反政府派がダマスカス空港へ攻勢
シリアの反政府派がついに首都でも大規模な攻撃を始め、政府軍は反撃を行っているようです。
BBCが、ここ最近のシリア政府派の成功について記事を報じました。記事の多くは、すでにここで紹介した戦果をまとめていますが、それに付随するコメントは興味深いものです。
どれだけの基地を反政府派が制圧したかは不明です。空襲や地上戦の危険を恐れたため、反政府派はほとんどそれらを維持しようとしませんでした。アナリストはかつて、反政府派の戦略を「ヒットエンドラン」と呼びました。しかし今、反政府派戦士は、数週間続く、調整された攻撃に引き続いて獲得した主要な陸空軍の基地を占領しようとしたり、政府軍が奪還することを防ごうとしているようです。そうした動きは、政府軍に軍用機や重装甲車を配置するのを難しくするため、国境地帯の反政府派の支配を固めるのを助けるとアナリストは言います。ベイルートのアメリカン大学(the American University)の軍事アナリスト、エリアス・ハンナ(Elias Hanna)は、この勝利を「戦略的なシフトにつながるかも知れない戦術的な転換点」と言いました。
BBCによれば、シリアの首都、ダマスカスにある空港は閉鎖され、この地域で反政府軍との激しい戦闘が報告される中、飛行はキャンセルされました。
シリア政府は首都東部の反政府派が支配する地域に対して、前例のない攻勢をはじめているようだと、BBCの記者は報告します。衝突はインターネットと電話のシステムが途絶した後で起こりました。シリア政府は大きな作戦の間はインターネットへのアクセスを止めてきました。しかし、全国的な普通は前例がないと言います。しかし、シリアの情報大臣は、テロリストがインターネットを途絶させ、エンジニアが復旧のために働いていると言いました。
エミレーツ航空とエジプト航空はダマスカスへの飛行をキャンセルしました。政府筋は150人の国連平和維持軍のスタッフを乗せた飛行機は木曜日の夕方にダマスカス空港を離陸したと言いました。交替チームはすでにこの日の朝早くに到着していたと、政府筋は言いました。
国営テレビは木曜日の夜、空港は武力介入の後で平静になったと報じました。しかし、記者は幹線道路は閉鎖され、さらに戦闘の報告があると言います。反政府軍が滑走路へ迫撃砲を撃った後で、政府軍の増援部隊がこの地域へ派遣されたと考えられていると、ベイルートにいるポール・ウッド記者(Paul Wood)は報告します。自由シリア軍筋は、空港に対する攻撃は長期間計画が練られ、反政府派戦士は過去数日間にわっって、にじり寄ったと言いました。攻撃の狙いは空港を占領することで、ヒットエンドラン攻撃だけではなかったと情報筋は言いました。
攻撃を行った反政府派はすべて、首都東部の東ゴウタ(Eastern Ghouta)の出身者で、ここ数週間に重火器を含んだ政府軍の兵器で十分に装備していたと情報筋は言いました。
記者は、まだ空港内のターミナルやホテルから出られない乗客の報告もあったと言います。反政府派は空港の中にいるようには見えません。
通信網は途絶していますが、BBCの記者はダマスカス中心部の住民の話を聞くことができました。住民は反政府派が支配する地域に対する、最大の陸軍攻勢を見聞きしたと言いました。攻勢は、街の中心の南東の空港へ続く、街の東部で続いているようです。
通常、政府軍の空爆の目標となっている空港への主要道路は反政府派の領域を通ります。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights: SOHR)」も大規模な政府軍の攻勢を報告し、衝突は反政府派の拠点タダムン(Tadamun)に近いバビラ(Babbila・kmzファイルはこちら)の郊外で最も激しいと言います。情報は独自に確認できていませんが、衝突はすべて道路に沿っていると言いました。
国営テレビは、政府軍は多くがドーマー(Duma・kmzファイルはこちら)とダラヤ(Daraya・kmzファイルはこちら)の郊外でアルカイダ分子と戦っていると言いました。ゴラン高原に派遣された国連平和維持軍のオーストリア兵2人が、空港につながる道路上で攻撃を受けて軽傷を負いました。駐ウィーンのシリア大使は何が起きたかを説明するために外務省に呼び出されたと、オーストリア当局は公式声明で言いました。「シリアは(国連)兵士に対して責任があり、確実に国際的な負託を満たさなければなりません」と声明は言いました。
まず、アナリストのたちの見方ですが、これは反政府派が計画的に戦術転換をしたのではないと考えられます。つまり、政府軍が反政府派が奪取した地域へ空爆や地上戦をしかけることが少なくなってきたということだと考えるべきです。そこで、反政府派は占領した場所を維持することにしたのでしょう。成り行きとはいえ、これは反政府派にとって、大きな前進です。
空港への攻撃は時期尚早で、撃退されたようですが、それでも大きな前進だったと言えます。空港閉鎖というニュースは世界に大きなインパクトを与えます。場所はまだダマスカス南東部ではありますが、この出来事で、首都の東側は反政府派のものだという認識が一気に高まります。
シリア政府はドーマーとダヤラでの戦闘を強調しているようですが、ドーマーはアレッポなどの北部へ通じる幹線道路に近い、ダマスカス郊外の街です。ダラヤはダマスカスの軍用空港の東側にあり、まさにシリア政府の生命線です。ここで敵を食い止めていると国民に告知をしたのは、逆に、政府側の劣勢ぶりを強調します。もうそこまで反政府派が迫っていると受け取れるからです。
あるいは、状況は報道から窺い知れるよりも、相当に悪いのかも知れません。私はかなりの程度、それが真実ではないかと疑っていますう。シリア軍の弾薬や燃料が底をつきかけている可能性すら考えます。
それから、自国軍兵士が負傷した場合のオーストリア政府の対応は妥当です。このように、自国民が外国で怪我をさせられた場合、第一に責任があるのは、その国の政府なのです。外国で日本人が誘拐されたとか、殺されたといった場合、その国の政府に過失がある場合は、抗議をして差し支えないのです。日本人はこのことすら知らず、被害者を批判することがあるのは大きな欠点です。それこそ、国益を損ないかねない問題なのです。
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