北朝鮮の自称「実用衛星」の嘘
昨日コメントしていませんでした、今回、北朝鮮の声明の中には、これまでにないものが含まれていました。それは人工衛星を「実用衛星」だと述べたことです。
言うまでもなく、北朝鮮の人工衛星は実用ベルにはありません。4月の打ち上げ前に北朝鮮が公開した人工衛星は、専門家から性能に疑問が投げかけられました。その後、急に技術が進歩して、実用レベルになるはずがありません。北朝鮮としては、この打ち上げで、ロケット技術が実用レベルに達したと宣伝したいのでしょう。それで、衛星打ち上げの仕事がもらえるとは、到底、信じられませんが。
4月以降、テポドン2号のエンジンテストが行われた形跡があることが、先日、確認されましたが、北朝鮮としては、エンジンを直せばロケットを打ち上げられると踏んでいるようです。もちろん、人工衛星では見えない部分での改良も当然行われていることでしょう。
4月の打ち上げ失敗は、ロケットが最大の負荷を受ける「Max-Q」の少し後から観測されています。何かの問題があって、1段機体の燃焼中に、最も機体に圧力がかかった直後に機体が分解をはじめたということは、機体の強度とか、姿勢制御の問題、エンジンの燃焼に何かの問題があったことを示唆します。一番考えられるのは振動による空中分解です。クラスターエンジンが均一に燃焼せず、予想以上の振動が機体を分解させたのかも知れません。それでエンジンテストを行ったと考えると、一応の説明はつきます。それにしても、安定したエンジンを作るのは、最も難しい作業であることを考えると、半年後の再打ち上げは時期尚早です。
さらに、何度も指摘しているように、気温氷点下でのロケット打ち上げは困難なのです。マイナス10度にもなると、すでに不可能の領域です。ところが、10日には現地の気温がそれと同じくらいまで下がります。さらに付近の上空に氷を含んだ雲があっても、打ち上げはしないのが普通です。
北朝鮮が、これらの問題を克服して打ち上げを成功させ、人工衛星を軌道に投入することに成功するのなら、これは本当に脅威的な成果ということになります。しかし、そうなる可能性はほとんどないでしょう。
日本側の対応を見ると、防衛省はまた「破壊措置命令」を出しました。打ち上げは行えないか、失敗する可能性が高いので、当然、迎撃する機会は極めて小さいでしょう。どうせ、撃っても届かない軌道ですし、壊れて落ちてきたロケットの残骸に当てられるはずもありません。今回は前回の失敗を繰り返さないように、迎撃用として沖縄付近に1隻、早期探知用として、そのずっと北に1隻のイージス艦を配備すべきです。非現実的な対応とはいえ、一応、理に適った配備をして欲しいものです。そして、テポドン2号の軌道データをしっかりと収集することです。前回のように、日本海側にイージス艦を配備するべきではありません。当然、軌道から大幅に外れた位置にある東京都内に迎撃ミサイルPAC-3を配備するのも、意味がないので、止めるべきです。
余談ながら、下手すると、打ち上げは衆院選の日程とぶつかる恐れもありますね。
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