オスプレイ問題だけが沖縄海兵隊問題ではない
カールトン・メイヤー氏の結論を参考に、オスプレイ問題を考えてみました。
墜落地点をGoogle Earth上で見ると、ノーケー村(Nowkhez)の近くであることが分かります。付近には別の村もありますが、一番近いのがノーケー村です。墜落地点は目標地点よりも426m近い場所でした。空軍の報告書には任務は地上部隊の定期的な侵入を支援することだったと書かれています。地上部隊の任務は空軍の任務ではないので書かれていません。ノーケー村に潜んでいる武装勢力を拘束することが任務の目標だったとして、本来の目標地点から村の中心部までの距離を測ると約1.4kmです。歩兵が徒歩で前進するには相応しい距離です。こうした任務を実行することで、V-22がCH-46と同じ作戦に使えることを実証していくわけです。
V-22は4,000フィート(1,219m)以上ではホバリングできません。つまり、静止した状態で同じ高度に居続けることができないのです。静止していなくても、極めて低速度なら同じことがおきるでしょう。ティルトローターを傾けて速度を増し、固定翼の揚力を利用するなら、4,000フィート以上に留まれます。これは軍用機としては致命的と言える欠陥です。先日紹介した、サレルノ前進作戦基地(kmzファイルはこちら)の標高は1,157mで限界値にほぼ近いのです。幸い、この基地には滑走路がありますから、ここに着陸することは可能でしょう。しかし、この基地から兵士を搭載して、別の場所にホバリングで降下させることはできない場合が多いことになります。ちなみに、首都カブールの標高は1,800mです。アフガンには2,000m以上の山も多く、4,000m級の山もあります。CH-46をV-22に完全に入れ替えると、アフガンでの作戦活動はかなり制限されることになります。こういう航空機を導入しようとする海兵隊の考え方は理解できません。オスプレイは日本だけでなく、米軍にとってもありがたくない兵器なのです。
データーの誇張は他にもあるとメイヤー氏は指摘しています。運用評価で達成できなかったという項目と、それ以外にどれだけの捏造が行われたのかは分かりませんから、パイロットがどんな誤解をして、不適切な操作をするかは分からないということになります。だから、沖縄本島には高い山はないから、普天間基地に配備して構わないという意見にはなりません。ちなみに沖縄本島に限ると、一番高い山は与那覇岳(標高503m)です。あるいは、市街地上空を飛ぶ時はティルトローターを倒して増速し、固定翼の揚力を使うようにすることで、普天間基地への配備を可能にするという意見が出そうです。当然、住宅地とその周辺ではヘリ・モードでは使用しないという申し入れくらいは与党の政治課題だということになりますが、そうした政治的な動きがあると聞いた記憶はありません。昨日偶然に見つけたのですが、幸福実現党はむしろ沖縄にV-22を配備することに賛成し、YouTubeにアピール用のビデオを公開しています。それはV-22の簡単な性能データだけを取り出し、沖縄や尖閣諸島を守るために不可欠だとしか述べていません。V-22は尖閣諸島での戦闘には適していません。水陸両用のAAV7以上に不可欠な兵器ではないのです。
しかし、オスプレイだけが沖縄海兵隊の問題ではありません。改めて、オスプレイの配備が沖縄海兵隊基地の問題ではないことに立ち返るべきです。半世紀以上、県内多くの土地に米軍が存在すること自体が問題なのです。オスプレイはこの問題の最中に浮上しただけの話で、問題の根幹ではないのです。 在日米軍基地全体をどう考えるかという問題の中で考えるべきです。カールトン・メイヤー氏は世界各地の米軍基地の問題についても論じています(該当ページはこちら)。その中には在日米軍に関係する議論が5つあります。
これらをちょっと眺めるだけでも、幸福実現党程度の議論では足りないことは明らかです。
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