トリポリで戦闘が継続中

2011.8.23


 今朝は戦況に関する報道は少なく、祝賀ムードの反政府派や海外の反応、カダフィ大佐の経歴などを報じて、リビア革命を振り返っています。それらの中から戦況に関して報じているBBCの記事(今朝午前6時45分掲載)を紹介します。

 数カ所から首都に対する攻撃を開始した後、反政府軍はカダフィ軍とトリポリの支配を巡って戦っています。反政府派指揮官は、彼らが国営テレビを含む、首都の約80%を支配したと言います。しかし、戦闘は市の一部でまだ荒れ狂っていて、反政府軍はリビアの指導者を見つけ出せずにいます。

 世界の指導者たちはカダフィ大佐に退陣するよう訴えました。オバマ大統領は42年間の彼の統治は「終焉に来ている」と言いました。

 中心部の緑の広場で歓喜する群衆に出迎えられた反政府軍は街の各地に検問所を設置し、増援が船で到着することになっていると言います。

 しかし、都市の他の部分では、彼らは強力な抵抗に遭いました。反政府派広報官は、月曜の早朝に、反政府軍がカダフィ大佐の住居、バブ・アル・アジジヤから出てきた戦車から攻撃を受けたと言いました。目撃者は一日中、この地域で発砲が続いたと言います。

 カダフィ支持者たちは、さらに南の、多くの西欧ジャーナリストが拠点にするリクソスホテル(kmzファイルはこちら)周辺の支配権を維持しています。そして、街の西側で戦っている反政府派は月曜遅くに押し戻されました。「私たちは、もう一晩の激しい市街戦の準備をしています」とトリポリの住民は言いました。「彼らは国民の支持を得られないと知っているので、私はカダフィ軍はゲリラ戦に打って出ると思います」。しかし、別の住民は、反政府軍兵士が「人々の家に侵入し、何でも盗んでいる」と言い、反政府軍の攻撃は「リビアとNATO軍に災い」となると言いました。

 カダフィ軍はスカッドミサイルらしいものを近くの拠点、シルト(Sirte)から発射していると米防衛当局者は言いました。

 反政府軍は、最も有名なサイフ・アル・イスラム(Saif al-Islam)を含む、カダフィ大佐の家族数人が捕らえられたと言います。長男のムハマッド(Muhammad)は拘束されてから数時間後に反政府派の監禁から逃走したと伝えられます。

 中国とロシアはカダフィ軍に戦闘を中止するよう求める声明を出しました。

 潘基文国連事務総長(UN secretary general Ban Ki-moon)は、地域の指導者たちが今週末に、ニューヨークで会談を持つと言います。

 エジプトは公式に国家暫定評議会をリビア国民の合法的代表と認めました。

 3月以来、公に報告ができなかったBBCのトリポリ特派員、ラナ・ジャワド(Rana Jawad)は、トリポリ東部の彼女の地域の人々は地元のモスクでカダフィ君主政治以前の国家を歌うイスラム教指導者に起こされたと言います。彼女は終わりが近いという感覚があり、反政府軍は彼らが望んだものを成し遂げたと言います。

 緑の広場で、反政府軍支持者たちは、カダフィ政府の緑の旗を取り壊し、大佐の肖像を踏みつけました。

 声明で、オバマ大統領は状況はまだ流動的で、カダフィ政権の一部が驚異をもたらし続けると言いました。「しかし、これは非常に明白です。カダフィ政権は終わりに来ており、リビアの未来は国民の手にあります」。彼はカダフィ大佐に「明白に権力をリビア国民に手渡し、戦い続けている軍に武器を置くよう要請」して、さらなる流血を減らすよう訴えました。

 しかし、大佐の居場所は不明のままです。

 反政府派の代表、ムスタファ・アブドゥル・ジャリル(Mustafa Abdul Jalil)は月曜日午後の記者会見で、彼はカダフィ大佐がどこにいるか分からないと言いました。「我々には、カダフィ大佐が(住居の中に)いるとか、まだリビア国内にいるのか、国外にいるのかを知りません」。

 外交筋は、カダフィ大佐がまだバブ・アル・アジジヤにいると言いました。彼は数ヶ月も公衆の面前に出ていませんが、公表されていない場所からの音声メッセージを放送しました。土曜遅くに報じられたメッセージでは、リビア指導者は住民に、反政府軍から「トリポリを救え」と訴えました。


 リクソスホテル周辺にカダフィ支持者がいるという記述は、戦況を考えるのに役立ちます。kmzファイルを使い、Google Earthで場所を確認してみてください。バブ・アル・アジジヤから約2kmにある高級ホテルであることが分かります。トリポリ国際空港からはハイウェイで来られる便利な場所です。

 記者たちはホテルから出られないらしく、BBCの別の記事はホテル内の様子を書いているほどです。ホテルとバブ・アル・アジジヤの間には林があり、ホテルからカダフィ大佐の住居は見られそうにありません。林を突っ切って、状況を見に行けと言いたくなりますが、この周辺が戦闘状態なので出られないのでしょう。この一角が最後に残されたカダフィ大佐の拠点ということになります。しかし、まもなくここも陥落するでしょう。

 今朝のNHKニュースは「なぜ急展開?」との見解を示し。行き詰まっていた反政府派が急に首都を占領したことを疑問視しました。NHKは恥ずかしくないのでしょうか?。確かに、首都突入の時期はこれまでの反政府派の動きからすると早かったのですが、先週末にザウィヤが陥落した時点で終わりが近いことは分かったはずです。それ以前のナフサ山脈一帯での進展は、当サイトで指摘してきたように、カダフィ政権にとって致命的でした。特派員も派遣せずに来たツケがこれです。いや、特派員を出さなくても、海外メディアの報道を見ていれば、状況は分かったはずです。NHKだけでなく、日本政府も最近になって代表を反政府派に派遣したくらいで、総理は声明すら出しません。島国根性で「どうせ地球の反対側の遠い国での出来事」と思っているところに、この致命的な無関心の原因があります。これが国内メディアの現状です。



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