38north.orgのレポート
38north.orgが12日に公表した、北朝鮮の銀河3号に関するレポートを読んでみました。(レポートはこちら)
原文のタイトルは「A NorthKoreaTech/38 North exclusive Countdown to the Rocket Launch」で、著者はニック・ハンセン(Nick Hansen)、マイケル・キー(Michelle Kae)です。これは銀河3号の打ち上げ前に書かれたレポートで、冒頭に打ち上げ後に追記が追加されました。その後に、本文が始まっています。
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追記
北朝鮮が銀河ロケットを打ち上げたという今夜の報道記事がアメリカ、日本、韓国の政府筋により確認されました。これを書いている時点で、未確認の報道にロケットが南に向かう途中で沖縄上空を飛んだことを示す記事がありますが、打ち上げが成功したかどうかは不明です。我々のアナリストは、12月10日に発射台の上にロケット全体があり、その他のすべての施設はテストのための準備を終えていたとしていました。しかし、我々は銀河の1段機体は修理のために組立工場へ移動させられたと考えました。それは明らかに起こっておらず、理由は不明のままです。明日さらに書きます。
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12月10日に撮影された新しいGeoEyeの衛星写真は、銀河ロケットを打ち上げ台から取り除くことに関連した、北朝鮮の西海人工衛星打ち上げ基地(東倉里)の活動を示します。そのプロセスはおそらく、まだ進行中で、12〜13日早くまでには完了しないでしょう。(38 Northは韓国の報道機関がロケット全体が、12月11日の時点で、修理のために組み立て工場へ移動されたといったのは間違っていると考えています)
この結論は様々な考察に基づいています。第1に、12月8日と10日に撮影された写真が、ミサイルの機体を運んだトレーラーが使う、組立工場と発射台の間の道路の雪の上にタイヤの跡がないことを示しています。第2に、新しい活動の徴候が現れた12月10日よりも前に機体を発射台から組み立て工場へ移動する過程を示す証拠はありません。それが事実なら、北朝鮮の過去の習慣からして、組立工場へ機体を移動する過程は12〜13日以前には完了しそうにありません。
核心となる疑問は北朝鮮人がロケットを修理して、発射台へ戻し、テストを行うのにどれくらいかかるかということです。その活動には、1段ロケットの技術について知られるところと、過去の北朝鮮の行動に基づくと、約9〜10日かかります。そのスケジュールでは、打ち上げは早ければ12月21〜22日に行われ、さらに平壌が打ち上げ期間を12月29日まで延長したので、順応性が与えられました。
天候は依然として重要な考察です。長期予報は不確かですが、打ち上げ施設の気温は摂氏マイナス10度かそれ以下であることを示し……12月21日からは、ロケット自体に悪影響しか及ぼさず、燃料の問題も起こしかねません。(西海施設の燃料貯蔵ビルや燃料パイプはどちらも暖められているようには見えません)
ロケットは発射台から取り除かれたか?
北朝鮮が銀河ロケットのすべての機体を発射台から近くの組立工場に移動したという12月11日の韓国報道機関の記事は不正確です。1段機体のエンジン制御メカニズムの問題を修復には、ロケットを解体して1段機体を修理するか交換する必要がありそうですが、我々の分析はその過程が報じられてよりもゆっくりとしたペースで侵攻していることを示しました。10日に北朝鮮が技術的問題を発表する前に、12月7日と8日の写真は、周りを囲んだ作業用の足場で明確に言うことはできないものの、銀河ロケットが構台の上に積み重ねられたらしいことを示します。しかし、12月10日の最近の衛星写真は、おそらくロケットを発射台から取り除くことに関連している新しい活動を示します。
12月8日の写真には、低レベルの活動があり、最終的打ち上げ準備に向ける前とみられる一時的な静けさを示します。構台の頂上にあるクレーンは両日とも同じ位置で動かないままで、ごく僅かな車両があり、北朝鮮人は発射台で除雪を始めていました(figure 1参照)。組立工場への道は一部だけが片付けられ、彼らが大型車両のためには使わないと考えていたことを示します。
12月10日、ロケットを発射台から取り除くためとみられる新しい活動があります(figure 2参照)。クレーンは前の写真から位置を変え、現在は南向きの角度で、まだロケットを囲んでいる作業用足場がある発射台の軸に沿っています。これは作業が進行中か、始まろうとしていることを示します。小型の保安用車両が雪に覆われた発射台の場所に駐車しています。これらの発射台の4両の車は、以前に12月4日の機体積み上げでもみられました。彼らがいることは、打ち上げが延期されたという12月10日の発表と、機体を取り除く準備に関係しているかも知れません。
作業は進行中か、12月10に始まるところかもしれませんが、ロケットの機体を運ぶのに必要はトレーラーが発射台から修理が行われるはずのミサイル組立工場へ移動させた徴候はありません(figure 3参照)。12月8日と10日に撮影された写真は組立工場と発射台の間の、これらのトレーラーが使うはずの道路にトラックがないことを示します。10日よりも前に撮影された写真が機体を取り外すプロセスがまだ始まらないことを示し、機体を発射台から組立工場へ移動するプロセスは、北朝鮮の過去の習慣からして2〜3日かかることを示しました。我々はこのプロセスは早くても12〜13日よりも前に終わらないと考えます。
その他の準備の完了
写真によると、平壌は12月8日までに、打ち上げのためのその他の準備を完了させたようです。噴射壕近くの発射台北側の下の平地にある2ヶ所の臨時の測定用ビルは、新しい進展です(figure 4参照)。これらの建物は4月の失敗した打ち上げの原因の一つかも知れない1段機体のクラスター化されたエンジン4基の性能を測るための光学測定機を収納していると思われます。
12月8日の時点で、西海計測基地は追跡レーダー、テレメタリー用アンテナ2基、光学測定機と思われるものが完全に活動しているように見えました(figure 5参照)。施設への道路は除雪され、8日には、バスが道路の初端の近くに駐車していたことは、技術者が施設にいることを示しました。
打ち上げを見るためにカメラが据え付けられた観測用ビルは、施設までの道路に車両のタイヤの跡があり、同様に活動しているように見えます。建物の屋根の上で部分的に雪が溶けているのは、建物が暖められていることを示します(figure 6参照)。
VIP用ホテルでは、駐車場の雪が除雪され、両方の建物の屋根で溶けており、これらが暖められていることを示します(figure 7参照)。ロケット組立工場から、これらのホテルへの道路もコンクリートが出るまで綺麗にされ、VIPや外国人の賓客の一部がすでに西海にいるか、到着することになっていることを強く示します。
打ち上げ統制用ビルを囲む黒い舗装された場所は、12月8日の時点で、除雪され、門が開いています。屋根の雪はまだ溶けておらず、フェンスの内側に車はありません(figure 8参照)。
結論
確信はないものの、一つの可能性は、過去数週間にわたる西海試験施設の低温が平壌が計画した長距離ロケット打ち上げを遅らせているかもしれないということです。北朝鮮が言う1段機体のエンジン制御モジュールの問題は、ロケットの部品を動かす潤滑油への悪影響、燃料混合物の硬度や金属の収縮を引き起こしかねない、摂氏マイナス10度かそれ以下の結果かも知れません。もし銀河3号のようなロケットがこうした問題を埋め合わせるように設計されていないなら、これは特に問題です。
ロケットが完全に発射台から取り除かれる最も早い可能性がある期日は12月12〜13日と考えられ、修理か交換を行い、ロケットを発射台の上に再び組み立てるには少なくとも1週間かかります。平壌はそれから打ち上げ準備を再開し、過去の例から見て、完了するためにさらに2〜3日かかるでしょう。従って、銀河ロケットは再び打ち上げ準備をするには、早くて12月21〜22日までは準備を終えられないでしょう。
北朝鮮が発表した期間が技術者たちにいくらかの柔軟性を与え続けるものの、気象条件、特に低気温は、打ち上げの前段階における難しい要因でありつつけるでしょう。来る15日間の気象予報は問題を示しますが、打ち上げ基地の気温は12月21日に問題になり始めるようです(気象/気温の予報はTable 1参照)。ロケットの性能への悪影響に加え、特に、西海施設の燃料貯蔵用ビルや発射台につながるパイプが暖められたり、断熱されているという証拠がないため、低気温はロケットの燃料にも問題を起こしかねません。
夕方の全国ニュースを見たら、工学博士や軍事専門家、ジャーナリストという人たちが色々な意見を披露していました。それらには、銀河3号ではない別のミサイルを発射したとか、エンジンが凍結したので、発射台上で別のエンジンと交換し、再び凍結する前に打ち上げたとか、別の場所から発射したなどの説がありました。
映像が公開されていないので、銀河3号ではないロケットを打ち上げることは可能でしょうが、北朝鮮がそんなロケットを持っているかが考えにくいところです。発射台の近くに新しい測定施設を設けたのは、4月の改良型を打ち上げたためかも知れません。
また、エンジンを発射台の上で交換するのも、技術的に無理そうです。重たいロケットの下に技術者が入って、重たいエンジン部品を取り付けるのは、極めて困難です。
少なくとも、FNNのカメラが中国遼寧省側から午前9時49分ごろに北朝鮮の東倉里からミサイルと見られる光を撮影していて、別の場所から打ち上げた可能性はありません。また、イージス艦のSPYレーダーなら、そういう工作はすぐに探知するはずです。
要するに、これまでの解析や報道が間違っていたのであり、北朝鮮がトリックを用いたのではないと、私は考えます。どこかのスパイ映画で見たようなトリックがあったと考えるのは間違いです。
ANNの大野公二記者の報告として「この打ち上げ直前にはその打ち上げがうまくいっているのか、船舶を出したり航空機を飛ばしたり、さらにその電波を発して実際にテストをしますが、そういった打ち上げ前の兆候が一切、確認されていませんでした。」ということです。人工衛星を飛ばすのに、観測をしないわけはなく、現に、観測施設は打ち上げ施設内にある訳ですから、打ち上げの直前に電波の送信を開始したとしか思えません。しかし、観測船は軌道の追跡に必要なので、是非ともやるべきですが、この辺にも何か理由がありそうです。
1段機体の修理、交換は夜間の内に突貫作業でやったのかも知れません。3段機体の交換だけが衛星写真で確認された可能性があります。また、1段機体の移動が本当に行われたのかについては、少々疑問も感じています。1段機体を外すには、2段目と3段目を外してから、1段機体をトレーラーに乗せる必要があります。当然、かなりの時間がかかるはずです。レポートにも1段機体が移動されたという理由がはっきり書かれていません。修理する以上は組立工場に戻す必要があるという発想なのかも知れませんが、北朝鮮なら発射台の横で直すような強攻策もとりかねません。
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