シリア軍の10%程度に損失が出た可能性

2012.8.31


 BBCによれば、未確認の報告はシリアの反政府派は北西部のイデリブ州(Idlib)でジェット戦闘機を撃墜したと言います。

 アラブの衛星テレビ「アル・アラビヤ局(al-Arabiya satellite station)」が報じたビデオ映像はうねる煙と2人がパラシュート降下するのと、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と反政府派が叫ぶのを示しました。イデリブの反政府派評議会の長はパイロット2人を拘束したと言いました。攻撃を行った反政府派の身元は確認されていません。ビデオ映像のナレーターは彼らをシリア殉教旅団だと言い、アル・アラビヤは自由シリア軍だと言いました。

 ここ数週間で、シリアの反政府派は別のジェット戦闘機と武装ヘリコプターを撃墜したと言います。

 人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」は、イデリブ州のアブ・アル・ゾウル(the Abu al-Zohur area)への政府軍の爆撃で、子供8人、女性9人を含む20人が殺されたと言いました。犠牲者の数は独自に確認されていません。

 別に、治安要員を治療する病院の院長が2011年3月に内乱が始まってから、8,000人以上の隊員が死んだと見積もりました。院長はダマスカスのティシュリン機関(the Tishrin facility)で働く将官の医師です。彼の見つけは独自に確認されていません。「毎日、我々は平均15〜20人の兵士の死体を受け取り、数字は今年はじめから増えています」。

 彼は死因の60%が銃撃、35%が対戦車ロケットを含む爆発物、5%は斬首だと言いました。

 国連はシリア内乱で総計18,000人以上が死んだと推定します。

 人権団体はアレッポで、政府軍がパンを買うための人の列を攻撃していると言いました。


 映像は不鮮明ですが、多分、本物でしょう。反政府派の対空兵器が力を発揮している証拠です。

 さらに、治安期間の隊員の死者数や死因が分かったことは重要です。

 戦死者に対して負傷者は3〜5倍出るのが一般的なので、シリア軍は24,000〜40,000人が負傷していると推定できます。シリア軍は陸軍だけで220,000人もいます。空軍、海軍の人員は最終的な段階にならないと地上戦に投入できません。40,000人といわれる防空軍は一番陸軍に編入しやすいので、シリア軍の兵数を260,000人として、損耗率は9.2〜15.3%という数字になります。損耗率30〜40%で全滅とされますから、反政府派は一定の成果をあげていることになります。率直に言って、そろそろこれくらいの状況でおかしくない段階なので、この推定はある程度当たっていると思います。

 死因からは銃器やRPGを用いた戦闘が激しく行われていることが窺えますし、首を切られた者が5%もいることは、捕虜になったあとに殺害されていることを示します。銃による処刑は銃による死者数に含まれていますが、斬首と同じか少し多いくらいと考えられます。銃殺は斬首よりも実行が容易なので、斬首より多く行われると考えられます。すると反政府派に処刑された政府軍兵士は1000人くらいかと推定できます。かなりの数ですが、政府軍の民間人殺害はこれを遙に上回ります。

 非武装の民間人を攻撃するのが許されないのは当然ですが、シリア軍がパンを買う民間人の列を攻撃しているのは一層問題です。国際人道法(ジュネーブ条約)は、住民を餓死させる目的で最低限生存に必要な食糧を生産したり、供給する施設を破壊することを禁じています。アサド政権が言うように少数のテロリストと戦っているのなら、一般国民には安全地帯を設定したり、合理的な避難経路を設定する必要があります。民間人の逃げ場がないような武力行使も認められていません。これも国際人道法に定められていることです。たとえ、反政府派を一掃したとしても、アサド政権が国際社会から認められることはあり得ないのです。



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