アルジェリアの天然ガス田を武装勢力が攻撃
マリで日本人が誘拐されたという事件について、国内報道を眺めてもよく分からないので、外国の記事を読んで、状況を整理してみました。military.comによれば、アルジェリア南部でイスラム武装勢力が水曜日早くにBPが一部を運営する天然ガス田を攻撃して、占領しました。外国人2人が殺され、アルジェリア軍が包囲する中、アメリカ人を含むその他大勢が人質になったとみられます。
武装勢力が犯行声明を出し、アルカイダとつながるマリの反政府グループに対するフランスの作戦をアルジェリアが支援していることへの報復だと言いました。声明はアメリカ人7人を含む41人の外国人が人質になっていると言います。
BPは声明の中で、特定されていない武装した者たちのグループが施設を攻撃して占領し、人員の一部が占領者によって拘束されていると考えられると言いました。人質の数と身元は依然として不明ですが、アイルランドは36歳の既婚アイルランド男性が人質の中にいると発表し、日本とイギリスは同様に巻き込まれていると言いました。ノルウェー女性は、彼女の夫が人質になったという電話をしてきたと言いました。
攻撃で殺された者の一人はイギリス人で、警察官2人と警備員2人を含む6人が負傷したと、アルジェリア国営ニュース局は報じました。アルジェリア軍は誘拐犯を包囲し、人質を解放するよう交渉していると、この地に拠点を置くアルジェリア治安当局は言い、武装勢力はマリから来たと付け加えました。当局者は記者に話す権限がないため、匿名を条件に話しました。
施設にいた大勢のアルジェリア人労働者は攻撃の中で拘束されましたが、国営ニュース局は彼らは徐々に小さなグループで無傷で解放されたと報じました。
覆面旅団という意味のカイバット・モウラザマイン(the Katibat Moulathamine)という武装グループはモーリタニアのニュースに、その系列組織がイン・アメナス(Ain Amenas)ガス田(kmzファイルはこちら)で作戦を行い、7人のアメリカ人を含めた、異なる10ヶ国の国籍の、41人の人質をとったと言うように要請しました。このグループの主張は独自に証明されず、米大使館はいかなる米国民の被害も承知していないと言いました。
過激派グループの発表を行うことが多い「the Nouakchott Information Agency」は、誘拐が「血で署名した者たち」によって実行され、マリのイスラム主義者グループに対する攻撃に参加している国を攻撃するために作られたグループだということを除いて、これ以上の詳細を提供しませんでした。
覆面旅団はサハラ地域のアルカイダの長期にわたる実力者で、 最近、自分のグループを作るためにイスラム・マグレブのアルカイダのテロネットワークを離れたと宣言した片眼のアルジェリア人、モクタール・ベルモフタール(Moktar Belmoktar)が創設しました。彼は当時、彼が今でもアフガニスタンとパキスタンに拠点を置く中央組織とのつながりを維持していると言いました。
水曜日の攻撃は、ガス施設から近くの空港まで社員を運ぶバスの待ち伏せから始まり、攻撃者は撃退されたと、アルジェリア政府は言いました。重武装した男たちの車3台が関与していたと政府は言いました。「攻撃に失敗した後、テログループは施設の居住区に向かい、多数の外国人労働者を人質に取ったと声明は言いました。
イスラム武装勢力と数十年戦っているものの、石油が豊富なアルジェリアの炭化水素施設への攻撃は非常に希です。ここ数年で、アルジェリア南部と、マリとニジェールの北部の十分にパトロールされない砂漠の荒野へのアルカイダの影響力は増大し、組織はこの地域を通じて密輸と愉快ネットワークを運営します。マリ北部を支配した武装グループはすでにアルジェリア人外交官4人とフランス人7人を人質に取りました。
攻撃があった天然ガス田はリビアの砂漠から100kmですが、マリ国境からは1000kmです。BPはノルウェーのStatoil社とアルジェリアの国営企業Sonatrach社と共にガス田を運営しています。日本のJGC Corpは同様に施設にサービスを提供しています。
Statoil社の公報は、この施設にノルウェー人13人とカナダ人1人がおり、その内の2人が軽傷を負ったと言いました。ノルウェーの新聞「Bergens Tidende」は、55歳のノルウェー人労働者が、妻に誘拐されたと電話をかけたと言いました。
暴力が長く突破しやすい国境線を越えて広がることを恐れ、アルジェリアはマリ北部の反政府派に対する軍事介入について長らく警告してきました。12月にアルジェリアをフランスのフランソワ・オランド大統領(President Francois Hollande)が訪問して、その立場は少し和らいだように見えましたが、アルジェリア政府は作戦に懐疑的なままで、その結果を懸念してきました。
アルジェリアはアフリカ最大の国で、テロとの戦いでは数年間、アメリカとフランスの同盟国です。しかし、フランスの関係は植民地時代と50年前の独立戦争のお陰で、不満で満ちています。
アルジェリアの強力な軍隊は、イスラム過激派と何年も戦い、ここ数年はイスラム・マグレブのアルカイダによる暴力を、アルジェリア北部のホームベースの周辺では、なんとかほぼ消滅させることができました。その一方で、イスラム・マグレブのアルカイダは南部に焦点を移しました。
イスラム・マグレブのアルカイダは、アルジェリア人のビジネスマン、政治家、しばしば外国人も誘拐して、身代金で大金を稼いでいます。
記事は一部を紹介しました。
状況は極めて悪いように見えます。
すべての情報は確認されていないものの、分かった範囲では、武装勢力はバスを襲撃して、人質を取り、身代金を得るつもりだったと考えられます。イスラム・マグレブのアルカイダから分派したとはいえ、彼らがやることは似たようなものです。しかし、それに失敗して計画を変えたのか、あるいはアルジェリア当局に追われて、施設に立て篭もって人質を取ったように見えます。血の署名が事実かや、フランスのマリへの軍事介入に抗議することが本当に彼らの犯行動機かは疑問です。失敗したから逃げれば、今後はこの地域で誘拐を行えないと踏んで、籠城を選択した可能性があります。
現場を確認したところ、逃走がほとんど不可能に思えるような場所です。イン・アメナスの西にあるガス田が現場と思われるのですが、ここはイン・アメナスから40km以上の距離にあり、周囲は完全に砂漠です。リビア国境に近いとっても、そこも砂漠ばかりの場所です。ちなみに、イン・アメナスには石油施設もあります。犯人と人質は居住区にいるといいますが、そこは施設を南下し、道路がカーブしたところにある場所と想像されます。600×400m程度の敷地です。ここはアルジェリア軍が包囲したら、まったく逃げようがない場所です。犯人はこっそり現場から立ち去るつもりはないでしょう。
投降しないのなら、犯人たちはここで戦って死ぬか、人質を連れて砂漠を車で逃走することになります。アルジェリア軍が人質の生命を重視するのなら、そういう犯人を攻撃することはできません。一旦、逃がして、将来的な人質の解放に期待をつなぐことになります。これは人質の側からすれば、まったく楽観視できない状況です。
しかし、彼らがこれまでに身代金をとることに成功してきたのなら、簡単に人質を殺すようなことはありません。それが最終的な狙いなのです。保険会社の交渉人が出てきて、犯人と交渉し、人質の解放を狙うことになります。
あるいは、彼らの技量が乏しく、特殊部隊の突入を許すような態勢しか整えていないのなら、軍事介入が行われる可能性があります。しかし、それはないでしょう。彼らは人質から離れず、突入すれば人質も死ぬような環境を作り上げているはずです。人質の数が非常に多いことも問題です。本当に41人が人質なら、突入作戦はほぼ不可能です。
一方で、アルジェリア政府はイン・アメナスに空港があるので、軍を派遣するのは難しくありません。すでに拠点を作って対応していることと思います。
長期化は避けられないでしょうが、人質にすぐに危険が迫っているわけではないように見えます。少なくとも、初期情報からはそう読み解けます。
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