反政府派がアレッポ北方の空軍基地を占領か
今日はアナン特使が辞任すること、オバマ大統領がシリア支援の許可を出したことが報じられていますが、戦況に関する報道は僅かです。
読売新聞によれば、反政府派はアレッポ郊外の空軍基地を急襲しました。襲撃には反体制派が政府軍から奪った戦車などが使われました。基地はアレッポの反体制派攻撃に使われているヘリコプターや軍用機の出撃地になっていました。
BBCはこの空軍基地がメナグ(Menagh・kmzファイルはこちら)の基地であると明確に報じています。
反政府派はアレッポ市内の反政府派を攻撃する砲撃や空襲を行うのに使われていたアレッポ(Aleppo・kmzファイルはこちら)の北にある基地を攻撃したといいました。アレッポの反政府派指揮官は軍から捕獲した戦車で、アレッポと反政府派が保持するアザズ(Azaz・kmzファイルはこちら)とトルコ国境の間にあるメナグ空軍基地を攻撃したと言いました。彼らの主張は人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」によって裏づけられました。指揮官は政府軍は空軍基地を近くの地域を攻撃するための集結地点として使っていたと言いました。それは軍に大きく圧倒される市内の反政府派による最初の重火器の使用の1つです。
この機会に国内報道の問題点を指摘したいと思います。
読売新聞とBBCの記事は同じ出来事について報じています。しかし、読売新聞の記事は意味をなしていないことが明らかです。反政府派がどの基地を攻撃したのかがまったく分からないため、記事としての価値は認められないのです。
この出来事の場合、アレッポの南東にも空軍基地を併設するアレッポ国際空港があることが問題を難しくします。ここにもヘリコプターが配備されていて、アレッポ郊外の空軍基地と言えば、真っ先に頭に浮かぶのはこちらなのです。私も読売新聞の記事を読んだ時はそう思いました。ところが、BBCの記事を読むとこの基地は、アレッポの北方約30kmにあるメナグ空軍基地であることが分かりました。
新聞記事には5W1Hが必須だと言われますが、日本の新聞は海外記事となると、途端にいい加減になり、読む価値のない記事を平気で報じます。こうした曖昧な記事は、日本人の世界情勢の認識も曖昧にしているのです。それなのに、一向に改善される気配がありません。
なぜ、このことを指摘するかと言えば、先日、反政府派がアナダン(Anadan・kmzファイルはこちら)の検問所を占領したという記事がありました(関連記事はこちら)。BBCの記者はこれでアレッポとのトルコ国境が直接つながったと言いました。しかし、アナダンと国境とつなぐ完全道路沿いには空軍基地があり、完全に補給路が通じたとは思えないと私は書きました。実は、その基地こそメナグ空軍基地だったのです。ここが攻撃されたことは、反政府派の補給路が完成し、アレッポの戦いが彼らの有利に動くことを予測させる重要な証拠なのです。
読売新聞の記事では、この確証が得られません。記者たちは何が重要か、自分たちが何を書いているのかを分かっていないのです。なぜか、こういう筆法は全社が横並びなので、業界内で問題視すらされていないのです。
BBCの記事も十分とは言えません。メナグ空軍基地を反政府派が手中に収めたとまでは書いていません。アレッポ周辺のその他のシリア軍基地がどうなっているのかも不明のままです。それでも、BBCの記事はいずれこれらも明らかにされるという希望を持てます。使い道のない読売新聞の記事よりは数段使えるのです。
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