北朝鮮のロケット発射準備が進行中

2012.4.3


 military.comによれば、北朝鮮のロケット発射基地の新しい写真は移動式レーダーのトレーラーと空の燃料と酸化剤の空タンクとみられるものの列を示します。

 AP通信に提供されたジョーンズ・ホプキンス大学高等国際関係論大学院の米韓協会による分析は、平壌が4月のロケット発射のために、過去の理解を超えて広範な準備に取りかかっていることを示します。

 どんな打ち上げにも必要な移動式レーダー・トレーラーが東倉里基地の入口から来る未舗装の道路の終端にあります。それは恐らくレーダー追跡システムのパラボラアンテナがついています。打ち上げ時のレーダー追跡はエンジニアにロケットエンジンと誘導システム、その他のリアルタイムの情報を提供します。「これらの写真は、北朝鮮のロケット打ち上げの準備が予定通りに進んでいるという新しい重要な証拠です」と、協会の仲間を訪問した、北朝鮮のウェブサイト「38 North.」の編集者ジョエル・ウィット(Joel Wit)は言いました。写真は商用衛星写真企業「Digital Globe」のものです。

 ワシントンは北朝鮮がアメリカを狙う核兵器のためにミサイルシステム実験をするためにこうした打ち上げを利用していると言います。北朝鮮は2回の核実験を行いましたが、専門家は北朝鮮が核兵器を小型化して、ミサイルに搭載するための必要な技術を習得したとは考えていません。

 新しい衛星写真は燃料と酸化剤の空タンクらしい物が以前は何もなかったフェンスで囲まれた場所にあるとアナリストは言います。「タンクは銀河3号ロケットの1段機体に直接燃料を入れることになる建物に中身が移された後でこの場所に遺棄されたようです」「大量の空タンクは移送プロセスが終わりに近いことを示します」。


 上の「38 North.」には興味深いレポートが掲載されていて、移動式レーダーが写った衛星写真が掲載されています(レポートはこちら)。当サイトで紹介しているチャールズ・ビック氏はこのレポートは正確だけど、発射台に関して誤りがあると指摘しています。ビック氏は今回の打ち上げについて新しいレポートを発表しており、それを読むよう勧めてくれました(レポートはこちら)。

 ところで、北朝鮮はJAXAに招待状を出し、専門家に打ち上げを見学に来るよう要請したとの報道がありました。当然、JAXAが視察に行くことはあり得ませんが、北朝鮮は招待状を出すことで「招待したのに日本は来なかった」と言えるように工作をしているのです。

 それから、ロケット打ち上げに関する日本の対応について疑問があります。イージス艦海上自衛隊のイージス艦「きりしま」が31日に横須賀基地を出航し、ロケットの軌道解析を行う海域へ向かったとのことです。このあと「きりしま」は他のイージス艦と合流し、待機する海域へ向かうことになっています。

 イージス艦はロケットの弾道解析をする際、周辺の探索ができなくなるため、自衛隊はF-15戦闘機で警戒すると発表しています。その一方で、他の護衛艦がイージス艦に同行するという話は聞きません。北朝鮮の妨害を考えれば、別の護衛艦が周辺警戒を行った方が都合がよいはずです。打ち上げが近づいたら24時間、F-15が交替で上空援護をするのでしようか?。その場に留まれない戦闘機ではなく、艦船による護衛が必要です。なぜなら、F-15は空を警戒できても、海上は警戒できないから、艦船による攻撃を防ぎ切れないからです。イージス艦が危険を察知したらF-15を呼ぶにしても、弾道解析中には無防備になるのですから、イージス艦に代わって探索を行う艦船が必要です。母船に積んだ高速小型船による自爆攻撃や潜水艦の攻撃も予測されます。イージス艦を守る手段は報道されていないだけなのでしょうか?。それとも本当にないのでしょうか?。この辺がさっぱり分かりません。

 人工衛星の重量が100kgだという件について、軍事ミサイルとしての能力を考えてみます。世界初の弾道ミサイルV2号ですらペイロードは980kgでした。この重量の通常火薬を積んで一区画を破壊するだけの攻撃力があったといわれます。核爆弾も重量は最低1トン必要といわれます。本当に100kgしか搭載できないのなら、軍事ミサイルとしては使いようがありません。

 産経新聞の3日付けの記事「北の衛星、技術的に無理…日韓専門家ら矛盾分析 『重量100キロ』軽すぎる」は、100kgという人工衛星の重量が軽すぎると書いています。「『実用観測衛星』を打ち上げると予告したのに対し、日韓の政府関係者や専門家から『実技術的に無理だ』との分析が出ている。カメラだけを積んで『実観測衛星』と主張することも想定され、結局、核弾頭を搭載するための試験にすぎないとの見方が強い。」と結論しています。重量が軽すぎる点は先日私が書いた通りで賛成しますが、その他の部分には納得できません。「カメラだけを積んで『観測衛星』と主張することも想定され、結局、核弾頭を搭載するための試験にすぎないとの見方が強い。」という日韓の政府関係者や専門家の見解は本当に存在するのか、記者の筆が走ったのか分かりませんが、疑問があります。模擬弾なら重量は特に一致させないと、弾道の適性度を判断できません。十倍も弾頭の重量が違えば、同じロケットでも弾道は変化します。ロケットが核ミサイルならば、核爆弾の予定重量と同じ重りを弾頭部分に設置するのが普通です。それが100kgだというのは、科学実験に見せかけるためではなく、ロケットの性能が悪くて、本当にごく軽量のペイロードしか乗せられないためではないかと疑いたくなります。そうだとすれば、北朝鮮は核ミサイルの開発計画で大幅に遅れていることになります。

 それにしても、東京にもPAC-3を配備するとか、東京で開催される「桜を見る会」を中止するといった、過剰反応をする暇があるのなら、こうした事実を少しでも調査し、把握するように努めるべきです。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.