トルコとシリアの主張が激しく対立

2012.6.26


 トルコ軍機撃墜に関する詳細が明らかになってきました。当初報じられたこととは違う情報が出てきています。

 ワシントン・ポスト紙によれば、トルコは航空機がミサイルで撃墜された時、シリアの海岸から13マイル(20.9km)離れており、国際空域にあったと言いました。シリアはトルコ軍機はシリア空域にあり、対空砲で撃墜された時に海岸から1マイル(1.6km)にあったと言いました。航空機はシリアの領海で見つかりましたが、トルコは数マイルのところで攻撃された後でそこへ墜落したと言います。シリアの外務省広報官ジハード・マキデッシィ(Jihad Makdissi)は、トルコの説明は根拠がなく、不正確だと言いました。彼は航空機はシリアの主権を侵害して、高速で低高度を飛んでいたと言いました。

 トルコは航空機はシリア空域に短時間留まったものの、トルコ当局によって警告された時にそこを出たと言いました。ミサイル攻撃は15分後で、傍受された通信はシリアが航空機がトルコのものだとしか知らなかったのに、それを狙うという重大な決定がなされたと、トルコ外務省広報官、セルカク・アナル(Selcuk Unal)は言いました。マキデッシィ広報官は異議を唱え、対空防衛力は航空機がシリア沿岸に接近した時に自動的に引き起こされたと言いました。


 記事の後半は省略しました。シリア軍からの亡命がさらに続いている点は興味深いのですが、テーマからずれるので省きました。

 現段階では、シリアの主張に変化が見られることに注意すべきです。私の見解もこの記事でかなり変わりました。

 昨日の記事では、シリアは領空侵犯は約1kmだったと主張しているとしていました。ところが今日は海岸から1.6kmの位置で攻撃したと述べています。シリアの昨日の主張と、今日のトルコの主張がなぜか一致しているのです。

 シリアの主張には最初から疑問点がありました。彼らはトルコの航空機だと分かったのは攻撃後だったと主張します。しかし、シリアの防空網はそれがトルコから飛来したことを探知していたはずですし、その飛行方法から民間機ではないことも理解していたはずです。シリアは航空機が「高速で低高度」を飛んだことを知っているわけですから、戦闘機であろうという推測はできたはずです。トルコは通信内容から、シリアがトルコの航空機だと理解していたと主張します。どちらかと言えば、トルコの方が正しいことを言っているように聞こえます。ラタキア市に、岬の対空砲が火を噴くのを目撃したとか、撮影した人がいてもよいはずですが、今のところは確認できません。

 これらの情報を見た上でも、両国はこれ以上の紛争激化を望まないと思われます。内乱を収めたいシリアにすれば、過度に反応してヨーロッパの介入を招きたくないでしょう。トルコもこれだけの事件で全面戦争をすれば、正当性を失うことを理解しています。内乱と軍人の亡命で混乱したシリア軍が暴走気味になっているだけです。ここで一緒になって暴走する必要はトルコにはありません。

 続報に注意していきたいと思います。



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