北朝鮮ロケット打ち上げに立ちはだかる低温
朝鮮日報によれば、韓国軍高官は27日、北朝鮮が12月から来年1月の間に長距離ロケットを発射する可能性が高いことを明らかにしました。
韓国政府の当局者は27日「北朝鮮は29日に予定されている韓国の宇宙ロケット『羅老号』打ち上げを見守った後、早ければ来月初めにも長距離弾道ミサイルの発射計画を発表する可能性がある。国際海事機関(IMO)などに『実用衛星』打ち上げの予定日、ルートなどを通報するものとみられる」と語りました。米国の民間衛星関連会社「デジタルグローブ」は26日(現地時間)「西海(黄海)衛星打ち上げ基地(東倉里)で観測された新たなテント、トラックや人、多数の移動式燃料タンクや酸素タンクは、北朝鮮が今後3週間以内に5回目の衛星打ち上げを行おうとしていることを示している」と分析しました。国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は26日、定例の記者会見で「(北朝鮮の長距離ミサイル発射の状況について)現時点では、新たなものは全くない。今まで接してきたのと同じ種類のニュースや報道があるだけ」と語りました。
記事は一部を省略しました。
韓国では4月のロケット発射を体験したこと、自国産のロケットの打ち上げを控えていることもあり、とりわけ関心が高いようです。しかし、問題は本当に打ち上げの可能性があるかです。先に述べたように、12月の東倉里はロケットの打ち上げには適していません。
weather-forecast.comを使って、東倉里に緯度が近いながらも日本海側にある咸興市(ハムフンシ)と東倉里の北西55kmにある新義州市(シニジュシ)の天候を比べてみました。
10日後、12月7日の気温の予想を見ると、風速はともかく、どちらも気温が氷点下であることが分かります。(咸興市・新義州市)
咸興市 |
最高気温(℃) |
-7 |
-7 |
-9 |
最低気温(℃) |
-7 |
-14 |
-14 |
風速(m/s) |
4.16 |
4.16 |
4.16 |
新義州市 |
最高気温(℃) |
-10 |
-10 |
-11 |
最低気温(℃) |
-10 |
-11 |
-11 |
風速(m/s) |
8.3 |
8.3 |
5.5 |
西海ロケット発射施設がある東倉里の気候はこの両市の中間にあると見て差し支えないでしょう。気温は12月中旬にはさらに下がります。日本のH-IIロケットの打ち上げ制約条件にあるように、(制約条件はこちら)。「機体移動開始後は降氷がないこと」という制約が、東倉里で起こりやすくなります。韓国の羅老(らろう)宇宙センターが、今日10℃程度の気温なのに比べると、今日の東倉里は気温が氷点下に下がっているはずです。ここで今日予定されていたロケット打ち上げは中止されました。国際機関に通告した打ち上げ期間は12月5日までで、この日までに打ち上げられないなら、無理に打ち上げは行わないとの方針が発表されています。日本の種子島宇宙センターなら1〜2月でも気温は常にプラスで、打ち上げが行われます。まして、ずっと北にある北朝鮮で打ち上げができるとは思えません。もっとも、北朝鮮が、形ばかり打ち上げを行い、自国民に成功したと宣伝することだけを考えているのなら、やるかも知れないという気はします。
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