海兵隊大佐は飲酒運転でどう裁かれた?
多くの場合、軍事裁判にかけられるのは下士卒です。彼らと将校は明らかに軍事裁判での待遇が異なります。しかし、将校の軍事裁判を見ることは少ないので、military.comの記事からそういう事例を見てみましょう。
昨年10月、米ロードアイランド州海兵隊チェリーポイント航空基地(Cherry Point・kmzファイルはこちら)の前指揮官、ダグラス・デーン大佐(Col. Douglas Denn)はニューポート市で飲酒運転をして逮捕されました。金曜日に、デーン大佐は罪を引き下げる判決を受けました。事件の後で解任されるまで、2009年8月から基地の司令官だった47歳のデーン大佐は、10,000ドルの罰金、60日間の宣告猶予と執行猶予、譴責処分を受けました。
デーン大佐は、将官になるとみられていた軍歴25年の叙勲された海兵隊員を引退させかねない海兵隊の査問委員会を受けなければなりません。
取り決めが終わっていた司法取引の制限の中、判決の前に海兵隊判事、マーク・リグズ中佐(Lt. Col. Mark Riggs)は大佐に対するいくつかの政府起訴を取り下げ、いくつかの陳述を割り引きました。リグズ中佐は、デーン大佐に対する起訴のいくつかは、彼が有罪を認めた罪と将校と紳士にあるまじき行為の罪よりも小さいと言いました。
デーン大佐は、3月21日にカーターレット郡地方裁判所で有罪を認めた、飲酒運転と車内に口の開いたアルコールの容器があった件、8時間の連続した休息を取らず、アルコールをとってから12時間以内だったことを報告せずに翌日飛行を行ったことから来る職務怠慢2件で刑を宣告されました。
宣誓証言は勤続3年のニューポート警察のJ・L・フェレル(J.L. Ferrell)が法廷で、海軍航空医官のジョン・トーマス・クレーブス大尉(Lt. John Thomas Cleves)が電話を通じて行いました。
デーン大佐は熱のこもった声明を出し、彼が「多大な後悔と謙虚さをもって法廷に立っています。私はパイロットと海兵大佐としての責任に従って生活しませんでした。私は深く謝罪します」「私の行動は、私が全成人期を捧げた組織、海兵隊をひどく困惑させる結果となりました」「これらの行為により、私は海兵隊評判を傷つけ、私は私自身、私の家族、友人、同僚に当惑と恥をもたらしました」「私は困難の時に私が助言を求めた上官を失望させました」「さらに悪いことに、私は私に指導、助言、手本を求める部下を裏切りました。私がしたことは取り返しがつきませんが、私の行動にすべての責任を取り、人生すべての面で最高に道徳的な人格と道徳規範を約束することに尽力することはできます」。
判決の審議が始まる前、リグズ中佐は政府検察官はその他を検討する十分な理由を示せなかったと言いました。「私は不適切な関係、スピード違反、無謀な行為、パイロットへの虚言を検討するつもりはありません」。
軍の起訴は、10月25日、ニューポートと10マイル離れた基地の間の国道70号線で、時速55マイル(88.5km)のところを時速67マイル(107.8km)で走り、スピード違反で捕まったことに起因します。さらなる調査は、飲酒運転と口の開いたアルコール容器、後部座席の1杯分のワインと共に運転した罪をもたらしました。
デーン大佐は警察に協力し、0.14〜0.15と記録された酒気検査を積極的に受け入れ、ノースカロライナ州の法廷制限は0.08です。彼は法廷に、午後5時30分から8時30分までにワイン3杯を飲み、車で帰宅する前にモアヘッド市で友人とフットボールの試合の一部を見たと述べました。
デーン大佐は、ニューヨークへ向かう乗客2人を乗せ、C-130で3行程の最初の2行程を飛ぶことになっていましたが、その朝、彼が飛行機に行くと、彼は海兵隊の副操縦士に最後の行程を行うと言いました。デーン大佐は、海軍の飛行規則に従い、8時間休息する時間を取らなかったこと、最低12時間以内にアルコールを摂ったと彼に報告しませんでした。これが職務怠慢罪になりました。
政府検察官、ヴァレリー・ダニュルク中佐(Lt. Col. Valerie Danyluk)とエリック・ニューマン中尉(1st Lt. Eric Neuman)は、法廷に禁固90日間と海兵隊からの解雇を求めました。
民間人弁護士の弁護団、フィリップ・ハワード(Phillip Harward)とダグラス・コーディ(Douglas Cody)、海兵隊弁護士、ジョン・G・ベーカー大佐(Col. John G. Baker)は、罪に対する合法的な処罰の一つ「無処分」を求めました。
デーン大佐はすでに処罰されていると、ハワード弁護士は言いました。「高等軍事裁判での判決は、彼の全生涯を反映させなければなりません。それはそれ自体が生涯の処罰であり、雇用市場で彼を永遠に傷つけます。デーン大佐は将官になるのが目前に待ち受けていました。彼の軍歴は失われ、指揮を解かれました。これが処罰です」。
それから、ハワードは法定内の新聞とテレビの記者は、特に軽犯罪のための軍事裁判では珍しいことと指摘し、公の場での恥辱と彼の家族への影響はさらなる処罰であると言いました。これはすべて最初の軽犯罪のためです。
なぜ彼が下位の階級で退役しなければならないかについて、正当な理由を示さなければならない査問委員会からも来る副次的損失も処罰だと、元海兵隊検察官のハワード弁護士は言いました。
デーン大佐は判決後に記者に話をしませんでしたが、彼の弁護士は、彼らが司法取引をして、彼の退役を損ねかねない潜在的な禁固と解雇からデーン大佐を守るために部分的な合意をしたと言いました。
ハワードは「私は判決はあまりにも厳しいと考えました。私は罰金に驚きました」と言いました。彼は罰金が普通の大佐のほとんど1ヶ月分の給料だと言いました。「しかし、私はリグズ中佐が運転マナーについて、それは絶対的なものだというメッセージを送っていたと思います。重大さに関係なく、それには従うものです」。
刑法上の責任はすでに刑事裁判で終えているので、軍事裁判は軍の法律、統一軍紀法典に違反した部分を問題とします。
デーン大佐のアルコール呼気検査の単位は記事に書かれていませんが、日本と同じ「mg」だと思われます。日本では「酒気帯び運転」となるのは15mg以上です。呼気検査に関係なく、酒を飲んで運転できる能力がない状態で運転すると「酒酔い運転」となります。この場合の明確な基準はありませんが、直立不動ができないとか、歩行が困難だといった主観的基準と血中アルコール濃度が0.5mg以上の場合に適用するようです。それを考えると、大佐は確かに飲み過ぎたのでしょう。
どこで捕まったのかは分かりませんが、チェリーポイント基地から南に行ったところにあるニューポート市の間の国道70号線には、林の中を通るほぼ直線のコースがあります。ここは車の速度を上げたくなる場所であり、警察官なら速度違反の取締をやりたくなる場所でもあります。
ハワード弁護士が厳しいという10,000ドルの罰金は、スピード違反のものとしては確かに高額ですが、高級将校なら社会ルールは守れという警告としては納得できます。地位には責任が伴うのです。また、これは他の部分で処分を軽くすることとのバランスを取るためだとも言えます。
60日間の宣告猶予と執行猶予、譴責処分は、その間に査問委員会が行われ、大佐の解雇が決まることを見込んでいるのだろうと思います。そうすれば、民間人の身分になってから刑が宣告され、それに執行猶予がついているという形になります。この点では、かなり裁判所は妥協しているように見えますが、その分、罰金が高くなったという感じです。
譴責処分は公式の記録として、大佐の軍歴に残ります。これは彼に我慢してもらうしかありません。
査問委員会にかけられるような将校は、過去の事例を見ても、軍を辞めさせられなくても、自分で辞職するものです。すでに、デーン大佐には将官に昇進するチャンスはなく、今後、面白い仕事にあたる可能性もありません。
裁判官はよく考えた上で罪の重さを考えたようです。しかし、大佐の裁判を中佐が裁いている点は、軍事裁判は将校には優しいと言えます。陪審員に関する記述はありませんでした。下士卒の裁判だと陪審員はほとんどが上官です。7月12日に紹介したダレン・ジョーンズ3等軍曹の裁判では、陪審員は陪審員は大佐2人、部隊最先任上級曹長2人、上級曹長2人です。部隊最先任上級曹長なんて、3等軍曹が滅多にお目にかからない人物です。弁護団に大佐がいることも、被告を有利にさせているように思えます。将校は処罰される場合でも、対面を保ってもらえる環境があるのです。
車中から酒が見つかったことから、デーン大佐は飲酒運転をよくやっていた可能性があり、むしろそれが気になります。アメリカでは、酒はトランクに入れないと逮捕されると聞きます。日本では他の買い物と一緒にシートに置いても大丈夫です。これはその状態で酒を飲み出す人が少ないからかも知れません。漁港などではお祭りで、酒を飲んで車で帰る場合がよくあると聞きますが、店で酒を買った帰りに飲酒して事故を起こしたという事例は聞いたことがありません。この辺に日本人の酒の飲み方の特徴があるのかも知れません。
一点追加します。
将校は軍事裁判では、不名誉除隊(Dishonorable Discharge: DD)や懲戒除隊(Bad Conduct Discharge: BCD)の処分を受けません。ですが、解雇(dismissal)されることはあり、それは退役(retirement)とは異なります。この記事は「dismissal from the Marine Corps.」と書いています。定訳は分かりませんし、多分存在しないと思うのですが、ここでは「解雇」と訳しました。
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