アサド政権が信頼するパイロットは3割程度

2012.11.7


 military.comによれば、シリアで最初の宇宙飛行士でもあった元空軍将官が火曜日、アサド政権がパイロットを信頼できないため、シリア軍戦闘機パイロットの約3分の1しか、毎日の反政府派拠点への空爆を行っていないと言いました。

 8月に政権を離反して、反政府派の主要グループであるシリア国家評議会へ参加したモハメッド・ファレス少将(Maj. Gen. Mohammed Fares)は、政権の戦闘機は老朽化して、スペアパーツが不足していますが、アサド大統領は依然として数百機を自由に使えると言いました。「彼(アサド)はまだ空爆を続けています」と、61歳のファレスは、カタールの首都、ドーハで開かれた国家評議会の会合で言いました。

 シリアの内乱はここ数ヶ月行き詰まっています。反政府派は激戦で、特に北部の農村地帯の領域を制圧しました。地上軍が薄く引き延ばされた政権は反政府戦士を撃退するために空襲で反撃しました。政府パイロットは民間地域も無作為に見える攻撃で爆撃し、地域全体を荒廃させて、人びとを恐れさせました。

 シリアの反政府派は、政権を打倒するために対空ミサイルを国際社会に要請しましたが、支援国はそうした兵器が反政府派についているイスラム武装勢力の手に渡ることを心配しています。

 ここ数ヶ月で、政権は樽に数百キログラムの爆薬を詰めた間に合わせの爆弾を使うことを増やしています。ファレス少将は、精度の低い樽爆弾は大衆を怖がらせることを目的としていますが、政権が通常の爆薬を使い果たしたためでもあると言います。

 彼は、必要な兵器が与えられれば、アサドの空軍を打ち破れるという反政府派の主張を繰り返しました。彼はシリアのパイロットの約30%、100~120人が空襲に関与していると言いました。政権は政権は他の者の忠誠心を試したいと考えておらず、パイロットが離反することを防ぐ方を望んでいます。パイロットとその家族は普通、軍の居住地に住んでおり、航空機で逃げようと考えないという利点を政権に与えています。

 ファレス少将の声明は確認できませんでしたが、シンクタンク「Stratfor」のアナリスト、オマル・ラムラニ(Omar Lamrani)は、アサド政権が信用できないパイロットを使わないのはありそうなことだと言いました、ラムラニも、政権は固定翼機400機とヘリコプター200機を持っていると考えられていますが、多くは老朽化して、手入れが行き届いていません。樽爆弾を使うのは、通常爆弾の備蓄が不足しているか、政権が一部の兵器を紛争の最後のときのために保持していることを示します。

 ファレス少将はアレッポに逃げた後で、家族と共にトルコへ越境しました。ファレスは1985~1987年、ソ連で宇宙飛行士の訓練を受け、シリアに戻る前に、ミール宇宙ステーションで8日間過ごしました。彼は反乱の初期の支持者で、反政府派に情報を流しましたが、情報当局に監視されたために、離反するのが難しかったと言いました。元宇宙飛行士は国家評議会の拡張された総会の新メンバーとして会合に参加しました。

 長期間の亡命者と学者で構成されるシリア国家評議会は、1年前に結成され、アサドを打倒する戦いにタッチしていないという批判を打ち負かすために、その基盤を拡げようとしています。月曜日に、評議会は、シリアの活動家やごく最近脱出した人を含めた約400人で総会を約2倍にする投票を行いました。

 水曜日に、グループは新しい指導者を選んでいます。しかし、内部の改革は国家評議会の影響力を弱める新しい反政府派指導者を作る試みを防ぐには十分ではない場合があります。アメリカは国家評議会が結束力と代表的な指導者を創れない国家評議会の怠慢に失望を強め、先週、ヒラリー・ロダム・クリントン国務長官(Secretary of State Hillary Rodham Clinton)は、グループを厳しく批判しました。

 反政府派のリアド・サイフ(Riad Seif)は、シリア全土の代表50人の指導者チームと国家評議会の議席は15席のみとする案を提案しています。サイフは火曜日に、評議会はリーダーシップを提供せず、政権と戦う者たちへの支援をしなかったから失敗したと言いました。サイフの計画は木曜日に議論されますが、評議会は脇に置かれることを警戒して反対していました。対案として、評議会は、木曜日に代表者は指導者の座を議論するのではなく、暫定政府を設立すべきだと言いました。座を退く評議会の代表、アブデルバセット・シイーダ(Abdelbaset Sieda)は火曜日に、「評議会に対するどんな行動も、故意であってもなくても、政権の延命となるでしょう」と言いました。彼はサイフの計画に特に触れませんでしたが、「我々はシリアの反政府派の基本要素として、評議会を維持することの必要性を強調します」と言いました。


 記事は要約しています。

 ファレス少将の亡命は8月に紹介していました(過去の記事はこちら)。その人物が公に反政府派として活動していることが確認できたわけです。

  彼が言うことは、もちろん、反政府派への支援を増やすための嘘である可能性もありますが、私は信憑性が高いと感じます。

 使えるパイロットが全体の3割、100〜120人という具体的な数字は、反政府派にとって攻略できない目標ではありません。この数字が分かったことは大きいですね。地道に政府軍から奪ったり、少数ながら支援国から来ているらしい対空ミサイルや対空機銃で撃ち落としていくしかありません。

 シリア空軍が樽に爆発部を詰めて落としていることは、他の記事でも書かれています。機体の老朽化、未整備という話も、軍隊にはよくある話です。

 全土に引き延ばされた陸軍と機能不全の空軍では、効果的な掃討作戦は行えません。最近の進展も考えると、アサド政権はいずれ限界点を超え、崩壊するのは間違いがありません。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.