イスラム過激派はシリアの反政府同盟を拒絶

2012.11.20

 BBCによれば、シリアのアレッポのイスラム主義グループは、西欧に支援された反政府同盟を拒絶すると言います。

 インターネットビデオの中で、彼らは共謀計画と呼ぶものを非難し、彼らはシリア国内にイスラム国家を建設する意向だと言いました。EUは月曜日に、新同盟をシリア国民の合法的な代表と認めましたが、完全な承認は与えませんでした。フランスだけは、彼らをシリア人の唯一の代表として支持しました。

 インターネットに投稿されたビデオで、黒いイスラム主義の旗の前に、少なくとも20人の者と共に、長いテーブルの正体不明の演説者が座りました。彼は反政府連合を拒絶するイスラム主義グループ13団体の名前を挙げました。「我々はアレッポの戦闘隊形の代表であり、共謀計画、いわゆる国家同盟を拒否すると宣言します」「我々は緊急にイスラム国を建設することで同意しました」。


 各方面の反応などは省略しました。

 実に興味深い展開になりました。これで反政府同盟とアルカイダなどのイスラム過激派との仕切りが明確につくことになりました。これは西欧が提供するのを拒んできた地対空ミサイルのような効果的な兵器を、反政府同盟に提供しやすくなることを意味します。

 同時に、反政府同盟には新しい敵ができたことになります。敵の敵は味方ですが、イスラム過激派は反アサドで集まってきたのですし、アサド大統領は彼らを味方にすることで、国際社会からついにテロリストのレッテルを貼られることになります。よって、この二者の提携は起こりそうにありません。しかし、シリア軍はイスラム過激派を積極的に攻撃しないようにはなるでしょう。とりあえず、反政府同盟の足を引っ張るために、彼らを置いておくのです。

 もう1つの問題は、イスラム過激派たちは、活動するために必要な支援を得るために、一定の地域に恐怖政治を敷いて、住民に協力を強制する危険性があります。戦士たちの食事を作るのは、これまでは反政府同盟を支持する住民(特に女性)が行ってきたはずですが、反政府同盟から外れるのなら、彼らに住民が協力する筋合いはないということになります。そこで、イスラム過激派は暴力で彼らを脅して、協力させようとすることになります。すると、反政府同盟はこの状況を放置できないので、イスラム過激派を排除する必要が出てきます。つまり、本来、シリア軍に向けたい戦力を、イスラム過激派に積極的に向けていく必要があるわけです。これはシリア革命の足を引っ張ることになります。

 この戦いは、反政府同盟の方が数が圧倒的に多いので、イスラム過激派は掃討されてしまうか、シリアを出ることになるでしょう。

 エジプトやリビアの場合もそうでしたが、イスラム過激派はアラブの春への介入には失敗したのです。これほど広範な地域で、同じ結果が出ていることは、歴史的な大転換なのです。非宗教的国家が中東にできあがるということは、全世界が同じ方向に向けて動き出す、第一歩へとつながっていきます。世界がこうした環境になれば、戦争はさらに起こりにくくなり、好ましい形へと進化するのです。



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