ロムニー候補が「タリバンを殺せ」と主張

2012.1.18


 thehill.comによれば、共和党の大統領候補、ミット・ロムニー氏(Mitt Romney)が公開討論会でタリバンと交渉しないと述べ、拍手喝采を浴びました。

 ロムニー氏は「どこにいようと、我々の敵を抹殺します。これらの人々は我々に対して戦争を宣言しました。彼らはアメリカ人を殺しています。我々は彼らがどこにいようと出かけて、敵を殺します」と言いました。

 オバマ政権がタリバンと交渉するのは誤りで、バイデン副大統領がタリバンはアメリカの敵ではないと言うのは誤りだと述べ、ロムニー氏は「アメリカの正しい道は、タリバンが我々の兵士を殺している間は交渉しないことです」と宣言しました。ロムニー氏はオサマ・ビン・ラディンを殺害したのはオバマの外交政策で正しいことの一つだと指摘しました。「オサマ・ビン・ラディンについて正しいことは、彼が頭の中に受けた銃弾です」とロムニー氏は言いました。

 別に、読売新聞が報じたところでは、ニュート・ギングリッチ元下院議長も類似する意見を述べ、ロン・ポール下院議員は反対意見を述べたようです。


 共和党にはこんな候補者しかいないのかという気持ちにさせられる話です。thehill.comにはビデオ映像も掲載されていて、討論会の模様が分かります。

 ロムニー氏は、アメリカはアフガニスタンのタリバンと交渉すべきかと司会者に質問されて、このような答えを返しました。

 タリバンはアメリカに戦争を宣言したのではなく、アメリカがタリバンに戦争を仕掛けたのです。タリバンはビン・ラディンを匿いましたが、同時多発テロには無関係でした。もともと、そのような力はタリバンにはありません。ビン・ラディンが米軍の攻撃を避けようとしてアフガンに逃げ込んでいたから、アメリカはアフガンに攻撃を仕掛けました。それも、最初はCIAが反タリバン勢力「北部同盟」を支援する方法をとり、単発の特殊部隊による奇襲攻撃や空爆が米軍の活動の中心でした。現在のように、バグラム空軍基地に拠点を設けて、陸軍と海兵隊が活動するようになったのは、単にイラク戦の失敗を批判されたブッシュ政権が戦略を転換したからで、この戦略はまったく無意味で有害でした。ロムニー氏が言うとおりのことをすれば、この誤りを継続することになります。バグラム空軍基地への空輸ルート、タリバンの攻撃を受け続けるパキスタン経由の陸上ルートを守りながら、地上戦を継続することになります。それはアメリカにとって、最悪の結末を招くでしょう。もしやるのなら、基本的な戦略コンセプトくらいは示すべきです。

 それに、米軍はすでに手じまいにかかっています。不必要になる下士官は退職させ、大幅な軍事予算の圧縮にも取りかかっています。これを途中から変更することは無理です。

 ビン・ラディン暗殺はブッシュ政権期から継続されてきたことであり、オバマ政権独自の外交政策ではありません。褒める必要がないところで政敵を褒めるのは無意味です。

 ロムニー氏の発言は、無知なアメリカ国民を騙して票を集めるための方便に過ぎません。実質的に、ロムニー氏は何も言っていないに等しいのです。



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