ワシントンポスト紙の記事から、シリアのアレッポの戦況を考えるのに使える部分を紹介します。
アレッポで反政府派が支配している地域では、惨状は明らかです。7月に自由シリア軍の戦闘員は、すばやい勝利を期待して、政府軍を郊外の田園地帯から追い出した後で街へ殺到しました。しかし、彼らの攻勢は計画がまずい上に時期が早すぎ、民間人を挟んで撃ち合う形の戦線を作りました。
政府軍はダウンタウン地域と西側の富裕層が地域を支配し、反政府派は伝統的により貧困の北部、東部、南部を保持しています。古代の砦と市場で有名な世界遺産は戦場です。
何ヶ月も断続的に通じていた電気は、2週間と少し前に反政府派が主要な発電所を確保する攻勢を始めてから遮断されました。
アレッポの革命評議会が地域政府の機能を務めるために結成されましたが、16時間も立っている人たちに与えるパンが欠乏していることを解決できませんでした。行列は短くなり、パンを買うために1時間以上待つことはなくなりました。
工場と企業は活動を停止し、仕事はほとんどありません。新鮮な肉と農産物は手に入りますが、価格は何ヶ月も仕事がない人たちには高すぎます。平たくて薄いピタ(パンのこと)は戦前の10倍もします。
公衆衛生が崩壊したため、飢えで免疫系が弱った人たちに疾患が広がっています。結核が一部の地域で広がり、リーシュマニア症が何百も発生しています。この病気は収集されないゴミで増えたチョウバエによって感染する皮膚病です。
放棄された商店街の小さな診療所には、1日に150人の患者が集まります。多くの患者は戦争による怪我ではなく、肝臓炎、呼吸感染症、疥癬を含む感染症だと医師は言います。さらに、2〜3人がパンの行列に並んでいて飢えで倒れて運ばれてきます。「これは大きな問題になりつつあります」「すでに問題となっていて、日に日に増えています。私は人びとが死に始めていると予測します」。
やっと、アレッポのどこが支配地域なのかが分かってきました。日本人記者の山本美香さんが銃撃された場所は、両者の中間地点だったということになります。
北部、東部、南部を反政府派が支配しているのは悪い感じではありません。多分、鉄道線路と緑地帯の付近で領域を分け合っているのでしょう。
トルコのレンハイルからトルコ軍が進撃すれば、西部にいる政府軍は抑えられるでしょう。しかし、それは化学兵器の使用をシリア軍に決断させる危険があります。トルコ軍を使うにしても、タイミングが重要です。
最近、アレッポ西方にある第111連隊(kmzファイルはこちら)と第46連隊(kmzファイルはこちら)の基地を反政府派が占領しています。ここを拠点にして、西部を攻撃する準備をするという選択肢もあります。
アレッポに反政府派が取りかかった時も、自由シリア軍の中から早すぎるという声が出ましたが、そういう見方が固まっているようです。
戦いが長引いているために、飢餓が蔓延し、公衆衛生の崩壊で感染症が広がるという悪循環が生まれています。トルコ経由で自由シリア軍に必要な物資を運ばせることも行われているとは思うのですが、まだ足りないのかも知れません。早く戦いを終わらせるしか解決方法はないでしょう。