでもパズルの一部です。虐待の経歴や自身の安全を心配して、虐待を報告できないとか、報告しない人たちの数を加えた数は民間の権威者や軍の法執行機関や指揮官が作成する報告書に表れておらず、家族支援プログラムにも報告されていません。
虐待が犯罪とされた法執行機関の家庭内暴力の事件を集めた、別の国防総省のデータベース「the Defense Incident Based Reporting System」は、憲兵隊の報告を軍がまとめたものです。しかし、「軍隊は必要なデータのほんの一部しか提供せず、軍からの報告は過去数年間大きく上昇しませんでした」と政府説明責任局の報告書は言いました。
2006年に政府説明責任局は、データベースを調整し、中心となるデータベースを作るよう勧告しました。政府説明責任局は「法執行機関のシステムのデータ状態のために」これは実現せず、まだ実現していないと言いました。政府説明責任局によれば、家族支援プログラムのデータも傾向分析や危険のアル家族を対象とすることに使うのには不完全です。それは、年齢、階級、性別、法律違反者を記録するものの、戦地派遣の情報を含んだ家庭内暴力の危険を増加させると考えられる環境に関する情報は僅かです。「隊員のもっと大きな人数に影響を及ぼす作戦上の必要条件がより優先されたために」、より優良のデータベースは優先事項ではなかったと国防総省当局者は政府説明責任局への6月の書簡で言いました。
マトーシュ少佐はこうした問題は対処されたと言いました。「データベースの問題は過去5年間、継続的な注意が払われてきました。すべての軍部門が現在は「事件準拠式防衛報告システム(Defense Incident Based Reporting System: DIBRS)」に準拠して報告しています」「この時点に到達するまでの時間の長さは、システムの複雑さと軍隊内の資源の優先度に起因します」。
非常に興味深い記事です。
専門家たちの意見はバラバラで、家庭内暴力が本当に増加しているのかどうかは確信が持てません。隠れている事件も掃討にあることが予測されます。出張が多い軍人の家では、妻が不満を紛らすために飲酒を始め、アルコール依存症になることがあると聞きます。また、攻撃性が強い男性は、素質を活かせる軍人になりやすく、その暴力が家族に向けられることもあります。かつ、道徳を重んじる軍隊では、経歴を傷つけることを恐れ、家庭内の問題は表沙汰になりにくいという問題もあります。これは、ここ数年の問題として見るのではなく、家庭内暴力そのものを解決するという視点で考えた方がよいのかもしれません。
しかし、マトーシュ少佐のコメントが面白すぎます。国防総省特有の言い回しに終始して、責任を回避しようとしているとしか思えません。これは、こういう問題に国防総省が以下に対応が遅いかということの反映でもあります。こういう意見に納得すべきではありません。軍の支援を待つのではなく、隊員個人が自覚を持ち、問題を起こさないようにするのが肝心だということでもあります。
DIBRSには「家庭内暴力」という言葉は登場せず、同居する赤ん坊が乳幼児突然死症候群で死亡した場合に報告できるということくらいしか関連する事柄がありません。これで問題が解決するとは思えません。(DIBRSのpdfファイルはこちら)
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