ウートリッチが有罪を認めた理由

2012.1.26


 military.comによれば、ハディーサ事件で有罪と認めたフランク・ウートリッチ2等軍曹(Staff Sgt. Frank Wuterich)が、裁判所で民間人の損失について謝罪しました。

 31歳のウートリッチは彼らが愛する者を失ったことを謝罪し、彼らの家族を傷つけるつもりはまったくなかったと言いました。彼は有罪を認めたことは彼の分隊が不当、下劣に振る舞うことを決して示唆していなかったと言いました。「それでも最良の意図ですら、時として戦争行動は悲劇的な結果をもたらすことがあります」とウートリッチが言いました。

 彼は降格されますが、有罪を認める司法取引の一部として刑務所には行きません。故殺罪9件の起訴を取り下げた司法取引は取り下げられ、米軍には軍隊の責任はなかったと主張します。

 「私は、アメリカが民主的で公正であることを示すために、アメリカの司法がこの人に終身刑を言い渡し、彼は世界の前に現れて、犯罪に関与したと告白すると期待していました」と事件の生存者の一人、アウィス・ファハミー(Awis Fahmi)は言いました。彼は背中に受けた銃弾による傷を見せました。

 裁判長デビッド・ジョーンズ中佐(Lt. Col. David Jones)は最初、最大で禁固3ヶ月を勧告し、「裁判所がこの事件の事実よりも悪い職務怠慢を考えることは難しい」と言いました。それから彼は司法取引が入った封筒を開けて、司法取引が刑務所への収監を拒むと言いました。「あなたのために非常によいことです」とジョーンズ中佐はウートリッチに言いました。ジョーンズ中佐は彼が2等兵に降格されることを勧告しましたが、3分の2の給与減額は、離婚した父親が唯一3人の娘の親権を持つことを理由に行使しませんでした。降格はすでに司法取引に署名した海平大将の承認されなければなりません。

 被告弁護人、ニール・パケット(Neal Puckett)はウートリッチがイラクで大虐殺をした殺人者と不当にレッテルを貼られたと言いました。彼はウートリッチは海兵隊員を守ろうとしただけだと主張しました。「この事件での適切な罰は罰ではありません」。彼は法廷ではコメントを断りましたが、彼と共同弁護人のヘイザム・ファラジ(Haytham Faraj)は声明を出し「我々はウートリッチ2等軍曹ために正義が行われたと信じ、さらに彼はハディーサの犠牲者の家族に同じ司法の基準を分け与えることが彼の力の範囲内にあることを望みます」と言いました。

 ウートリッチはイラク人犠牲者の家族に宛て、彼らの傷みを和らげるための言葉はないと言いました。「私はあなたが2005年11月19日の本当の犠牲者であることを承知しています」。彼は法廷で続けました。「海兵隊員と私があの日、これらの家を掃討した時、私は私が脅威と認めたものに対応し、私の意図はほかの海兵隊員が生き残るために脅威を取り除くことにありました」「私がチームに先に撃ち、後で尋問しろと言った時、民間人に発砲することを意図していませんでした。敵に直面した時にためらうなという意味でした」「あの日、私は決して自分の武器で女性や子供を撃ちませんでした」とあとでウートリッチはジョーンズ中佐に言いました。ウートリッチの主張は、寝室で彼が女性と子供に発砲したという元チームメンバーの証言と一致しません。

 ウートリッチは海兵隊を除隊し、情報テクノロジーの分野で新しいキャリアを積む予定です。弁護士は彼らが減刑を請願するつもりだと言いました。


 記事の事件の内容に関する部分は、すでに多くを紹介しているので訳しませんでした。

 要するに就職口が見つかったので、ウートリッチは早く裁判を終わらせるために有罪を認めたということでした。日本と違い、アメリカの裁判は被告が有罪を認めた時点で終了します。適当な手紙を書いて、読み上げ、罪は認めるけど、私は誰も殺してませんと言えば終わりです。検察官は用意していた追及の材料を法廷で使えなくなり、ウートリッチはギリギリのところで名誉を保って裁判を終われます。不名誉除隊にはならないので、軍歴による恩典も消失しません。

 このように軍人を不当な戦闘行為で裁くのは難しいのです。殺される側が払う損失は計り知れません。なにより、事件の真相究明はこれで断たれたことになります。ウートリッチが殺害に加わったかどうかは明らかにされません。記事には死者の中に車いすの男性がいたとも書いています。海兵隊員は「車いすに乗ったテロリスト」に対して雄々しく戦ったという笑い話です。司法取引はウートリッチのためにはなっても、アメリカの美徳を一段と格下げした結果になったのです。



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