銀河3号打ち上げは12〜14日の間

2012.4.9
追加 2012.4.10 7:30


 北朝鮮は海外のメディアに東倉里発射基地でロケットを公開しました。今朝、その映像が各メディアで報じられました。

 どうやら、12日に記者が平壌に集合するのではなく、先に現地取材を行い、12日は平壌の衛星管制総合指揮所で打ち上げをモニタで見るという日程のようです。よって、ロケット打ち上げは13〜14日ではなく、12〜14日に行われると考えるべきです。

 ロケットは2009年に打ち上げられたテポドン2号にそっくりですが、機体側面にある小型補助エンジンが形が変わったようにも見えました。以前は黒く塗られていたのが、今回は白く塗られており、そのために形が違うように見えるのかもしれません。

 打ち上げ場の所長のコメントが興味深いですね。彼は「こんな大きく、準備に時間がかかるロケットは戦争に使えない」と言っていました。まったくその通りなのですが、この言葉では日本の弾道ミサイル・パニックは止められないでしょう。

 気象予報が変更され、14〜15日に最も打ち上げ条件がよくなることが分かりました。東倉里の北西55kmにある新義州市の気象予報を見ると、14日の午前中と15日の全日は風が弱く、打ち上げに適しています(気象予報はこちら)。しかし、12〜13日の条件が打ち上げを不可能にするほど悪い訳ではなく、早くやってしまう可能性も十分にあります。

時間帯 天    候
12
だいたい曇. 最高気温 17C. 風速: 5-15 km/h. 風向: 南西
だいたい曇. 最低気温 5C. 風速: 5-15 km/h. 風向: 西北西-北東.
13
所により曇. 最高気温 16C. 風速: 10-20 km/h. 風向: 南南東.
所により曇. 最低気温 4C. 風速: 5-15 km/h. 風向: 南南東.
14
所により曇. 最高気温 13C. Light Wind.
所により曇. 最低気温 5C. 風速: 10-15 km/h. 風向: 南南東.
15
だいたい曇. 最高気温 16C. Light Wind.
だいたい曇. 最低気温 5C. Light Wind.
16
所により曇. 最高気温 13C. 風速: 5-10 km/h. 風向: 南南東.
所により曇. 最低気温 4C. 風速: 5-15 km/h. 風向: 南南西.

 公開された映像からいくつか分かったことを書きます。

 銀河3号の外観は、2009年に打ち上げられたテポドン2号とほぼ同じとみられ、実質的にテポドン2号と同じか、その改良型と考えられます。9日になって、日本の専門家も、ようやく銀河3号が2009年に打ち上げられたテポドン2号と同型だと言い出しました。しかし、すでに私は指摘していますが、彼らが気がついていない微妙な違いがあります。

 Youtubeに掲載されたAFPが報じた2009年の映像(映像はこちら)と今回公表された映像(映像は下とこちら)を比較してみましょう。

 2009年のテポドン2号には機体側面にいくつかの小型エンジンが見られます。黒い長方形の点がそれです。

 1段機体上部にある小型エンジンは、下の写真のように、打ち上げの際に点火して、噴射炎が出るのが見えます。しかし、その他の小型エンジンにはその兆候がありません。2段機体と3段機体の小型エンジンはあとで点火するのだとしても、1段機体のほぼ中央にある小型エンジンは動いているように見えません。チャールズ・ビック氏が、テポドン2号が最初から故障していた可能性を指摘するのは、このためです。

 ところが、今回公開された映像では、この小型エンジンが白く塗装されているか、あるべき位置にないように見えます。

 もう少し映像を分析しないと結論は出せません。しかし、これは北朝鮮が小型エンジンなしに機体を制御する技術を開発したか、別の理由で取り付けるのを止めたことが考えられます。その理由で考えられるのは、この打ち上げが本気で人工衛星を軌道に乗せるためではないということです。 記念式典のために打ち上げに成功さえすれば十分という考え方です。私は、今回の打ち上げは金正日生誕百周年を祝うための巨大な打ち上げ花火である可能性を考える必要があると思います。

 人工衛星の実物が公開されたものの、あまりに貧弱で、むしろそれに驚嘆しました。太陽光パネルは本体側面に張り付けられたもので、現在の主流である展開型ですらありません。JAXAのホームページに掲載された人工衛星と比較しても、オモチャ同然であることが分かります(該当ページはこちら)。

 管制センターと称する施設には、パソコン12台が並べられているものの、ロケットに指示を出す装置らしいものはなく、白衣を着た男たちが何をしてよいか分からないといった風体で座っているだけです。テーブルの上にはパソコンしかなく、ロケットを制御する機械や外部と連絡する電話すらありません。明らかに、ここは本当の管制センターではなく、見せるための施設です。管制施設は他にあるのですが、あまりにも貧弱で見せられないのだと考えるべきです。

 チャールズ・ビック氏がレポートをさらに更新しているので、気になる部分があればお知らせします。



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