V-22に実用降下中にも失速の可能性

2012.8.23


 military.comのdefensetech.org/に去る4月にMV-22がモロッコでの訓練中に墜落した事故に関する記事が載りました。ごく簡単に編集して紹介します。

 事故はオスプレイが離陸し、ヘリコプターモードから固定翼へ切り替えるためにプロップローターが回転しているのに、着陸点の混雑を避けるために旋回した時に起こりました。そうしたことで、重心が前方へ移動し、オスプレイの機首が下がり、強力な追い風が機体を前方と下方へ押しました。副操縦士は、高度降下の影響を克服するように旋回中にナセルを調整するのに失敗したと言いました。オスプレイは50フィート(15m)上昇しただけで、乗員2名を殺しました。速度と高度を得るまでヘリコプターモードのままなら、事故は恐らく起こらなかったとされました。

 この記事の著者ワード・キャロル(Ward Carroll )は部隊に配備されてから最初の3年間にクラスAの事故が6件起きると予測しました。この事故も予測したシナリオの一つでした。

 テストパイロットは2002〜2003年までの開発試験で高率降下フェーズ(HROD)で脅威的な仕事をしました。彼らはV-22のボルテックス・リング状態(VRS)の限界を確認しました。VRSは2000年にアリゾナ州で19人の海兵隊員を殺した墜落事故を起こしました。これは垂直速度ディスプレイと音声警告システムによって改善されました。しかし、VRSは解明されたものの、毎分800フィート(243.8m)という運用上の降下限界とVRSが起きる間に緩衝域があるという事実は残りました。基本的に乗員はたえず垂直速度計をチェックしなければなりません。ちょっとの油断が手に負えない垂直速度を呼ぶかも知れません。実際にテストパイロットは僅かの注意散漫からHRODの最中に意図しないVRSに入りました。


 この記事を書いたキャロル氏は海軍で20年の軍歴があり、4つのF-14編隊に勤務したことがあります。退役後はV-22計画の広報官を務めています。つまり、彼はV-22の批判派ではなく、支持派の一人です。

 その人が3年間で6件くらいは重大事故が起きる、それもパイロットのミスによって起きると考えていた点は驚きです。日本政府に対しては決して言えないことでしょうが、こうした記事には平気で書いているわけです。

 ボルテックス・リング状態はヘリコプターのローターに外側から内側に空気の渦ができて、失速することです。それが降下速度の限界内に起きる可能性があると指摘している点には驚かされます。

 この欠陥により、パイロットは失速を恐れながら降下操作を行わなければならず、注意不足によって失速する可能性があると考えなければなりません。

 妥協の産物であるプロップローターには大きな問題が潜んでいそうです。内側が固定翼機のプロペラで、外側がヘリコプターのローターの形状というアイデアに無理があると思えるのです。

 こんなものを沖縄県民の頭上に飛ばそうという訳ですから、そこに人種差別はないのかと言いたくなります。普天間基地に着陸しようとしたオスプレイが急にボルテックス・リング状態に陥れば、低い高度では対処のしようがなく、住宅地の上に墜落する恐れがあります。

 今日、ハワイのいくつかの空港では空港周辺の歴史的遺産を損傷する恐れがあり、住民への騒音に配慮して、着陸訓練を行わないことにしたという報道がありました。つまり、アメリカ領域内の考古学的資源よりも、日本国内の住民は重要度が低いというわけです。当サイトで、米軍が自国内では決してやらないような危険な廃棄物処理をイラクで行い、軍人や軍属に健康被害を起こしていた事件を紹介しましたが、それにそっくりのことがオスプレイ問題で起きているのです。これでも対米追従しかしない外務省や政治家の意識は改善されなければなりません。



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