アフガン兵は外国部隊に不満だらけ

2012.5.22


 military.comによれば、アフガニスタン軍の兵士は支給されている装備品に不満を持っています。彼らはM16小銃はクズ同然の骨董品で、軍靴は2ヶ月でバラバラになり、ひび割れたヘルメットでパトロールをしていると言います。NATOサミットが開催される中、AP通信の記者はロガール州(Logar)とパクティア州(Paktia)でアフガン兵にインタビューしました。

 ワシントンは2010〜2011年に352,000規模のアフガン軍と警察部隊を訓練・装備するために200億ドル以上を費やしました。しかし、兵士はまだタリバンを闇の中で追いかける暗視ゴーグルを持っていません。

 パクティア州の第203サンダー軍団の射撃場で、サイド・アガ軍曹(Sgt. Said Aga)はM16がタリバンとの激戦の最中に弾詰まりを起こしたと言い、新兵がベトナム時代の火器に不平を言うと表情をしかめました。「実際、アメリカ人は我々よりもずっとよい装備を持っています」「我々の車両と兵器は彼らに比べるとひどく劣っています」。

 アブドル・カリム(Abdul Karim)という名の兵士はM16小銃よりもロシア製のカラシニコフ小銃を選ぶと言いました。アメリカ人は「我々に古い兵器を渡し、新しく見せるために磨いたり、ペンキを塗ったりしています。我々は使い古しなんか欲しくありません」と彼は言いました。

 米陸軍広報官のティモシー・M・スタウファー中佐(Lt. Col. Timothy M. Stauffer)は老朽化した武器に関する不満を否定し、アフガン人は基本的に米兵が持つのと同じ火器を手にしていると言いました。「私は彼らの不満が正当だと思いません」「彼らが求め、支給された兵器は現在の危機に対処するのに十分です」。

 アフガンのほとんどの米兵はM16の小型版のM4小銃を持っています。どちらのモデルも劣悪な環境での弾詰まりと多くの整備を必要とするという批判を受けてきました。カラシニコフ小銃は簡単に維持でき、あらゆる状況で使え、発展途上国に広まりました。

 射撃場で不満はどんどん広がりました。アブドル・ハリーム・ノーリ大佐(Col. Abdul Haleem Noori)は軍靴の踵の裂け目を見せるために新兵の足をつかみました。「たった2ヶ月でバラバラです。これを1年間使っているはずだそうです」。靴はアフガン国防省と契約企業が作っています。

 アガ軍曹は憤慨と妬み、感謝の奇妙な混合を示しました。彼は国際部隊が撤退することを望みませんでした。「和平をもたらすために彼らがまだ必要です」。それから彼は敬意の問題を説明しました。外国部隊が彼らと共にパトロールする時、「彼らは我々に敬意を示しません。敬意が見られない時、我々は怒ります。私自身も、彼らがアフガンでどう振る舞うかを見てきました。彼らは時々残酷でした。私は作戦中に彼らがモスクに入るのを見ました。自分の目で見ました」。外国人は病人を運搬する場合ですら、民間人に自分たちの車列の前を走らせません。米兵は車両の周囲に堅固な保安手段を敷こうとします。

 アーメド・ジャン・アーメドザイ大佐(Col. Ahmed Jan Ahmedzai)は、バグラム空軍基地でのコーラン焼却のような事件は、新兵をタリバンの提案に影響されやすくすると言いました。新兵はタリバンへの同調が見られるので慎重に見られています。国際部隊の兵士は射撃場には最早いません」と5州で新兵訓練を担当するアシフ・カーン・サブリ大佐(Col. Asif Khan Saburi)は言いました。「射撃訓練をする時、私は2つのことを見なければなりません。兵士がどうやって撃っているかと米兵を撃たないことです」、

 ISAFは敬意の不足についてコメントしませんでした。

 記事の残りは省略します。

 military.comによれば、米軍はアフガンの孤立している基地の上空に通信と偵察機材をあげるためにハイテク凧「ヘリカイト(Helikite)」をテスト中です。この記事は日本の横田基地発なので、ここでテストされているようです。

 開発を担当するピーター・ムーア少佐(Maj. Peter Moore)はヘリカイトは凧と気球を統合した航空機で米陸軍がテストしている軽航空機の一つだと言いました。当局は機材をあげたり、回収するのにかかる時間、風の状態による性能差、操作員の訓練がどのよう機能するかを調べています。

 偵察に加え、軽航空機は遠隔地の戦場に携帯電話ネットワークを構築するのに使えると、イギリスのオールソップ・ヘリカイト社(Allsopp Helikites)のオーナー、サンディ・オールソップ(Sandy Allsopp)は言いました。彼の軽航空機は空軍と海軍、イギリス陸軍でも使われています。通信機材をのせたヘリカイトで、特別なSIMカードをつけたスマートフォンで機密が守られたチャンネルで地図や情報を送れます。ヘリウムを満たした気球の底面に大きな凧を結びつけたような形のヘリカイトは、気球などその他の軽航空機よりも数段性能が勝っています。葉巻型の気球は若干の風に対処できますが、長い上に沢山の荷物をあげられません。ハイカイトは小さくて、強風に対処でき、高くあげられます。ハイカイトは同じ大きさの軽航空機の5倍の荷物をあげられるとオールソップは言いました。

 時速37マイル(時速59.5km)の風でカメラをあげるなら、気球は400立方メートルのヘリウムを必要とします。ハイカイトならヘリウムと凧の部分から揚力を得るので、35立方メートルのヘリウムで足ります。これはアフガンのような場所で軍事活動をする兵士には大きな利点です。ヘリカイトの幅は、小型カメラと無線機をあげられる幅6フィート(1.8m)から、30,000ポンド(13.6kg)の装備をあげられる24フィート(7.3m)までの幅があります。ヘリカイトはRPGや小火器が届かない6,000フィート(1.8km)まであげられます。価格はわずか50,000ドルで、無人航空機よりも遙かに安価です。

 military.comによれば、NATOサミットでパキスタンの陸路閉鎖がまもなく解かれるとの楽観的な見通しが示されたとのことです。


 アフガンに関係する記事を3つ紹介しました。

 アフガン兵とISAF兵の不仲は、当サイトの記事を読んできた人にはごく当たり前のことに思えるでしょう。

 M16小銃の件は、中古品を渡しているかどうかは不明ですが、私は以前からカラシニコフ小銃(AK-47)を使い慣れた人にM16を持たせたら不満を感じるだろうと思ってきました。まめに手入れをしても弾詰まりが起きるM16は、悪条件でも動くAK-47より使いにくく思われるからです。なにより使い慣れている武器の方が手入れの方法も教育する必要がなく、手間がいりません。しかし、アメリカ人にとってはM16でないと教えられないという問題があるわけです。

 米兵がアフガン人に敬意を持たないのは当たり前の話です。彼らの頭の中にあるのは無事に帰国することだけです。アフガンで熱心に仕事をしたところで、アメリカでは大して評価されないことが分かっているからです。太平洋戦争でも日本での生活経験があり、日本語が分かるアメリカ人は日本人に敬意を表しましたが、そうでない兵士は義務以上のことはしようとしませんでした。当時は日本に詳しくなっても、さほど仕事につながらなかったからです。そうした人たちは軍を辞めた後のことしか頭にありません。また、兵士には敵に対して個人としての存在を認めないという心理が働く傾向があり、敵を敵としてしか見ないものなのです。だから、必要以上に冷酷な行動をとったとしても、それは自然な成り行きだったといえます。

 一方で米軍がヘリカイトのようなハイテク機材の導入には熱心なのは皮肉です。実にいびつなアフガン戦の末期です。



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