トルコ・シリア共に事態の発展を望まず
トルコ軍機撃墜に関して、ワシントンポスト紙が続報を報じました。私の予想通り、両国は事態の発展を望んでいません。
シリアは土曜日にトルコの偵察機が自国空域に入ったので撃墜したと述べ、両国が地域的な紛争になる前に事件を必死で縮小しようとしているときに、攻撃ではなかったと主張しました。
トルコのニュースチャンネル「A Haber」との電話インタビューで、シリアの外務省広報官、ジハード・マキデッシィ(Jihad Makdissi)は撃墜は攻撃ではなかったと言いました。「未確認の物体が我々の空域に入り、不幸にも撃墜される結果になりました。それがトルコの航空機だったことは、後になって確認されました」「いかなる形でもトルコに対する敵対行為はありません。我々の主権に対する防衛行為だけでした」。
トルコのアブドラ・ギュル大統領(President Abdullah Gul)は、航空機は意図せずしてシリア空域を越えたかも知れないものの、ジェット機が短時間、意図せずに国境を越えることはよくあることだったと言いました。トルコ政府は航空機の任務の種類を説明しませんでした。ギュル大統領は、トルコ政府は事件を調査中だと言いましたが、必要な行動がすべてとられることは疑いないと言いました。それが軍事的な報復か、制裁の増加、補償や謝罪の要請を含めた他の措置かは明らかではありません。
気になる部分だけ紹介しました。
昨日の記事で、私の認識に混乱があり、撃墜の経緯に関する推測に誤りがあったので修正しました(記事はこちら)。
また、国内メディアが誤った判断を伝えているので、ここで修正しておきたいと思います。テレビ朝日系ANNは「両国の関係悪化は避けられない」、産経新聞は「今回の事件を機に緊張が高まるのは必至」と書いています。他のメディアも同様です。
戦闘機が撃墜されたのだから報復は当然という発想はあまりにも単純すぎます。こうした偶発的な事件だけで大きな紛争になる事例は少ないのです。アメリカは偶発的に起きたトンキン湾事件でベトナム戦争に踏み込んでいきましたが、アメリカはベトナムに介入したくてうずうずしているところに事件が起きたのです。シリアとトルコの関係悪化はトルコがシリア難民を支援するからで、介入を望んでいたアメリカとは立場が違います。
それに、対立が激化しているのなら、なぜトルコとシリアが共同でパイロットを探しているのかという説明がつかなくなります。そこまで関係が悪いのなら、シリアはトルコが捜索のために領域内に入ることを許さなかったでしょう。
ゲームセオリー的に考えて、両国の利得行列を探っても、事態を発展させないことが両国に最大の利益をもたらすことが分かります。こういう複雑な判断が国際問題では必要なのです。いつも言うことですが、国内メディアの画一的な発想は現実的ではないのです。
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