オスプレイが早くも市街地上空でモード転換

2012.10.4


 琉球新報が興味深い画像をYoutubeに今月1日にアップロードしています。

 「オスプレイ配備強行 市街地上空で『転換』」というタイトルです。那覇市上空を飛行するオスプレイが市街地で固定翼機モードからヘリコプターモードに転換し、日米政府間の協定を破ったという内容です。映像に対して、色々なコメントがついていますが、誰もモード転換が行われたのかが普天間基地上空かどうかを確認せずに意見を述べているのが気になります。

 まずは、この映像から分かることを考えてみるべきです。

 「那覇空港方面から固定翼機モードで那覇市上空に進入」という字幕で、オスプレイがどの方向から飛んできたのかが分かります。「琉球新報社上空を通過」という字幕で、撮影者が琉球新報の屋上にいることが分かります。資料によると、琉球新報社ビルの高さは48.4mです。日米協定では、オスプレイはこのビルの3倍以上高い場所を飛ぶことになっていますが、残念ながら、この映像から高度を割り出すのは難しそうです。  オスプレイが琉球新報社ビル上空に来たのがビデオ映像の1分01秒の時点で、転換モードを開始するのが1.21秒の時点です。この約20秒間を手がかりに考えてみます。

 実際にどうだったかは分かりませんが、オスプレイは滑走路と駐機場の間にあるヘリポートを目指したと仮定し、ここに真っ直ぐに向かっていたとすると、下図の通り、飛行コースは琉球新報の少し南東を通過することが分かります。映像に大きな矛盾はありません。

図は右クリックで拡大できます。

 オスプレイが転換モードに入るには、普天間基地の中に明確に入った場所でなければなりません。すると、進入灯付近は誤解を招くので、滑走路の南端付近としてみます。琉球新報ビルとこの地点の間は約6.9kmです。20秒間で6.9km移動するには秒速345m、つまり時速1,242km出さないと無理です。これは航空機としては早すぎます。

 オスプレイの固定翼機モードでの失速速度は時速203kmとされます。ヘリコプターモードの最高速度は時速185kmで、モード転換するにはこれに近い速度に落とさなければなりません。時速210kmだったと仮定して、20秒間に進む距離を計算すると約1,167mです。よって、オスプレイが普天間基地の手前5.7km付近でモード転換を行ったことは、物理的に否定できないということになります。ここでは記者の距離感覚が正しかったと、私は判断します。

 操縦していたパイロットを弁護するなら、彼らは単にマニュアル通りにやっただけで、悪気はないのです。基地のこれくらい前でモード転換するのが安全だと教えられているのです。パイロットはマニュアルに従おうとする性質があります。事実、オスプレイのパイロットは、危険だと思いながらもマニュアル通りに操縦し、2010年にアフガニスタンで墜落事故を起こしているのです。問題を軽く見ている日本政府と米政府が取り決めた甘い約束に問題があるのです。地元はこれを軽視することなく、証拠固めを行い、日本政府に突きつけるべきです。

 画像につけられたコメントの無理解ぶりには困惑を覚えるほどです。基地の回りに家を建てた方が悪いという意見は歴史を無視しすぎています。主権が回復し、沖縄が日本に返還すれば、いずれ米軍は沖縄から撤退すると考える方が自然な発想であり、なくなるはずの基地の回りに家を建てても、特に不思議ではありません。それが半世紀以上、放置され、まだ中央から負担を押しつけられている方がおかしいと思うのが、理性的な考え方です。



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