ビソネットの本と公式の説明との食い違い
military.comによれば、オサマ・ビン・ラディンを殺した海軍シールズ急襲の説明は以前の公式説明と矛盾し、シールズが最初に発砲した時にビン・ラディンが明白な脅威を示したかについて疑問を呼んでいます。
マット・ビソネット(Matt Bissonnette)がマーク・オウエン(Mark Owen)のペンネームで書いた「No Easy Day」によれば、ビン・ラディンはシールズが狭い階段を彼の方向に向けてあがってきた時に、寝室のドアの外から最上階の廊下を見ていて頭部に被弾しました。
ビソネットは階段をあがるポイントマンのすぐ後ろにいました。階段の最上部から5段未満で、「ブスン、ブスン」という抑制された銃声を聞きました。ポイントマンは廊下の右側で男がドアの外を覗いているのを見ました。
ビン・ラディンは寝室に引っ込み、シールズは追いかけ、彼が地だまりの中に倒れているのを見ました。右頭部に銃弾の穴が見え、女性2人が彼の体に覆い被さって泣き叫んでいました。
ポイントマンは女性2人を邪魔にならないように部屋の角へ引っ張り、彼と他のシールズはまだピクピク動いているビン・ラディンの体に銃のレーザーサイトを向け、体が動かなくなるまで、何回も撃ちました。
公式説明では、シールズはビン・ラディンが引っ込んだあとでだけ、彼が武器をとりに行ったと考えて発砲しました。
ホワイトハウス広報官、トミー・フィエトル(Tommy Vietor)は矛盾についてコメントしませんでした。
ビン・ラディンの死体はイスラム式に則って水葬される前に威厳と尊厳を持って扱われたとされていましたが、ビソネットは窮屈なヘリコプターでの帰還中、「ウォルト」という仮名のシールズはビン・ラディンの胸の上に座り、ビン・ラディンの脚はビソネットの脚の上にありました。
ビソネットはシールズの中にオバマ大統領のファンはおらず、政権がこの襲撃を命じたことを手柄にすると知らなかったとも書きます。あるシールズは任務の後で、襲撃を行ってオバマを再選させただけだと言いました。しかし、彼は作戦を承認した最高指揮官を尊敬するとも言います。
ビソネットは任務の後でオバマ大統領とジョー・バイデン副大統領(Vice President Joe Biden)と第160特殊作戦航空連隊司令部で会った時、バイデンが誰も理解しなかった冷めたジョークを言い、クリスマスディナーで酔っ払った誰かの叔父を連想させたと書いています。
アルカイダのウェブサイトはビソネットの写真を掲載し、彼の殺害を呼び掛けています。
記事は一部だけを紹介しました。
今回の暴露本は本物だと思います。以前に偽物の暴露本が出版されたことがありました(関連記事はこちら)。
最初の米政府の説明にはどこか間違いがあるような気がしていました(関連記事はこちら)。対テロ戦では報告が実態と違っていることが何度もあり、報告された内容も事実というよりは演劇的な感じがしましたし、絶命させるために何度も撃ったという部分も特殊部隊らしい行動です。国内メディアは特殊部隊は常に敵と激しく交戦するように記事を書きますが、彼らの主要な戦術は気がつかれずに近寄って攻撃し、止めを刺すということなのです。
特殊部隊は一般の部隊ほど攻撃相手の識別に時間をかけません。身体の大きな男性は必ず攻撃するといって構いません。これは交戦規定に反することであり、国際人道法(ジュネーブ条約)にも反するグレーゾーンというべき部分であり、汚点です。しかし、国防総省は普段から交戦規定を守れと言っているので、公式発表もそれに沿った内容になるのです。変と言えば変な話です。
最初の話では、ビン・ラディンはドアの後ろに引っ込み、シールズが部屋に突入すると女性2人がビン・ラディンを守ろうとして立ちふさがったとか、シールズが女性を脇へ押しやったとか、ビン・ラディンに警告を与えたと発表されました。どれも特殊部隊の戦術としては変です。無傷の者がいる部屋に入るのに閃光手榴弾を使わなかったとか、普通はやらない警告を与えたといった部分は釈然としませんでした。
以前の説明では銃弾は左目の上に当たったとのことですが、この本では頭の右側です。シールズは弾が出た方の穴を見たのかも知れませんが違いは気になります。その一方で、ヘリコプターが1機壊れたので、帰りのヘリコプターが混雑しており、そのためにビン・ラディンの死体がぞんざいに扱われたという部分は納得できるものです。この本は事件の真相を突いているといってよさそうです。
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