シリアが化学兵器を数カ所に集中か

2012.12.24


 BBCによれば、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣(Sergei Lavrov)は、シリアが反政府派が化学兵器を手に入れないように、それを堅固にしていると言いました。

 欧州連合とロシアのサミットから戻る機上で、ラブロフ大臣は記者に「我々が得た情報では、アメリカとヨーロッパの情報機関のデータと同じく、(シリア)政府は(化学兵器の貯蔵物を)確保するためにあらゆることをしています」「全土に分散していた過去と違い、シリア政府は貯蔵物を1、2ヶ所の施設に集中しています」。彼は武装勢力がそれらを確保すれば、シリアの化学兵器は最大の脅威になると言いました。

 米下院情報委員会のマイク・ロジャース議長(Mike Rogers)は、即座に兵器を確保するための地域的な計画が必要だと言いました。「失敗すれば、我々はこの地域で非常に大きな不安定な事件をみることになります」。オバマ大統領はアサド大統領に、化学兵器がシリア国民に向けられるのは受け入れがたく、重大な結果に直面することになると警告しました。アメリカはこれが軍事介入を誘発するレッドラインであると言いました。

 ラブロフ大臣は西欧の権力は介入したがっていないと言いました。「私には、外部介入を許可するのを防ぎ続けるために、彼らがロシアと中国に嘆願しているという感覚があります。そういう決断が下されれば、彼らは行動しなければならず、誰にもそうする準備はできていません」。

 ラブロフ大臣は、どちらの側も内戦に勝利できないし、アサド大統領が退陣しそうにないと言いました。「誰が何と言おうと。それが中国やロシアだろうと、アサドはどこにも行きません」。彼はいくつかの地域的な体制がモスクワにアサド大統領が出国するのを仲介するよう要請したと言いました。ラブロフ大臣は彼らに言いました。「なぜ我々がそれをしなければなりませんか?。あなたに計画があるのなら、あなたのところに連れて行きなさい」。

 BBCによれば、ハマ州の中心部のハルファヤ(Halfaya・kmzファイルはこちら)で、シリア政府軍がパン屋を攻撃し、数十人が死亡しました。

 人権活動家は90人の死者を確認し、内戦で最大の致命的空爆となりました。活動家の一人、サメル・アル・ハマウィ(Samer al-Hamawi)は「本当に何人が死んだかは知る方法がありません。私がそこに着いた時、私は地面のいたるところに死体が積み重なっているのを見ました」「我々はそこの3日間小麦粉を受け取っておらず、誰もが今日はパン屋に行っていました。彼らの多くは女性と子供でした。死者の中に私の親類がいるかもまだ分かっていません」。


 記事は一部を紹介しました。

 化学兵器の貯蔵所が数カ所になった点は気になります。その近くに、大規模な外国人イスラム戦士の部隊があれば、彼らがそこを占拠するかも知れません。しかし、その位置さえ分かっていれば、トルコ軍などのNATO軍が空挺作戦を行って、一気に確保することができます。その点で、これは長短両方の性質があると言えます。貯蔵施設の近くにいるのが自由シリア軍である場合は問題はありません。

 シリア軍が化学兵器を集中したのは、多くの地域を反政府派に奪取され、施設の安全が確保できなくなったためです。多分、ダマスカス周辺の基地施設でしょう。ダマスカス西方にある大きな軍基地のどれかかも知れません。先日、シリア軍が化学兵器を動かしているという報道が流れたのは、このことかも知れません。

 ラブロフ外務大臣の考えと違い、私は上記のように、NATO軍が行動を起こす可能性は十分にあると思っています。それこそが重大な政治的目的であるからです。

 意外だったのは、ロシアがアサド大統領を自国へ亡命させる気がないということです。カダフィ大佐と同じく、アサドは自国内で死ぬことになるのかも知れません。

 ハルファヤでの空爆は、人道的問題であると同様に、先日、反政府派が解放したと宣言した場所への攻撃であることに注目すべきです(関連記事はこちら)。そして、まだここで人が集まっている場所を政府軍が観測できる状況にある点も、戦況を判断する上で重要です。ハマ市がまだ政府軍の支配下にあり、ここからハルファヤを偵察できるのかも知れません。ハマ市が陥落し、ホムス市も陥落すると、もはや、末期的状況です。この辺りで大きな動きが起きる可能性を予測します。


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