シリアのサリンは爆弾に搭載されたか?

2012.12.7


 日本では、NBCテレビが報じたこととして、シリア政府軍がサリンの原料の化学物質を爆弾に搭載したと報じられていますが、海外の報道では、サリンと特定して報じていないようです。

 BBCは今日まで、この件については報じていません。ワシントンポスト紙は4日付の記事で、シリア軍が化学物質を動かした形跡について報じましたが、爆弾に搭載したとは報じていません。NBCテレビが報じたのは、政府関係者が推測を口にした可能性もありそうです。

 ワシントンポスト紙から、事実関係を簡単に抜粋します。

 バラク・オバマ大統領(President Barack Obama)が月曜日に国防大学での演説で、アサド大統領に化学兵器を使わないように警告しました。

 ヒラリー・クリントン国務長官(Secretary of State Hillary Rodham Clinton)はプラハでのチェコ当局との会談で、シリアが化学兵器を使ったら行動を起こすと言いました。

 匿名の米当局者と退役した当局者は、空爆から化学貯蔵物を確保するために地域派遣軍が限定的な襲撃を行うまでの範囲で検討中だと言いました。

 オバマ政権はシリアに米軍を派遣することを避けていますが、特殊作戦訓練チームが隣国ヨルダンにいて、ヨルダン軍と他の地域から来た兵士に対処法を教えています。

 米情報当局が、シリア政府が最近、シリアの化学兵器基地数カ所の中で化学兵器の構成物を移動した形跡があります。この活動は、様々な基地へ構成物を移動させるというよりも、施設の中での移動に関係していました。当局者は、かつてなかった活動であり、さらに調査が必要としています。

 別の米政府高官は、これを化学兵器の潜在的使用のための準備の徴候だと言いました。アメリカはまだアサド政権がそれを使うつもりかは分かっていませんが、匿名の当局者は、アサド政権は極めて強いプレッシャーの中にいるので、強く懸念していると言いました。

 米情報当局は、過去6ヶ月以内に、シリアのクッズフォースとアサド政権のメンバーが、サリンガスをホムス(Homs)で反政府派と民間人に使うことを話し合う通信を傍受しました。この報告は他の情報部局と合致せず、別の情報当局者はイランもシリアに化学兵器を使って欲しくないと思っていると言いました。

 ある匿名の米当局者は、アメリカが何らかの行動を起こすきっかけは、化学兵器を使うか、使うために移動するか、ヒズボラのようなテロ組織に渡そうとするかだと良い撒いた。アメリカは最近捉えた動きがこれらのどれなのかを特定しようとしています。

 シリアは約75ヶ所の化学兵器貯蔵所を持っていますが、アメリカはすべてを追跡しているかどうかは確実でなく、一部の貯蔵物がすでに動かされたことを懸念しています。シリアは移動可能な数百発の地対地弾道ミサイルと、さらにドラム缶、砲弾のいずれにも貯蔵した数トンの化学物質を持っています。

 シリアはマスタード剤、サリン神経ガス、数種類のVX剤を持ってると、ランド社のジェームズ・クィンリバン(James Quinlivan)は言います。

 シリアの科学基地では以前に活動が探知されています。 レオン・パネッタ国防長官(Defense Secretary Leon Panetta)は9月末に、シリア政府が化学兵器の一部をそれらを保護するために移動したという情報があると言いました。アメリカは多くの基地は安全なままであると考えていると彼は言いました。


 アメリカの諜報手段はもっぱら、偵察衛星や無人偵察機なのに、なぜサリンと化学物質名を特定できたのかが、私の疑問の発端です。「写真に写ったドラム缶にサリンと書いてあったから」と言われても、それはありそうにない話です。

 偵察情報では、化学兵器基地にいつもよりも多い車両や人がいることしか分からないはずです。しかも、それを爆撃機に積み込んでいる作業が上空から確認できるとは思えません。爆弾を積み込むのなら、どの軍隊も格納庫の中でやるでしょう。ジェームズ・ボンドが潜入しない限り、そこまでのことは分からないはずです。シリア軍の中に内通者がいた可能性もありますが、それなら、もっと強い警告が米政府から出されることになりそうです。

 今日の午前9時頃に見たCNNニュースも事実関係を確認できていないと言いました。

 中身はともかく、化学兵器に関して動きが出てきたことは、反政府軍の構成が一層激しくなり、政府軍が危機を感じている証拠です。そして、それが使用されるなら、国際社会が介入するきっかけになる可能性が非常に高くなります。すでにトルコ国境にはペイトリオットミサイルが配備されました。これによって、飛行禁止区域が設定される可能性が高まりました。制空権を確保すれば、地上軍が進撃する余地が生まれます。 そうなるかどうかは分かりませんが、可能性を考えるべき段階に来ています。



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