収束の気配ないコーラン焼却事件

2012.2.28


 アフガニスタンでコーラン焼却の影響が様々に出ています。関連記事を3つ紹介します。

 military.comによれば、アフガン北東部のクンドーズ州(Kunduz)で日曜日に武装勢力が米軍基地に手榴弾を投げ込み、米兵7人が負傷しました。この攻撃はイマーム・シャヒブ地区(the Imam Sahib district)で起こりました。攻撃は大勢の群衆が石を投げて警察署を攻撃した後で起こりました。群衆の中のタリバンが手榴弾を投げ、教官の米兵7人を負傷させました。クンドーズ州警察広報官は、負傷した米兵はアフガン地方警察を訓練している特殊部隊の兵士だと言いました。

 NATO軍広報官カーステン・ジェーコブソン准将(Brig. Gen. Carsten Jacobson)は、北東部のISAF基地の外で爆発があったことを認めましたが、犠牲者については言うことを拒否しました。

 内務省で米軍将校を射殺した事件の詳細はまだ確認されていません。日曜日にアフガン内務省の声明は、容疑者は逃走中の同省の職員と言い、タリバンは土曜日に犯行声明を出しました。

 ジェーコブソン准将は、内務省の殺人がバグラムでのコーラン焼却に関連しているかを言うのは早計だと言いました。彼はISAFはまだ攻撃者の正体と動機、発砲した者が高度に警備された地域に入り込んだ方法に関する情報を待っているところだと言いました。

 military.comによれば、NATO軍がアフガン東部のナンガルハル州(Nangarhar province)の基地で果物とコーヒーに漂白剤の痕跡が見つかって調査を開始した後で、月曜日にタリバンが連合軍兵士の食べ物に毒を入れたと主張しました。

 調査はISAFの基地で食べ物に痕跡が発見されて始まった後で開始されました。広報官、ニコラス・コナー2等曹長(Master Sgt. Nicholas)は「負傷者や死者はいませんでした。調査は進行中です」と言い、食堂施設にはNATO軍職員、アフガン人、第三国の外国人が働いていると付け加えました。タリバンはアフガン人コックが食べ物に毒を入れたと主張しました。

 military.comによれば、共和党の大統領候補ミット・ロムニー(Mitt Romney)は日曜日に、最近のアフガンでの暴力の急増はオバマ大統領が戦争に失敗した証拠だと言いました。

 ロムニー氏はコーラン焼却に関する反米暴力は、大統領が治安状況が安定する前に米軍撤退を発表する計画を発表したためだと言いました。「アフガン軍とアフガン治安指導者へうまく移行するよう関係を樹立する上で、我々にとってとほうもない政権の失敗です」「私は我々が一定の向上をすぐに見ることを望みますが、明らかにアフガンは非常に危険で、移行の努力は我々が望むように進んでいません」とロムニー氏は「Fox News Sunday」で言いました。

 ロムニー氏はオバマ大統領が撤退の予定表を発表し、コーラン事件について公に謝罪したことがアフガンの武装勢力を鼓舞したと言いました。共和党指名のトップを行くロムニー氏は、アフガン人をなだめようとするオバマ大統領の試みは大統領選挙で結果が出るだろうと言いました。「我々はアフガン国民が自由を成し遂げるために多大な貢献をしました。我々にとり、こういう時に謝罪することをアメリカ国民が許容することは難しいものです」。


 アフガン人の抗議活動はしばらく収まらないでしょうし、それはタリバンにとっては絶好のチャンスと言えます。しかし、それがオバマ大統領の失政だというのは安直すぎます。

 何と言っても、コーランを間違って捨てたのは現地の部隊です。タリバンの死体に小便をかけたのも現地部隊ですし、これまで何度も武装勢力だけでなく、現地人を不法に攻撃してきたのも現地部隊です。彼らが現地で反感を買っていることまで、大統領は直接指導できないのです。イラクやアフガンへの侵攻は、ジュネーブ条約や交戦規定を遵守したところで、現地から好感を得るチャンスは極めて難しいものなのです。

 共和党は早期にオバマ大統領がアフガン撤退を発表したことを批判してきました。あまりに早く発表すればタリバンが勢いづき、現地部隊を危険にさらすというわけです。しかし、期限を定めたことで米国内の悪あがきを防止することができているわけであり、アフガン侵攻に踏ん切りをつけさせる意義がありました。共和党がこう主張するのは、期限を定められると、米国民に撤退完了を心待ちにする心理が働き、共和党の出番が少なくなり、政権の再獲得が難しくなると心配するからに過ぎません。こうした政局が国家戦略を誤らせるものなのです。

 また、タリバンを殺せと主張するロムニー氏にすれば、この程度の暴力の増加で怒っているようでは、到底、タリバン殲滅などできません。選挙向けのリップサービスもいい加減にしておくべきだということです。


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