初期情報によるテポドン2号打ち上げの解析

2012.4.13


 北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)がようやく今朝打ち上げられたロケットを「テポドン2号」と呼びました。今後、日本でも「北朝鮮による『人工衛星』と称するミサイル発射」ではなく、テポドン2号との呼称が一般的になると思われるので、当サイトも複数の表記をテポドン2号に統一したいと思います。

 NHKラジオ番組によると、防衛省の発表では「飛翔体」は1分以上飛行し、高度120kmまで上昇して、4つに分解して墜落したとのことです。

 解説委員らしい男性は機体分離の失敗と述べていましたが、これには疑問があります。テポドン2号の1段機体は2分程度は噴射を続ける仕様なので、墜落した時点で機体を分離するとは考えられません。

 現段階で一番考えやすいのは、2006年の打ち上げ失敗と似た原因です。チャールズ・ビック氏は1段機体の4個のエンジンを制御するジンバル装置が不完全で機体全体がが振動し、空中分解につながったとしています。2009年の打ち上げでは、この問題が解消されたように見えましたが、まだ問題が残されていたのかも知れません。

 また、4つに分解したということは、1〜3段までの各機体とペイロードがバラバラに分離したことを連想させます。高度120kmなら大気はほとんどなく、風圧による分解ではなく、振動や機体の爆発を思わせます。メディアは爆発と言い始めていますが、そう結論できる情報は13日午前の段階では出ていません。

 つまり、テポドン2号は1段機体にまだ問題があります。さらに、2009年に失敗している3段機体の分離も再テストできずに終わりました。北朝鮮の平和的宇宙開発の道は遠いと言えます。

 打ち上げ方位は北朝鮮が通告していたとおりだったらしいことが1段機体の墜落位置から推定できます。時事通信は墜落地点をソウル市の西165kmと報じました。これは北朝鮮が通告した軌道よりもさらに東寄りです。よって、台湾上空を通る軌道に打ち上げられたのではないらしいことが考えられるわけです。

 北朝鮮は不測の事態には自爆装置で機体を破壊すると宣言していましたが、分離した機体がさらに砕けたという情報はありません。テポドン2号が自爆させられなかった可能性があります。韓国はすでに墜落した機体の捜索に乗り出しました。なぜ彼らがテポドン2号を自爆させなかったのかは疑問として残ります。

 日本の対応も問題が大きかったと言えます。墜落したから探知できなかったとか、確認に手間取ったという言い訳は成り立ちません。衛星ロケットであれ、弾道ミサイルであれ、「墜落」という結果は常に想定する必要があります。その上で政府から自治体に情報を流すというのが対策の骨子です。これは夕方のニュースまでには、現地からのレポートが報じられるはずです。



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