原潜エカテリンブルク火災の続報

2012.1.1


 原潜エカテリンブルク(Yekaterinburg)の火災について、他の記事を調べましたが、原子炉が完全に停止していたのか、電気を供給して冷却ポンプを回していたのかを書いた記事はありませんでした(過去の記事はこちら)。その他の記事から目新しい情報を拾い上げてみました。

 ワシントン・ポスト紙の記事からは、火事がかなりひどかったように思われます。

 火事は木曜日に発生し、エカテリンブルクが乾ドックに入っている時に起こりました。火事は金曜の午後に消され、消防士は潜水艦をクールダウンするために放水を続けました。最新の潜水艦のほとんどは、外殻を敵の探知を難しくするためのゴムで覆っています。潜水艦の乗員7人が有毒な一酸化炭素の煙を吸って病院に運ばれました。明らかではない乗員は火事の間、潜水艦の内部に残りましたが、火災は内部へ広がらず、乗員は無事でした。乗員が出られなくなったのか、命令で残ったのかは不明です。有毒な煙はロスリャコボ(Roslyakovo・kmzファイルはこちら)の街にまで広がりましたが、地元当局者は住民を避難させる必要はないと言いました。元最大の造船所の責任者、ニコライ・カリストラトフ(Nikolai Kalistratov)は、火事は恐らく足場を耐火性のある特別なペンキを塗るといった安全措置を取らなかったために起きたと言いました。「プロ意識の欠如か、金を節約しようとして大金を失うことになったのです」。火事の損害は廃船になる必要があるほど大きいとインタファクス通信は報じました。ドミトリー・ロゴズィン副首相(Deputy Prime Minister Dmitry Rogozin)は、潜水艦は修理の後で海軍に戻ると言いました。

 BBCの記事は消火にあたった消防士が11人だったと言いました。地元の報道ではヘリコプターも使われたと言いました。ロシアの報道機関はあとで、潜水艦が消火を助けるために部分的に水に漬けられたと言いました。

 globalsecurity.orgの記事は、火災については他の報道機関と同じことを報じていますが、エカテリンブルクの性能について詳しく解説しています。

 stratfor.comの記事も読みたかったのですが、このサイトには不正アクセスがあった模様で、現在、調査のためにサイトが閉鎖されています。


 昨日夜に記事を更新するつもりが、疲れのために果たせませんでした。毎年、新年には昨年の総括や今年の展望を書いていましたが、今年は東北大震災の影響か、そのような気分になりません。「年忘れ」という気分ではなく、時代は年が変わっても連続しているとしか思えない状況です。そこで、直前にやっていたことを継続することにしました。

 火事は単に足場を燃やしただけでなく、消音用のゴム材に燃え移ったようです。ゴムは有毒な煙を出し、高音で燃えます。これが潜水艦の外殻の強度に悪影響を及ぼさなかったかが気になります。特に火災が長時間に及んだことは、その可能性を考えさせます。潜水艦は普通、二重構造になっているから大丈夫だとは言い切れません。乾ドックに水を入れたのは消火のためというよりは、冷却が目的だったと思います。

 現場はGoogle Earthを使うと簡単に特定できます。kmzファイルを使って、造船所を見てください。乾ドックはいくつもありますが、全長167mのエカテリンブルクが収められるドックは一つしかありません。一番大きな乾ドックが現場です。



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