テポドン発射対応は『初っ切り』みたいなもの?

2012.12.7
修正 同日 19:25


 以前からテポドン2号の解析で協力していただいているチャールズ・ビック氏に北朝鮮の銀河3号の打ち上げについて問い合わせてみました。

 すると、12日の後か14日の前頃に打ち上げが可能だと言われました。そこで、気象情報を確認したところ、12日から15日にかけて、気温がプラスになりそうなことが分かりました。東倉里と緯度が同じくらいで、日本海側の北朝鮮の町、咸興市(ハムフンシ)と、東倉里から北西55kmにある新義州市(シニジュシ)の気温予想を見てください(咸興市新義州市)。

 この条件なら間違いなく打ち上げられます。これで納得できました。今回の打ち上げ予定期間が以前に比べて長いのは、こうした現地の気象条件を勘案してのことだったのです。しかし、それまでは低温が続くので、結露などで、機材が壊れることが気になります。

 自衛隊は前回とほぼ同じ配備を採択したようです。野田総理は、前回の反省点を受けて、万全を期すようにと指示しているようです。日本海側にもイージス艦を配置すること、東京都内にも迎撃ミサイルを配置することまで、前回同様です。前回の失敗とは自治体への通知がうまく行かなかったことであり、ロケットの軌道をできる限り調査することではありません。防衛省としては、国民に即時、ロケット発射を通知できれば及第点と考えているのです。これは極めて低い目標だと、私は考えます。意味のない態勢をとり、国民に万全を尽くしていますと宣言した段階で、その計画はすでに失敗しています。北朝鮮にデータをかなり正確に採取されたと思わせることこそが、この事態に対する最大の成功です。国民に迅速に通知したところで、それで安全が増すわけではありません。単に、政府が知らせる努力をしましたというだけの話です。言ってみれば、この事態に対する日本政府の対応は、たとえるならば、相撲の初っ切りみたいなものです。

 本当の脅威は、テポドン2号ではなく、すでに配備されているノドンであり、それに搭載できる核兵器があるのかどうかこそが、日本が突き止めるべきテーマです。だとすれば、ノドンミサイルが発射された場合の対応を、この事態を使って研究すべきでもあるのです。それを、国民目線のつもりかも知れませんが、意味のない打ち上げ通知だけで満足しているべきとは思えません。

 この誤った方針は、多分、どの政党が政権を担っても、変わることはないでしょう。そうした力と知識をもった政党があるとは思えません。脅威があるから備えるという形での防衛論しかないから、日本は地に足をつけた防衛議論ができないのです。いまの防衛論は「このお札や壺を買わないと、あなたは不幸になりますよ」と脅かす似非宗教と同じです。



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