反政府軍はブレガで戦闘を継続
BBCによれば、カダフィ軍が東部のブレガ(Brega)に反撃を行いました。
反政府派の広報官は、ブレガの支配権を得た反政府軍は激しい砲撃の中、街の工業区域から引き揚げたと言いました。しかし、反政府派はズリタン(Zlitan)、ザウィヤ(Zawiya)を支配しています。BBCの特派員は両方の街で彼らが陣を構えるのを見ました。
トリポリからの報告で、BBCのマシュー・プライス(Matthew Price)は、軍事的、政治的に、気運が明らかにカダフィ大佐と彼の支持者たちに対抗していると言いました。NATO軍の空爆が数ヶ月続いた後、大佐の部隊は新たな攻勢を準備するためにズリタンのような場所から引き揚げ、軍の一部は戦い続けるには弱体化しすぎたと、特派員は言いました。
反政府派広報官、アーメド・バニ大佐(Col Ahmed Bani)は、反政府軍がブレガ(Brega)で退却したことを認めました。リビアで2番目の炭化水素施設で製油所に石油を供給する主要な油田がある場所は、6ヶ月の間、持ち主の変更を繰り返しました。「昨日、工業地域は我々の完全な支配下にありましたが、激しい砲撃のために今日、状況が変わったのが本当です」「我々は東部の工業地帯から撤退しました」とバニ大佐は言いました。
ズリタンを訪問した後、BBCのオーラ・ゲーリン(Orla Guerin)は、反政府派は街をしっかりとつかみ、中心部と検問所を支配しています。しかし、小火器と迫撃砲の発砲が未だに聞かれ、反政府派はBBCに中心部の戦略的な橋の向こうは、まだ攻撃の危険があると言いました。
ザウィヤのルパート・ウィングフィールド・ヘイズ(Rupert Wingfield-Hayes)は、反政府派はカダフィ軍を街から追い出すのに成功したようだと言いました。彼は、サハラ以南のアフリカ人の死体が通りに見られ、反政府派は、それらの多くがカダフィ大佐のために戦った外国人傭兵だと言います。
反政府軍は南からもトリポリに向かっています。
一方、報告はカダフィ陣営から新たに高官が離反したことを示しています。カダフィ大佐が1969年に権力につくのを助け、1990年代に彼と不仲になったアブデル・サラム・ジャロウド(Abdel Salam Jalloud)は、隣国チュジニアからヨーロッパに向かっていると考えられています。石油大臣、オムラン・アブクラ(Oil Minister Omran Abukraa)は、イタリア訪問のあとで木曜日にリビアに帰国するのではなく、チュニジアへ行きました。
カダフィ政権の終わりが始まっています。民主的な政権が樹立されれば、今後はこれまでとは一変します。これまで、リビアやエジプトのような国の内情はよく報道されませんでした。強力な指導者は国の内部が分裂しているような報道を許さないので、そういう報道が流れなかったのです。今後は、様々な問題が簡単に報じられるようになります。これは新政権が問題だらけなのではなく、単にこれまでは伏せられていた問題が公に語られるようになったことを意味します。その点を勘違いしないことです。多分、国内マスコミはお決まりの文句「新政権は問題が山積みで、先は見えない」と言うでしょう。しかし、それは国が民主的になった証拠なのです。
これまで国内メディアは、リビア内戦は行き詰まったとしか報じてきませんでした。こうした報道姿勢は読者や視聴者の情勢判断を誤らせます。先日まで行き詰まっていたはずの内乱なのに、突如として首都近郊まで反政府派が迫った訳ですから、情報の受け手は混乱するばかりです。これが国内メディアの致命的な欠点です。
時事通信は21日朝配信の記事で、「リビア首都で戦闘=『数十人の反政府勢力が侵入』―国営テレビ」というタイトルの記事を報じています。記事は「国営テレビは、政府スポークスマンの話として、数十人規模の集団が首都に侵入したと伝え、戦闘があったことを認めた」「イブラヒム情報相は国営テレビを通じ、『カダフィがあなた方リビア国民の指導者だ。トリポリは数千人に防御されている』と述べ、首都市民に平静を呼び掛けた」と書いています。BBCなどは、トリポリ内部で戦闘があったとは報じていません。このカダフィ政権の声明をそのまま受け取ることはできません。これは人心の混乱を防ぐために、侵入したのは数十人だけで、カダフィ軍は数千人もいると言っているだけです。つまり、情報操作です。こんな話を何の解説もつけずに報じるのは間違っています。客観報道だから、事実だけを報じるというなら、それは責任逃れとの批判を浴びるべきです。
当サイトの記事を読んでいる人なら、カダフィ軍内部に反政府派につこうとしている者たちがいることを知っているはずで、彼らが首都で行動を起こした可能性があると考えるでしょう。そうであれば、話はまったく変わってしまいます。
なお、ズリタンの「戦略的な橋」がどこかは、当サイトの記事を読んでいる人なら分かるはずです。先日、ズリタンの西側に河があり、反政府軍はそこを攻略の目標とすべきだと書きました。この河の上流にはダムがあり、そこで水量を調整しているようです。水がなくても、河は幅広く窪んだ地形になっており、車両は橋を通る必要があります。トリポリへ向かう幹線道路と河が交差しているところにある橋がそれです。カダフィ軍は橋を守ることで、反政府派を食い止めようとします。つまり、この記事でズリタンの反政府勢力がどこまで進出したかが分かるわけです。Google Earthで橋を確認すれば、理解が深まるでしょう。
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