東部の隔絶地に米軍を再配置

2011.8.13


 military.comが、先日、シールズとアフガン兵のヘリコプターが撃墜された東部アフガニスタンでの特殊作戦の現況を報じました。

 「死の谷」との異名をとる東部アフガンの隔絶地から撤退してからちょうど1ヶ月、米兵はこの地域の、武装勢力の温床で十年目の戦争の危険な第二戦線となった、一度放棄した基地を増強しに戻ります。

 アルカイダとその他の過激派に最も近い侵入した武装勢力が幅をきかせる地域へ戦争の焦点が再び切り替えられる時、孤立し、人口のまばらなペッチ峡谷(Pech Valley)に米兵を再び配置することは、パキスタン国境に近いこの地域の同盟軍の駐留と火力を高めます。

 「ペッチ峡谷へ米軍を戻す決定は、我々が軍を撤退させる時に武装勢力の隠れ家がより多くの危害をもたらすかも知れないと予測されたという認識を反映しているかも知れません」と、アメリカを拠点とする対武装勢力コンサルタント会社「Orbis Operations」のマーク・モイヤー(Mark Moyar)は言いました。「武装勢力はそうした隠れ家で成長し、どこかで作戦を実行するのにそれらを活用します」。

 米軍は再びペッチ峡谷に兵を配置するという決定を重要視しませんでした。アフガン国軍に加え、同盟軍は常にこの地域での駐留を維持してきたと、同盟軍の東部司令部の広報官、チャド・キャロル中佐(Lt. Col. Chad Carroll)は言いました。「それは夜に彼らがどこに頭を横たえるかという問題と同じです」。キャロル中佐は米軍がいまどこに配置され、どれだけの期間派遣されるかを言いませんでした。

 見渡す限りの山の尾根に囲まれた牧歌的な緑の農地があるクナール州(Kunar province)のピッチ峡谷は、戦争中にいくつかの激戦の現場となり、いくつかの見積もりによれば、100人以上の米兵の命を奪いました。

 5月に、大きな人口密集地域を守り、アフガン政府にカブールから勢力範囲を伸ばし、支援国の助けを借りて国民に行政サービスを提供する機会を提供するために、より多くのアフガン人住む地域の部隊を再配置したいとして、米軍主導の同盟軍は峡谷から引き揚げました。

 前東部指揮官のジョン・キャンベル少将(Maj. Gen. John Campbell)は当時、彼は部隊を不活発な位置にはまり込ませたくないと言いました。彼は部隊を動かし、パキスタンの隠れ家から忍び込む武装勢力をより追跡できるようにしたいと言いました。

 長年、東部アフガンは南部よりも遙かに危険なテロリズムの場所でした。彼がソ連と戦った時、オサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)の司令部はクナール州にありました。アメリカが10年前にアフガンに侵攻した後、ビン・ラディンはクナール州とその他の東部州に逃げ場をもとめました。トラ・ボラ(Tora Bora)の洞窟は、クナール州に接する東部ナンガルハル州(Nangarhar provinc)にあります。そして、タリバンとその他が広く領域を支配するヌリスタン州(Nuristan)は、ピーチ峡谷の真北にあります。

 東部ワルダク州(Wardak province)のタンギ峡谷(Tangi Valley)で、38人の米兵とアフガン兵を殺したチヌーク・ヘリコプターの墜落まで、単一の事件で最も大きいのは、クナール州で撃墜されたヘリコプターでした。2005年6月28日に16人の特殊部隊員が死亡しました。

 それと同時にペッチ峡谷で、表面上は人口密集地域と幹線道路を増強するために、米軍はタンギ峡谷の隔絶した基地を去りました。

 「特殊作戦の急襲はいくらか米軍が放棄したタンギ峡谷とその他の峡谷に打撃を与えたものの、彼らは敵の作戦を望まれた程度には中断させませんでした」とモイヤーは最近の論説で書きました。「気づかれていませんが、タンギ峡谷の墜落の直前、武装勢力が示す危険の認識が重大な、ペッチ峡谷に継続的に米軍の駐留を再挿入するという決定を導きました」。

 米軍は7月の最後の臭にこの地域に戻り、歓迎されませんでした。武装勢力は7月25日にヘリコプターを攻撃し、数名を負傷させました。数日後、武装勢力は米軍が派遣されているナンガラム(Nangalam)にある基地に迫撃砲を撃ちました。死者は報告されませんでした。

 東部アフガンの新しい米軍指揮官、ダニエル・B・アリン少将(Maj. Gen. Daniel B. Allyn)は、ペッチ峡谷での米軍再駐留はアフガン軍と組む同盟軍の活動の一環だと言いました。「率直に言えば、(アフガン軍の)カンダク(大隊)には指揮力の問題があり、その指揮官を交替したのに…彼は部隊を独立した部隊として進歩させなかったので、我々はその能力を元に戻すために戻っているところです」とアリン少将は「the Long War Journal」に言いました。

 アリン少将のコメントは、アフガン軍が同盟軍のパートナーなしに仕事をすることができなくなっていることを示しているように思われますが、同盟軍は問題を否定しました。

 「絶対的に、明確に違います」とキャロル中佐は言いました「過去2週間に、アフガン軍は200トンの人道支援物資を供給し、ヌリスタンの人々の治安を完璧にしました。彼らはことのほか、この地域のアフガン国民に受け入れられています。我々はこのすべてにおいて、ごく限られた役割しかありませんでした」。


 また、東部の峡谷に兵を配置するという方針に変更されたようですが、理解はできません。こうした神経質な対応は、孤立した基地がタリバンに攻撃されることで、さらに刺激を受けることになるでしょう。前線の状況よりも、この変更を生んだ考察の内容を知りたいと思いました。

 アフガン軍に問題がないというのも信じられません。先日、アフガン警察と米軍が銃撃戦をやったばかりです。キャロル中佐があげた実例も少なすぎるという感じです。本当にアフガン軍に問題がないのなら、もっと沢山の実例をあげられるはずです。

 いまは、アフガン軍の訓練に全精力を注ぐべき段階です。一々、米軍が手を貸さなくてもよいようにしなければなりません。それができないのなら準備の遅れを認めるべきですが、任務が成功して撤退したことにしないと格好がつかないので、問題は隠れているのではないかと疑います。もともと、アフガンのような広い領域を、ゲリラから守るといった発想が、そもそもおかしいのですが、米国民はほとんどがそれに疑問を持っていません。だから、上手く行ったことにするしかないのです。



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