反政府派がシリア東部の油田を占領

2012.11.5


 BBCによれば、シリアの反政府派は東部デリゾール州(Deir Ezzor province)の油田を、数日間包囲した後で占領しました。

 人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights: SOHR」は、アル・ワード油田(al-Ward fell・kmzファイルはこちら)が激戦の後に陥落したと言いました。この報告は独自に確認されていません。SOHRは反政府派が油田を占領したのは初めてだと言いました。このニュースは、カタールで多数の反政府派グループが会合した後に報じられました。SOHRの理事、ラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)は「ジャファー・テイヤー旅団(the Jaafar Tayyar Brigade)の反政府派は、マヤディン(Mayadin・kmzファイルはこちら)の東にあるアル・ワード油田を、数日間続いた包囲の後で占領しました」と言いました。SOHRは住民と活動家が、反政府派がマヤディンを攻撃した軍用機を撃墜したのを目撃したとも言いました。

 SOHRはシリア内紛の事件と犠牲者を記録し、報告する傑出した組織の一つです。このグループは報告は独自に確認できませんが、公平であると言います。油田を警備していた兵士約40人が殺されるか、負傷するか、捕虜になりました。この地域の活動家、オマール・アブ・ライラ(Omar Abu Leila)は、油田は占領される直前まで稼働していたと言いました。

 アル・ワード油田は、シリアのエネルギー埋蔵量をもつデリゾール州で最も重要な油田の一つです。シリアの産出量の95%を買う欧州連合が昨年制裁を科すまで、石油はシリア政府の主要な国際通貨でした。石油輸出量は2011年の第4四半期の13,500トンから、2012年の第1四半期に7,500トンへ落ち込みました。


 他にもダマスカス市内での爆弾事件や、シリア全土での衝突、カタールでの反政府派の会合についても書かれていますが、油田の戦闘の部分だけを紹介しました。

 アル・ワード油田の位置は、マヤディンの東という記述からの推定です。他に油井を持つ施設はありません。

 SOHRの報告は信頼してよいでしょう。この油田は落ちたと思います。すると、ただでさえ減っていた石油からの収入がなくなり、国民に配布すらできないことになります。反政府派が直ちに石油を利用できる状態になるかが問題です。見ると、油田から北西方向に真っ直ぐ道路が出ていて、25km先に製油施設らしい場所があります。ここも反政府派が確保しているのなら、油田の石油を反政府派が活用できることになります。

 シリアの油田の位置を見ると、アル・ワード油田から北東にかけて広がっていることが分かります(油田の地図はこちら)。それらはパイプラインでホムスにつながっています。ホムスの西部には、幹線道路沿いに巨大な石油施設があります。つまり、油田はダマスカスから遠く、ホムスに連結されているということであり、反政府派の支配地域に近いということになります。これらを奪取することは、現在の状況を考えると、不可能ではありません。次々と油田が陥落すれば、シリア政府はいよいよ困窮します。だから、ホムスはこの内乱の天王山となるべき街なのです。

 最近、次々と反政府派に有利な戦況が伝えられています。シリア軍が限界に達しつつある可能性があります。我々は耳を澄まして、状況を把握しなければなりません。



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