マニング上等兵が判決前に減刑が決定

2013.1.10


 military.comによれば、WikiLeaksに機密文書を漏洩した米陸軍のブラッドレー・マニング上等兵(Pfc. Bradley Manning)に対して、軍裁判官が減刑を行いました。

 裁判官のデニス・リンド大佐(Col. Denise Lind)は、フォート・メーデ(Fort Meade)で行われた裁判前審問でこの決定を下しました。リンド大佐は、マニングが9ヶ月間、クァンティコの海兵隊の営巣にいた間、非合法的な裁判前の処罰を受けていたことを指摘しました。大佐は、マニングが有罪でも、禁固刑から112日間を差し引くことにしました。マニングは1日に23時間、窓のない監房に拘禁され、全裸にされることもよくありました。営巣当局は、それは彼が自分や他人を傷つけることを防ぐためだったと言います。裁判官は、マニングの監禁は「必要以上に厳しかった」として、合法的な政府の利益に関しては行き過ぎだたっと付け加えました。

 マニング上等兵は、敵の支援を含めた22件の起訴に問われていて、有罪なら終身刑になります。彼の裁判は3月6日にはじまります。

 25歳の情報分析官は、2010年の逮捕後に軍が彼に不当な裁判前の懲罰を加えたと主張して、起訴の棄却を求めています。

 海兵隊の営巣の看守は、マニングが自殺の危険があると考え、6×8フィート(1.8×2.4m)の窓のない監房に、1日に1時間を除いて拘置するようにしただけだと証言しました。

 検察官は12月に譲歩して、マニングが自殺しないように監視するために7日間、不適切に拘禁されたとして、判決から7日間を差し引くことを勧告しました。

 検察官は、弁護側がマニングが大量の戦争の記録と外交公電を漏洩させた動機に関する証拠を裁判で提示するのを、裁判官が妨げることを望んでいます。彼らは動機は重要ではないと言います。マニングは「人びとに真実を知って欲しい」「情報は自由であるべき」だからオンライン上の密告者に転じたと述べたとされています。被告弁護人のデビッド・クームス(David Coombs)は火曜日に、こうした証拠を除外することは、マニングがアメリカを傷つけたり、外国を手助けすることはないと信じた情報だけを漏洩したいと主張する弁護側の能力を損ないかねないと言いました。

 4日間の聴聞が火曜日に始まります。


 記事は一部を紹介しました。

 減刑というのは、得てして、司法側に後ろめたいことがある場合に行われるものです。日本の裁判では、裁判官が有罪の確信がないけども有罪判決を出したい場合、大盤振る舞いをして、拘留されている日数を懲役・禁固の日数から差し引きます。言うまでもなく、こういうやり方は卑怯であり、有罪に確信がないのなら無罪にするべきですが、職業裁判官は、そういう判断ができないものなのです。中には、正当な減刑もあるでしょうが、マニング上等兵の場合、異常な拘束のやり方が以前から問題視されていました。

 2011年にマニングが全裸にされている件について紹介しました。現在、元記事は読めない状態になっています(記事はこちら)。この記事では、クームス弁護士は「すべての衣類を引き渡し、独房で7時間裸のままで、それから翌朝気をつけの姿勢で立つことを兵士に要求することで、考えられる正当な理由はありません」と軍のやり方を批判しています。その後、扱いはさらにひどくなり、23時間不眠を強制させられたということになります。

 自殺を防止したいのなら、むしろ眠らせておいた方が都合がよいわけです。鎮静剤の投与過剰が問題視されてもおかしくないのに、わざわざ1日23時間も狭い独房に入れて、目を覚まさせていたのは、懲罰と見られても仕方がないことです。また、自傷行為防止なら理解できますが、他人に危害を加えるとは意味が分かりません。他の拘束者と一緒にはしないのですから、看守が彼から身を守る必要があったと主張しているのでしょう。マニングが凶暴で、手がつけられないとは、彼の写真を見る限りは考えられません。看守には拘束のための様々な手段が許されています。

 同時多発テロという本国が攻撃されるという事態が起きてから、アメリカ人は精神に変調を来し、様々な異常な反応を示してきました。追い詰められた気持ちが、他者への攻撃性となって噴出したとしか思えません。マニングの裁判も、どちらが裁かれているのか分からないという印象があります。

 彼が犯した機密漏洩の罪は重大ですが、それでアメリカが攻撃を受けた事実は確認されていません。危機が目の前にある時、人は危機を解消するのとは違う手段をとって安心しようとする場合があります。マニング事件はまさにそういう事件でした。

 こうした事態を対岸の火事と見るべきではありません。日本が似たような事態に追い込まれた場合、同じことをする者たちが必ず現れます。近い将来、尖閣諸島や竹島の問題で、それが露呈するはずです。


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