テポドン2号の爆発高度は自爆説を示唆

2012.4.15


 テポドン2号が爆発した高度について検討をすることを忘れていました。爆発は予定高度よりもかなり低い位置で起きており、この事実からは北朝鮮による自爆だった可能性が高まります。

 朝鮮日報が非常に興味深いことを報じています。

 延世大機械工学科の尹雄燮(ユン・ウンソプ)教授は「(1段目の)分離で問題が発生した場合、1段目は燃料を使い果たすため、爆発する可能性は低い」と指摘しました。韓国航空宇宙研究院の趙光来(チョ・ガンレ)団長は「1段目と2・3段目の分離過程で失敗があった可能性も否定できない」「爆発が起きた高度(70.5km)と時間(発射後2分15秒後)は、1段目と2・3段目が分離される時間と一致する」と述べました。これは私の見解と同じと思われます。

 記事は「1段目の爆発原因としては、推進機関(エンジン)から液体燃料が漏れたか、ターボポンプに異常が生じた可能性が指摘されている」とも書いています。でも、燃料漏れの場合、もっと大きな爆発につながる可能性が高いのです。スペースシャトル「チャレンジャー号」の事故の爆発を連想して頂ければよいでしょう。しかし、1段機体は2分15秒後には燃料が空になっていたはずで、大きな爆発は起こりません。2段機体はバラバラにならずに墜落していることから、2段機体が燃料漏れを起こしたのでもありません。

 チャールズ・ビック氏の推定は1段機体の燃焼時間を最大130秒としています。爆発が起きたとされるタイミングに近く、1段機体が2段機体から切り離されるタイミングにほぼ一致しているのです。1段機体の燃焼が終わると、直ちに1段機体の上部にある接合部分が爆薬で吹き飛ばされ、2段機体から切り離されます。1段機体は直ちに2段機体から脱落し、次いで2段機体の燃焼が始まります。そこで私は切り離し時のトラブルと考えたのですが、切り離し予定高度について考えるのを忘れていました。ビック氏は1段機体の切り離し高度を250〜300kmとしています。爆発が起きた70.5kmは予定高度に大きく満たないのです。つまり、テポドン2号は1段機体の推力が足らず、予定した軌道よりもずっと低い高度を上昇していったということです。

 これで納得がいく説明がついた気がしました。打ち上げ担当者たちは高度が上がらないテポドン2号を、1段機体の燃焼が終わるまで見守ったのです。この時点でテポドン2号を人工衛星を軌道に乗せることができないのは明らかでした。彼らは2段機体に点火することを諦め、1段機体を爆破したのです。この推定は公表されたデータすべてに矛盾しません。

 ここで不思議なのは、燃料と酸化剤が有害物質である2段機体を破壊しなかったらしいことです。高空で破壊すれば有害物質の大半を燃焼させ、かつ散逸させることにより環境汚染を防げます。万一海中にそのまま落下した場合、韓国の排他的経済水域を汚染することになります。批判を防ぐために、北朝鮮は適切に爆破すべきでした。また、2段機体がまったく破損しないで墜落した場合、韓国がそのまま引き揚げに成功する可能性があります。まさに、機体を解析する手段を敵に与えてしまうことになります。2段機体の爆破の有無が早く確認されることを願います。うまく引き揚げられれば、自爆装置の有無も確認できるでしょう。

 こうして機体のサルベージが現実化すると、2009年に日本がやっておくべきだったということが改めて認識されます。私は韓国軍の健闘を心から願っています。2009年、今年と、日本は弾道ミサイル対策を大きく誤ったことは反省しなければなりません。しかし、野党は政局のためだけに防衛大臣を追求する構えです。2009年には自分たちが与党だったのですから、根本から弾道ミサイル対策を批判できないのは当たり前のことです。国民の利益になることを政権党に提言して実行させない自衛隊、防衛省には落第点しかあげられません。

 ビック氏の最新レポートはまだ届いていません。届き次第、紹介したいと思っています。



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