広島平和祈念式をまったく理解しない人たち

　military.comが広島市の平和記念公園で行われた第66回平和祈念式典（正式名は「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」）について報じました。

　式典の様子を伝える記事から、気になるところを紹介します。原爆に関する解説の部分です。

爆弾は街のほとんどを破壊し、約140,000人を殺しました。８月９日の二番目の長崎での原爆投下は、数万人以上を殺し、日本人に降伏を促しました。

　原爆が日本の降伏を促したという誤解が未だにあることを思い知らされた気分です。AP通信の配信記事なので、外国人記者が書いたのだろうと思ったら、記者名は「Koji Sasahara」。なんと、日本人の名前でした。アメリカでも歴史家なら、原爆投下前に終戦処理が国策となっていたことを知っています。

　1945年２月14日に、近衞文麿は和平を示唆した「近衛上奏文」を天皇に奏上しました。天皇はこれに理解を示しましたが、実行するのは主として軍部の反対により遅々として進みませんでした。６月８日に行われた御前会議では、戦争継続は不可能との報告が出されたにも関わらず、軍令部総長らが反対し、天皇により戦争継続が裁可されました。しかし、戦争継続は表向きで、誰もがソ連を介在した和平を考えていたのです。御前会議の決定に不満だった天皇は、同月22日に「懇談」という形で戦争指導会議のメンバーを呼び、戦争を継続しながらも、終戦の手続きを検討するよう「速やかに具体的研究をとげ、これを実現するよう努力せよ」と異例の指示を出しています。ポツダム宣言が発表されたのは７月26日ですから、そのかなり前から終戦工作は進んでいたのです。鈴木内閣は、天皇の指示でソ連に和平を依頼しますが、相手が乗り気ではなく、話は進みませんでした。確かに最終的な決定がなされたのは長崎市に原爆が投下された後の８月９日深夜です。会議が終わった時には10日になっていましたが、詳細が決定したのがこの時というだけで、終戦の方針は数ヶ月前に決まっていたわけです。強いて言えば、原爆が最終的決定を急がせたとは言えるものの、その役割は限定的でした。原子爆弾が戦争を終わらせたという見解が成り立たないことは、以前から言われていますが、まだ理解されていないようです。

　この誤解はアメリカでは特に根深く、この記事の下にある掲示板には滅茶苦茶なアメリカ人の認識が書かれています。いくつかを紹介します。

purpleheartpark Aug 6, 2011 3:28:08 PM
式典の間、エノラ・ゲイ号が上空飛行を行いました。

24445958 Aug 6, 2011 3:49:22 PM
Bad Purple Bad（訳は意味不明です）。まったく笑うしかないね。

Festus_1961 Aug 6, 2011 6:24:13 PM
PHP（Peace and Happiness through Prosperity　「繁栄を通して平和と幸福を」という意味）。同じことを考えていたので笑えました。
アメリカ人は、真珠湾と第２次世界大戦の他の戦いで殺されたアメリカ人の名前を載せた小冊子を投下できました。戦時捕虜として死んだアメリカ人のリストもよいでしょうね。それは戦争を最終的に終わらせた２個の爆弾の１個目に相応しい追悼です。それは８月９日に予定されるかも。
私はオバマ大統領がアメリカの武力侵略と彼らが太平洋を支配するために必要とした軍事物資とガソリンを売らなかったことを謝罪するのを待っています。

Again, thanks! rkgtactical Aug 6, 2011 9:02:00 PM
広島市長は原子力技術を望みません。
原子爆弾がなかったとしたら、百万人のアメリカ人の犠牲は生まれず、日本国民はほとんどが殺されたでしょう。
こういう数字を市長はどう思うのかな？。

　Festus_1961は気が利いたことを書いたつもりのようですが、オバマ大統領が核廃絶を主張していることすら分かっていないようで、むしろそれが気の毒です。

　一方で、感銘を受ける発言もありました。それは、何気なく書かれたように見える次の発言から始まっています。

19970270 Aug 7, 2011 10:06:04 AM
真珠湾がなければ、広島への原爆投下はなかったでしょう。

Misanthrope2 Aug 7, 2011 12:15:29 PM
日本の石油供給を遮断するためにマラッカ海峡を閉鎖しなければ、真珠湾はなかったでしょう。
アメリカは日本が他の選択肢を持たず、軍隊で抵抗するしかないことを知りながらこれを行いました。それはドイツにアメリカに宣戦布告することを強い、ルーズベルト大統領と側近たちの本当の目的でした。
結局、アメリカは戦争に勝って平和を失いました。

AirForceAggie Aug 7, 2011 4:36:43 PM
purpleheartpark Aug 6, 2011 3:28:08 PM
式典の間、エノラ・ゲイ号が上空飛行を行いました。
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毎年、フレデリックスバーグで、包囲攻撃で死んだ南軍と何十万人もの北軍戦死者の記念式典があります。
なぜあなたが、サムター要塞で南軍の奇襲で死んだ北軍戦死者と南軍の奇襲による数十万人の北軍戦死者のリストを送らないのかを言いましょう。
あなたがそうしないのは、死者に対して無礼であるからでしょう。
それは日本についても同じことです。
日本と南軍どちらの場合も、歴史の間違った面でした。
それでも、私同様にあなたは平均的な国民は歴史の流れに沿って流されるだけということを知っているから、我々は両側の死者を追悼できます。
核兵器は必要だったでしょうか？。
私はイエスと言わなければならないでしょう。
しかし、私は何十万人もの市民の死を喜んだりはしません。
PHPのあなたに似つかわしいことです。
もう一つだけ言います。
間違った愛国心のベールに隠された偏狭さを。

　フレデリックスバーグは南北戦争中の1862年12月に、北軍が南軍の塹壕陣地を攻めて大損害を出した場所です。サムター要塞は南北戦争の初戦といわれる戦いで、AirForceAggieさんは、これを真珠湾に引っかけているようです。フレデリックスバーグでの北軍戦死者は何十万人までは行かないと思いますが、それは置いておきましょう。