カダフィ大佐がヨーロッパに報復?
BBCによれば、リビアのムアマール・カダフィ大佐(Muammar Gaddafi)はNATO軍のリビア作戦に報復するためにヨーロッパを攻撃すると脅しました。
カダフィ大佐は、リビアはNATO軍が作戦を中止しない限り、ヨーロッパ人の「家、会社、家族」を攻撃すると言いました。彼はトリポリ中心部の広場に集まった大勢の支持者に音声のメッセージ報道を通じて言いました。緑の広場に集まった群衆に拡声器を通じて行った放送の中で、彼は支持者たちに、武器が届けられた「西部の山脈へ進撃せよ」と訴えました。
それから、彼はヨーロッパに報復すると警告しました。「(リビア)国民はこの戦いをいつの日にか、ヨーロッパ、あなたがたの家、会社、家族との戦いに勝つことができます。あなたがたが我々の家を標的としているのと同じく、それは合法的な軍事的目標です」「決心すれば、我々はヨーロッパにイナゴのように、ハチのように移動できます。我々はあなたが災害を被る前に後退するよう勧めます」。
一時は世界的にも一定の理解を得られていたカダフィ大佐ですが、この宣言でご破算になった感じです。
実際には、リビア軍にヨーロッパを攻撃する能力はなく、防戦だけで手一杯です。また、実際に報復を行えば、ヨーロッパ諸国に本土防衛という新しい目標を与え、一層の攻撃を招くだけです。また、リビア攻撃に反対しているロシアや中国も、NATO諸国に対してリビア攻撃を止めるように言いにくくなります。どの国も自衛権まで否定することはできないからです。つまるところ、これはカダフィ大佐の支持者向けたリップサービスなのですが、NATO諸国は不快感を感じるでしょう。その辺が計算できないくらいに、あるいはそう言う以外に手がないほどに、カダフィ大佐は追い詰められていると感じているのです。
さらに、この演説で注目すべきは、大佐が西部のナフサ山脈を守れと言っている点です。ミスラタやブレガ方面よりも、いまは西部方面が気になっていることを、大佐は自ら暴露しています。反政府派はバー・アル・ガンナン(Bir al-Ghanam・kmzファイルはこちら)とガリヤン(Garyan・kmzファイルはこちら)に迫っているとされます。ここはナフサ山脈の北側の出口であり、ここを突破されると、天然の要害はなくなり、防御拠点は市街地だけになります。カダフィ大佐も市街戦が主戦場となると、生活環境が戦地となって被害が急増することもあり、支持者の急減を招きかねません。勇ましいことを言っている人たちも、死体を見れば考えが変わるものです。できれば、人目のない山地の中で勝負を決めたいのが大佐の本音です。
この演説は上記2点の理由により、カダフィ大佐が焦っていることを示しており、反政府派にとっては有利なことです。大佐が西部方面を気にして首都防衛の兵を移動させれば、それは首都内部での蜂起や東部ミスラタ方面、西部ザウイヤ方面からの進撃を容易にします。つまり、反政府が考えている戦略通りの展開になるわけです。
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