銀河3号打ち上げ延期の理由は何か?
北朝鮮の銀河3号打ち上げ延期について、報じられる情報は相互に矛盾しています。
朝鮮日報の記事「ミサイル:新たな3段目搬入、22日以前に発射か」によると、「8日午後、3段目ロケットが東倉里の基地に運び込まれる様子が偵察衛星により撮影された」ということです。また、東倉里発射場がある平安北道鉄山郡の今月8日朝の最低気温はマイナス17.5度だったとも報じています。さらに、国立研究所のロケット専門家は「長距離弾道ミサイルは気温がマイナス50度の成層圏を通過するため、低温や圧力には耐えられるように設計されている」と述べました。韓国の宇宙ロケット「羅老号」の打ち上げの条件(気温がマイナス10度からプラス35度)は作業条件などを考慮して決められたものだとも書いています。
一方で、FNNが北朝鮮の朝鮮中央通信筋として、「ロケットの1段目のエンジン制御システムに技術的欠陥が発見された」「打ち上げ期間を29日まで延長する」と発表したと報じました。IMO(国際海事機関)には、日本時間10日夜、北朝鮮大使館から「期間を延長する」との連絡が入りました。韓国の国防省は「発射を予定しているミサイルの1段目は、ノドンミサイル4つを束ねているもので、その噴射装置をコントロールするシステムに問題があったのではないか」とコメントしました。
IMOへの通告で、北朝鮮が本気で打ち上げたいらしいことが分かりました。示威目的の偽装打ち上げではなく、本当に打ち上げたいように見えます。
しかし、3段目をさらに搬入したのに、問題が起きたのは1段機体だったということで、その意味は今のところ不明です。韓国国防省が言うとおり、銀河3号の1段機体はノドンミサイルを4基組み合わせたクラスターエンジンです。これを連動して動かすジンバルという装置があるのですが、そこに問題があるというわけです。
当サイトに協力戴いているロケットの専門家、チャールズ・ビック氏は別の理由を考えています。酸化剤の酸化窒素(正確には四酸化二窒素)は華氏11〜12度(摂氏-11.1〜-11.8度)で凍ります。8日朝の低温で酸化剤が凍りついた可能性は十分にあります。
その際に、機材を壊さなかったかも、私は気になります。酸化剤が溶ければ打ち上げられるようになるのか、そうでないのかという問題です。彼らは燃料注入を途中で止め、回復のための作業をしているようですから、それはないと考えてよいかも知れません。
3段機体を新たに取り寄せたのは、当然、3段機体にも問題が起きたと考えるべきなのでしょう。1段機体は取り寄せず、現場で何とかするつもりなのかも知れません。あるいは偵察衛星で撮影できなかっただけで、すでに搬入されている可能性もあります。3段機体だけが問題なら、期間を延長しなくても打ち上げられるでしょうから、全部撤去して、最初からやり直しになるのかも知れません。その場合、ロケットの解体が始まっても、それは打ち上げ中止を意味しないことになります。
一部に7〜9日まで東倉里に大雪が降ったという情報があるようですが、確認したところ、大きな雲が長時間上空に滞在したことはありませんでした。現地に雪は降っていますが、大雪ではありません。wunderground.comで、雲の写真を確認できます(画像はこちら)。
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