リムパックで自衛艦が標的艦を撃沈
時事通信によれば、米ハワイ沖で2010年7月に実施された環太平洋合同演習(リムパック)で、海上自衛隊の護衛艦2隻が米、オーストラリア軍と共に標的の強襲揚陸艦を砲撃、撃沈していたことが27日、分かりました。
日米豪の計6隻の艦船が艦隊を組み順次発射していました。
時事通信の別の記事によれば、藤村修官房長官は28日午前、この砲撃について憲法解釈で禁じている集団的自衛権行使には当たらず、問題ないとの考えを示しました。
朝日新聞は藤村官房長官が「参加国が戦術技量向上のため、時間をそれぞれに区切って順次、個別に行ったと聞いている」と述べたと書いています。
憲法の専門家の懸念はもっともです。しかし、演習の詳細は分かりませんが、藤村官房長官の説明と、演習の手順の常識からいって、違憲状態とはいえなかったろうと想像できます。
標的艦への実弾射撃は危険が伴うため、事前に安全を考慮して計画されるものです。実戦型の機動を伴う中で実弾射撃を行うことは危険であり、普通は行いません。かつ、砲撃の結果を明白にするために同時に同じ目標に向けて撃つのではなく、順番に撃って結果を確認するという手順になります。砲撃位置が1ヶ所だったのか、各艦が並んで順次撃ったのかは不明ですが、この配列は艦隊とはいえません。共同作戦を行う形だったとはいえないのです。
リムパックへの参加は集団的自衛権の行使にあたるとされていますが、海賊対策や災害への対処に限っては参加しています。しかし、各国の共同作戦能力を向上させるための演習に自衛隊が参加することは憲法違反だという意見があります。その関係でこの指摘が出てきたのでしょう。しかし、リムパックへの参加自体が違憲だというのなら、その中で行われるどんな訓練も違憲としなければなりません。演習の中身を指摘しても無意味だと私は思うのです。藤村官房長官が言ったように、演習の形が集団的自衛権の行使にあたらないと言えば否定される話に過ぎないからです。
現在の憲法は条文通りに解釈すれば自衛隊の保持も認めていないと私は考えます。それが認められたのは、国が自衛する権利まで放棄しろとは言っていないという解釈で裁判所が自衛隊を合憲としたからです。しかし、この解釈が成り立つのなら、本当に一切の軍備を持たない国はそれを明記した憲法を持ち得ないことになります。裁判所はプレッシャーに負けて無理を通したに過ぎません。
だから、自衛隊が意見だと主張する人たちは、こういう変化球を投げるのではなく、ストレートで行くべきだと思います。それが最も理解しやすい主張なのです。それに、こうした脇道的な主張は形骸化して現代では力を失いかけているよう思われます。今後、ますます弱くなっていくと予測もされます。
東日本大震災もあって、自衛隊への国民の信頼度はますます高まっています。その一方で、自衛隊の活用についての合理的な議論は僅かです。4月の北朝鮮の弾道ミサイル対処には戦略らしいものがなく、政府がとる方針にマスコミはあえて反対しようとしない風潮があります。こういう無批判な支持派も誤りを導くものとして危険なのです。憲法の専門家もパワーも弱くなると、誰も問題意識を持たなくなるのではないかと、私は心配しています。
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